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“蛍”シリーズ【第七話】、【第八話】、【第九話】、【第十話】

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“蛍”シリーズ【第七話】、【第八話】、【第九話】、【第十話】

リアクション

 
 ジャタの森上空で始まった戦闘。
 強力な機体と凄腕のパイロットによる戦いは際限なく激しさを増していった。
 そして、その末に迅竜機甲師団から犠牲者が出たのだ。
 
 鳴神 裁(なるかみ・さい)ドール・ゴールド(どーる・ごーるど)物部 九十九(もののべ・つくも)黒子アヴァターラ マーシャルアーツ(くろこあう゛ぁたーら・まーしゃるあーつ)の四名。
 空戦の最中に撃墜された彼女達の死を目の当たりにしたことで、戦いは更に勢いを増していく。
 そして、一機、また一機とジャタの森へ機体が墜落していくのであった――。

 ジャタの森 某所
 
「痛ってぇ……。おい、そっちは大丈夫か? サビク?」
 激しい戦闘の末、不時着したノイエ13のコクピットから這い出したシリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)はサブパイロットのサビク・オルタナティヴ(さびく・おるたなてぃぶ)に問いかけた。
「ああ……なんとか、ね」
 同じく這い出してきたサビクも何とか生きてはいる。
 しかし、シリウスもサビクも怪我を負っていた。
 
「どうする……? ジャタの森の真ん中だぞ?」
「なんとかして安全を確保しないとね。ボクらは怪我人、イコンも動かない状態じゃ……ここは少々危険過ぎるよ」
 二人の会話に合わせたかのように、前方の茂みが音を立てる。
 外敵を警戒し、怪我した腕で苦心しながら二人は銃を抜いた。
 だが、現れた相手を見て、二人は驚いた顔になる。
 
「お前……彩羽……!」
「となると、隣にいる三つ編みくんは“蛍”ってところかな?」
 
 茂みから現れたのは天貴 彩羽(あまむち・あやは)
 その隣には来里人もいる。
 
「あら、こんな所で会うなんてね。まあでも丁度良いわ。シリウス、早速だけど相談があるのよ」
「そっち側に来いってんなら他を当たりな」
「まあ、話を聞いてもらえないかしら。今の私達に敵意はないわ」
「……どうだか」
 にべもなく突っぱねるシリウス。
 一方、サビクはあることに気付いた。
「おや、三つ編み“蛍”は随分と面白い格好をしているね。まるで近くのコンビニにちょっと買い物に行くような格好じゃないか? 確かに、敵意はないのかもしれないね」
 
 サビクの言う通り、来里人はパイロットスーツではなく、漆黒のショートジャケットに白シャツ、そしてジーンズという格好だ。
 とても、イコン戦をしにきたとは思えない。
 平服で乗っていたとのかもしれないが、だとすればあれほどの機動に耐えられた理由がわからない。
 
「もう一度言うわ。相談があるの」
「なんだよ……?」
「見た所、貴方達も怪我してるわね。私達も似たような状況なの。だから、怪我の応急処置と機体の応急修理、そして助けが来るまで一時休戦しない? まあ、その状態でこの森に住む連中から身を守りきれるって言うなら止めないけど」
 
 ややあって頷くシリウスとサビク。
 彩羽と来里人は二人を案内する。
 すぐ近くに来里人と彩羽の機体――漆黒の二機が不時着していた。
 その前には既に焚火があった。
 そして、傍らには軍用の防寒シートが敷かれ、その上には一人の若い女性が寝かされていた。
 ピンクのニットワンピースに漆黒のショートジャケット、そしてコンコルドクリップで纏めた髪が印象的な美人だ。
 
「助けが来るまでまだ時間があるわ。手当も兼ねて、話をしましょ?」
 焚火に照らされながら、彩羽はそう持ちかけた。