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リアクション
●13
雪が積もっていた。へし折れた丸太の上に。砕かれた椅子やテーブルの上に。破られたノートや書籍は、風が吹くたびにちぎれて飛んだ。
かつて山小屋だったものが、今はただの残骸だった。自然がもたらしたものではない。何者かが意図的に破壊したのは明白だった。
「イサジ翁の小屋……ですよね」
ロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)は油断なく、残骸を調査しながら呟いた。どんな犯人が破壊したにせよ、それはヒステリックな人物だったと思われる。やり方が徹底していた。執拗といっていいほどに。
「リンさん、これ、血の跡じゃない?」七瀬 歩(ななせ・あゆむ)が、床板と思わしき板を取り上げて示した。周辺に犯人が潜んでいる可能性もある。表情が厳しい。
間もなく、
「歩ねーちゃん!」悲痛な声を七瀬 巡(ななせ・めぐる)が上げた。見たくなかったものを見つけてしまった、と言いたげだ。人間の指だったものが雪中、無造作に転がっていたのである。
「大きさ、形状からして女の子のものよね」歩は慎重にそれを拾い上げると、冷凍状態で保存できるよう氷術でコーティングし、帯同したフリーザボックスにしまった。「ということは、つまり……」
「うう、タニアさんのものである可能性が高いようですね……」悲痛な表情でロザリンドが続けた。
「希望を捨てないで。指とか凍ってる状態で細胞があんまり壊れてないなら、繋げられるときもあるって聞いたことある。絶対に治るなんて言えないけど、最善は尽くさなきゃ!」
歩の声にロザリンドは頷く。「そうですよね。まだ、取り返しの付かないことになったという確証はありません。円さんと連絡を取り合いながら、調査を続けましょう」
タニアが行方不明になったとの報を受け、ロザリンド、歩、巡は三人で捜索隊を結成、村の復興地点にいる桐生 円(きりゅう・まどか)とテレパシーで通信しつつ雪中を探っていたのである。
「許せないな。こんなの」巡は、拳を握りしめていた。義憤、と一言であらわすにはあまりに複雑であまりに無念な怒りを感じていたのだ。「山には怖い生き物も悪い奴もいる、それはわかっていたけど。ここまでやるのはルール違反だよ!」
「まずは小屋の残骸をさらってみましょう。このような狼藉をなした者が、なにか手がかりを残しているかもしれません」
と言うロザリンドに応じ、歩が、
「よし、じゃあ、まずはこの大きな板をどけてみよう」と柱をどけたとき、
彼女たちは、見つけた。