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リアクション
■魔王復活 〜死神動画粉砕編〜
自身に絡みつく電子の鎖がその身を侵食し、解析しようとしてくる。
それに対抗しようとして、魔王は必死に自身で対抗プログラムを組み上げるが、尽くそれは打ち破られていく。
やはり相手の技術力は現代のものから逸脱しており、所詮自分では対抗できはしないのだと絶望しかけた瞬間だった。
ふと、解析の手が止まった。
「……アンタら、やっぱり馬鹿野郎ですぅ」
顔を上げた魔王の視界には防衛セキュリティを蹴散らしながら突っ込んでくるオクスペタルム号。
それを援護するように対空砲火を行いながら続くラグナロクの姿が見えた。
魔王の姿を視認したノーンは大きく両手を振るっているのが魔王には見え、ラグナロクからはルカルカと、それに続いて巨大な連中が飛び降りてくるのが見えた。
ハーティオン達はルカルカの突撃を守るようにセキュリティに立ち向かい、ルカルカはまっすぐこちらへ駆け寄ってくる。
そして、鎖もろとも魔王の体をルカルカが振るった温かい光の刃が包み込んだ。
「おかえり、マオちゃん!」
オクスぺタルム号で操舵を握るノーンは、無事に魔王が助け出された姿を見て、心の底から嬉しそうにしていた。
「ガォォォォン!」
「ぬうっ、ドラゴランダー!」
仲間が魔王を助け出すまでの間、時間を稼ぐためにハーティオン達はその身を挺してセキュリティシステムを食い止めていた。
しかし、巨大な体躯が仇となったのか、ドラゴランダーは電子の鎖に絡みつかれている。
「ムッ、ドウヤラ無事ニ救助デキタヨウダ」
「よし、ならば合心だ!」
『アルティメット・ソウル・オーバテクノロジーエネルギー、ファイナルセーフティー、アンロック』
バグベアードの声を共に、ドラゴランダーとバグベアードはその体を分離、電子の鎖から解放されるとハーティオンの体へ装着されていく。
『ハートクリスタルエネルギー、フルパワー』
体に2機が装着され、胸のクリスタルが光を放つ。
『超龍星合体! キング・ドラゴハーティオン!』
雄たけびと共に、電子の世界へ奇跡の戦士は再び光臨した。
「人々に未来を見せ、いつか来る最後の日への覚悟を持たせる……。そのような形で人々へ貢献しようとしているのやもしれぬ」
そう言いつつ、ハーティオンは巨大な剣を抜き放つ。
「しかし! 人は無限の未来があるからこそ、最後の瞬間まで日々を力強く生きるのだ! 人々の可能性を摘む未来の姿を伝える事……このハーティオン、それを正義とは認められぬ!」
「やっちゃえ、ハーティオンさん!」
ハーティオンが叫ぶと、呼応するようにノーンがエールを送る。
ルカルカは魔王をヒュドラーンのコックピットに慌ただしく担ぎ込んでいるが、ダリルも彼女もきっと想いは同じだろう。
「人々の、友の心よ……私に力を!」
死神動画のデータべース。
人の死を詰め込んだ悍ましき箱の様な存在を正面に見据え、ハーティオンのツインアイが強く光を放つ。
『銀河!真っ向両断斬りぃーっ!!』
そして、放たれた一閃が箱を斬り裂く。
「浅いっ……!? いや、これは!」
それと同時に、箱の中身からは黒き何かが溢れだす。
データとはいえ、人の死を詰め込んだ存在はこうも悍ましい力を持ってしまうのだろう。
「ちょっと狭いけどとっとと乗るですぅ!」
溢れだした死のデータに焦りながら、エリザベートはルカルカと魔王をサブシートに座らせるとヒュドラーンを動かし始める。
「無事か、マオ。 浸食はされてないか?」
「そこは怪我はないか、でしょ?」
相変わらず不器用なダリルの通信に微笑みながらルカルカは返す。
パッと見、魔王に怪我や浸食された様子はないが、やはり疲労は募っているようだ。
「とにかく、このままラグナロクに収容を」
「……いや、オクスぺタルム号の方に向かうですぅ!」
ルカルカがラグナロクへ向かうようにエリザベートに声をかけると、魔王はそれを否定した。
「何か考えがあるのか?」
「勿論、援護は任せたですぅ!」
「――了解!」
ヒュドラーンを狙い、迫りくるセキュリティシステムに対し、機銃を連射するラグナロク。
その援護を受けたおかげで、ヒュドラーンは無事にオクスぺタルム号の艦橋へ移動する事が出来た。
「で、どうするですぅ?」
オクスぺタルム号へたどり着くなり、エリザベートは魔王に問いかける。
「ノーン、合体攻撃ですぅ!」
「わかったよ、マオちゃん!」
今ので何がわかったのか、エリザベートには全く理解できなかったがノーンはオクスぺタルム号の荷電粒子砲を起動させていた。
「一斉砲火にしちゃ、火力が……」
「ふふん、オリジナルは知らねーと思うですが、ヒュドラーンには真の姿、ヒュドラモードがあるですぅ!」
「……ああ、あの悪趣味な」
自信満々で魔王が説明するが、どうやらエリザベートは知っていたようで、魔王はうがー、と声を荒げた。
そんな2人の様子を見て、ルカルカは微笑む。
「なんだか、結局いつも通りだなぁって」
「じゃなきゃ調子はでねぇですぅ」
そう言い捨て、エリザベートはヒュドラーンを固定砲撃形態『ヒュドラモード』へと移行させる。
両肩のキャノンと併せ、頭部そのものをキャノンに変形させ、3つの砲台から圧縮したビームを放つ状態。
最も、頭部そのものがキャノンになるおかげで見た目は最悪なのだが、魔王曰くカッコいいらしい。
「機体を艦首に。ノーン、タイミングを合わせるですぅ!」
「いつでも、マオちゃん!」
エリザベートが死神動画のデータへ照準を合わせ、魔王はトリガーを握る。
ハーティオンが必死に死のデータと相対している今が最初で最後のチャンス。
「よし、今ですぅ!」
魔王の掛け声と同時に、オクスぺタルム号とヒュドラーンから過剰ともいえる粒子が放たれる。
その光に包まれ、死のデータは文字通り吹き飛んでいった。
そして、静寂と共に訪れるのは暗闇。
「……くっ、サイトそのものが崩壊を始めた!?」
突然の出来事を必死で分析するダリルは最悪の状況を理解してしまった。
データベースそのものを吹き飛ばしたせいで、死神動画のサイト自体が崩壊し、崩れ去っている。
「緊急離脱を……」
「するわけないよ、一緒に帰るんだよ!」
再び、魔王が緊急離脱を提案しようとするが、ノーンがその言葉を遮る。
「けど、どうやって……」
完全に暗闇に包まれ、元来た道もわからない状態では、下手に動くことすらできない。
だが、そんな空間に一筋の光が差し込むように、歌声が響き渡る。
「……帰って来いという事か、ラブ」
それは、皆の無事を祈り、歌うラブの歌声だ。
「よし、私が先導する。皆、ついてきてくれ」
きっとこの歌声に導かれれば迷うことはない。
ハーティオンは2隻の艦の前で歌声を元に進み、現実世界への帰り道を歩んでいった。
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