校長室
【ニルヴァーナへの道】浮遊要塞アルカンシェル(前編)
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「私も一緒に行くわよ。自爆装置とかついてるとは限らないし、もしもの時の人手、いるでしょ? 力仕事ならまかせなさい。防衛機構の掃討から人力で推進器ぶっ壊すトコまで色々やるわよ」 どーんと胸を叩いて言うのは、伏見 明子(ふしみ・めいこ)。 壊す気満々だ。 「見た感じだと、探索自体も一筋縄じゃ行きそうにないしね。最近なんか勘違いされがちだけど、こーいう時に役に立つために体鍛えてるんだからね!」 「ああ。キミはホント頼りになりそうだ」 優子は明子の言動にごく軽く笑みを見せる。 「神楽崎。俺も内部への突入に参加させてくれ! 避難勧告・誘導はもちろん、イコンでの迎撃戦などが大事な事は確かだけど、やっぱり一番確実な方法は『コイツ』を止める事だと思うんだ」 言ったのは、パートナーのライゼ・エンブ(らいぜ・えんぶ)と共に、ジェットドラゴンに乗って駆けつけた朝霧 垂(あさぎり・しづり)だ。 垂は教導団で話を聞いたのだが、足止めよりも突入の方が自分に向いていると考え、こちらとの合流を目指したのだ。 「それがどんなに危険かってのは承知の上だ。でも、それ以上に空京の人々を危険な目に晒す訳にはいかないからな! 頼む!!」 垂の熱意に、優子は「そうだな」と強く頷く。 「私達もついて行きますよ。力不足かもしれませんけれど、支援でも救護でもなんでもやらせていただきます」 そう言ったのは、イリス・クェイン(いりす・くぇいん)。隣ではパートナーのクラウン・フェイス(くらうん・ふぇいす)が、少し驚いた顔でイリスを見ている。 「動いているということは、意思を持つ存在がアルカンシェルを動かしているということですから。突入して倒すしかありませんよね」 イリスは断られても齧りついてでもついていくつもりだった。 正義の味方を気取るつもりはないが、無関係の人を巻き込むような戦いを黙って見てはいられなかった。 「イリス……」 プライドが高い彼女が、誰かの下で戦おうとしている姿に、フラウンは隣で感動を覚えていた。 「ご主人様がそんなにやる気なら、僕も要塞内部についていくしかないよね!」 フラウンも覚悟を決めて、イリスについていこうと思う。 「……あまり一般の百合園生に無茶はさせたくないんだが……よろしく頼む」 優子はそう答えた。 「私も……止めるのを、手伝いますぅ」 もう一組、戦闘には不向きと思われる百合園生が同行を志願する。 「私にも……できること、やれることが……あるはずですから……私も、みなの力になりたいんですぅ」 「日奈々が行きたいって言うのならあたしは止めない。その日奈々を守るのがあたしの仕事だしね。勿論、日奈々だけじゃなくて、他のみんなも守ります」 冬蔦 日奈々(ふゆつた・ひなな)と冬蔦 千百合(ふゆつた・ちゆり)だ。 千百合は兎も角として、日奈々は盲目であり、運動も苦手だ。 優子は彼女の同行に対しては首を縦に振ることは出来なかった。 「キミには同行は頼めないが……そう、出来ることを、やってほしい。キミの力も必要だから」 優子の言葉に、日奈々はこくりと頷く。 「あたしも、日奈々と一緒にみんなを支援するね!」 千百合が言い、優子と日奈々が頷いた。 「私も行きますぅ。自分の身を守れる程度の身のこなしはあるつもりですぅ」 神代 明日香(かみしろ・あすか)は、魔法の扱いや、魔法に関しての知識を有していることを、優子に話し、同行を志願する。 世界を守るなどと、大それたことを言うつもりはなく。 正義の味方でもない。 それでも、日常を破壊するものを放ってはおけない。 阻止したい。その為に力を貸したい。 それは特別なことではない、普通の考えだと明日香は思っていた。 彼女の移動手段はエターナルコメット。 「余裕があれば、空飛ぶ魔法↑↑で飛行のお手伝いもできますぅ」 それから明日香は、内部が昔のままだと考えることも早計だと思うと意見を出す。 戦闘能力は勿論、あらゆる事態に対応できるように、幅広い様々な能力をもった人選が必要なのではないかと。 「駆動機関を取り外したら爆発なんて事態も想定できますから……。迂闊な行動は避けたいですぅ」 一介の生徒としては出過ぎた意見かもしれないと思いながらも、必要と考えて明日香は皆の前で意見したのだった。 「キミの言うことは尤もだ。個々の能力や装備も踏まえて、班を決めさせてもらう」 優子はそう答える。 ただ、時間が迫っている為、そう細かく個々を知っていくことは不可能だ。 志願者はかなり多いようだ。その中から選ばなければならないのだが……。 「優子隊長の指示に従うよ」 そっと声をかけたのは、小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)。 他校生ではあるけれど、美羽は優子のことをずっと気にかけてきた。 教導団に留学した彼女が、何を学び、どれだけ成長したのか。 この戦いで見せてもらおうと思っていた。 優子は凛とした表情で頷く。 「見取り図が届いたぞ」 ゼスタがモバイルパソコンの画面を優子に見せる。画面には、風祭 優斗(かざまつり・ゆうと)がアレナから詳細を聞き作成したアルカンシェルの図面が表示されていた。 「動力源の場所、わかるかな? 最短距離の位置狙って行かなきゃね」 ライゼが図面を覗き込む。 図面にはブライドオブシリーズがあると思われる場所には、大きくバツ印がついていた。 教導団を経由しているらしく、団側の攻撃目標についても記されている。 確認して頷いた後。 その他の志願者の言葉も聞き、一定の基準でまず判断し、個々の志願理由を加味して、優子は突入班の編成を決めた。 「まずは、私と共にミサイル攻撃に合わせてバリアを突破し、砲台付近からの侵入を目指す班だ。ここからは目的地までも遠く、集団行動は不可能と思われるため、突入後は臨機応変に要塞の阻止を目指すことになる」 メンバーの選定理由として優子は、突入後、緊急脱出をすることになった場合、自力で(パートナー間で)飛行可能かどうか、その為の小型の道具を身に着けているかどうかを重視したと説明した。 「要塞の進行を止める為に、突入後も攻撃は続けることになるだろう。万が一の際には、中に突入班のメンバーが残っていても、要塞を外部から破壊する必要が出てくる。壁をぶち破って脱出する可能性、爆発で外に投げ出される可能性、どちらも少なくはない」 優れた身体能力を持っていても、飛ぶことが出来なければ、生き残ることはできない。 尚、神楽崎優子自身は、ゼスタの飛行能力を頼ることが出来る。 ……優子がアレナの同行を望まなかった理由の一つだ。 ●第1突入班(砲台突入) 桐生 円(きりゅう・まどか) オリヴィア・レベンクロン(おりう゛ぃあ・れべんくろん) ミネルバ・ヴァーリイ(みねるば・う゛ぁーりい) 武神 牙竜(たけがみ・がりゅう) 重攻機 リュウライザー(じゅうこうき・りゅうらいざー) 武神 雅(たけがみ・みやび) 龍ヶ崎 灯(りゅうがさき・あかり) 早川 呼雪(はやかわ・こゆき) ユニコルノ・ディセッテ(ゆにこるの・でぃせって) タリア・シュゼット(たりあ・しゅぜっと) ヘル・ラージャ(へる・らーじゃ) カレン・クレスティア(かれん・くれすてぃあ) ジュレール・リーヴェンディ(じゅれーる・りーべんでぃ) 神代 明日香(かみしろ・あすか) 伏見 明子(ふしみ・めいこ) 九條 静佳(くじょう・しずか) 鬼一法眼著 六韜(きいちほうげんちょ・りくとう) レヴィ・アガリアレプト(れう゛ぃ・あがりあれぷと) グラキエス・エンドロア(ぐらきえす・えんどろあ) アウレウス・アルゲンテウス(あうれうす・あるげんてうす) 小鳥遊 美羽(たかなし・みわ) ベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー) コハク・ソーロッド(こはく・そーろっど) 朝霧 垂(あさぎり・しづり) ライゼ・エンブ(らいぜ・えんぶ) エメ・シェンノート(えめ・しぇんのーと) アレクス・イクス(あれくす・いくす) ジュリオ・ルリマーレン(じゅりお・るりまーれん) リュミエール・ミエル(りゅみえーる・みえる) 琳 鳳明(りん・ほうめい) セラフィーナ・メルファ(せらふぃーな・めるふぁ) ラルク・アントゥルース(らるく・あんとぅるーす) 「続いて、援軍のバリアー破壊が成功した場合、合わせて、制御室、操縦室に近い場所に突入してもらう班だ。知能のある生物に騎乗しているメンバーを中心とさせてもらった。冬蔦日奈々と千百合は飛行可能ではあるが、こちらに協力してくれ」 優子の言葉に、日奈々と千百合はこくりと頷く。 ●第2突入班(制御室側) 鬼院 尋人(きいん・ひろと) 冬蔦 日奈々(ふゆつた・ひなな) 冬蔦 千百合(ふゆつた・ちゆり) 皆川 陽(みなかわ・よう) テディ・アルタヴィスタ(てでぃ・あるたう゛ぃすた) 度会 鈴鹿(わたらい・すずか) 織部 イル(おりべ・いる) ヴァル・ゴライオン(う゛ぁる・ごらいおん) キリカ・キリルク(きりか・きりるく) 吉永 竜司(よしなが・りゅうじ) 「次に、その制御室方面の突入援護に当たってもらいたい人物だ。突入口を開くこと、障害の取り払い、退路の確保をしておくこと、救護が主な役目だ」 志方 綾乃(しかた・あやの) 真口 悠希(まぐち・ゆき) 三船 敬一(みふね・けいいち) 白河 淋(しらかわ・りん) イリス・クェイン(いりす・くぇいん) クラウン・フェイス(くらうん・ふぇいす) ロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな) テレサ・エーメンス(てれさ・えーめんす) メリッサ・マルシアーノ(めりっさ・まるしあーの) シャロン・ヘルムズ(しゃろん・へるむず) ザウザリアス・ラジャマハール(ざうざりあす・らじゃまはーる) 「動力、機関室は要塞の中心の下層にあり、どこからも離れているようだ。皆も図面を頭に叩き込んでおくように」 優子はゼスタに指示を出し、希望者の携帯機器にも図面を転送しておく。 「あとは……」 優子は武尊と刀真に目を向けた。 「国頭武尊と樹月刀真、漆髪月夜は、崩城亜璃珠と共に砲台側のサポートに当たってもらいたい」 「俺は神楽崎と行く。痛いのも苦しいのも引き受けると約束したからな」 武尊の言葉に優子は首を横に振る。 「前にも言ったはずだ。キミや仲間が傷つけばやっぱり私は痛みを感じるし、苦しいから。侵入時の攻撃と、侵入口の確保を担当してほしい。尤も、私達がそこから脱出する可能性は低いと思う」 コントロールルームを抑えて、着陸の見通しが立てば、脱出する必要はなくなる。 その連絡を受けてからは、自由に動いてもらって構わないと優子は言う。 「わかりました。まずは、突入口を開くことに全力を尽くします」 刀真はそう答えたが、武尊はわかったとは言わなかった。 「では、すぐに作戦に移る。桐生円はルシンダさんと共に、私のサポートについてくれ。テレパシーで皆に情報を送ってほしい」 「わかりました」 円は優子のサポートにつくことに。 必然的に突入後は、オリヴィアがルシンダの護衛につくことになった。