リアクション
同時刻 ジャタの森 某所
濃緑色の六機が囲む中。
歌菜と羽純、“蛾”と相棒の少女が相対する。
「では、これにて失礼します。最後まで休戦の約定が守られることを願いますよ」
それだけ言うと、“蛾”は少女と共に踵を返す。
「待って! ……ください」
呼び止めた歌菜に振り返る“蛾”。
「どうして……私を助けてくれたんですか?」
歌菜がそう問いかけると、“蛾”は小さく笑って答える。
「あの光を出したのがこの機体のパイロットの力ならば、どんな人か会ってみたかった。そして、あわよくば話をしてみたかった――それだけです」
そう言って“蛾”は漆黒の愛機のコクピットへと乗り込む。
それに続いて相棒の少女もハッチへと身体を滑り込ませる。
その直前、彼女は歌菜を振り返った。
『骨折、戻ったらちゃんと診てもらうといいわ。お大事にね』
口どころか瞼一つ動かさない相変わらずの無表情。
だが、伝わってくる念話の声は、先程出会った頃よりも幾分柔らかくなっているように思えた。
そして彼女も漆黒の機体へと身を滑り込ませると、静かな森に音を響かせてハッチが閉まる。
ハッチを閉じた漆黒の機体は、濃緑色の六機を伴い、いずこかへと去っていった。