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忘新年会ライフ

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忘新年会ライフ

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「蜂蜜酒のおかわりは専門家がいるから、あとでその人を呼んでくるわ」
 オーダーを取りに来ていた雅羅が、ラム酒をラッパ飲みする佑也を横目で見ながら、静かに呟く。
「店が賑やかだと店員も面白そうだね、雅羅?」
 刀真の問いかけに、雅羅は冷ややかに目を細める。
「そう? 今の刀真の方が私達より面白そうだけど?」
 雅羅はそう言って、月夜と白花が妖しく絡み合う様を見る。
 少し前まで白花は玉藻にお酌をしながらゆっくりと蜂蜜酒を飲んでいた。
「ふぅ……美味しいです、何かおつまみはありませんか?」
「白花! 私がおつまみをあげるよ!」
「え?」
 月夜が白花に抱きつき、雨あられの如くキスをする。
「月夜さん。これはおつまみではなく、お戯れだと思いますけど……」
 そう言う白花だが決して嫌では無いのでクスクス笑いながら「くすぐったいですよ」とされるがままになっていた。
「(……私も酔ってきてますね)」
 頭の片隅にある白花の冷静さがそう判断している。
「いいの? 止めなくて?」
「害はないだろう」
 雅羅に笑って答える刀真。
「違うわよ、もう一人の方……」
「え?」
 刀真が見ると、玉藻が悪酔いしている隣の席のサラリーマン達にちょっかい(【アボミネーション】)をかけている。
「玉藻! 何してるんだ!?」
「刀真。我は隣が五月蠅いので、注意していただけだ」
「注意じゃないだろう? ……すいません、俺の連れが迷惑をかけました」
 刀真はサラリーマン達に謝ると、玉藻を抱え上げて自分達の席に帰ろうとする。
「放せ刀真!! 我は五月蠅い奴等を黙らせただけだ!」
「おい!? 暴れるなよ!?」
 振りほどこうとして暴れる玉藻。着物がはだけて下着を刀真に見られてしまう。
「……紫色のレースの下着が見えてるぞ?」
「みっ見るな!? これは月夜と封印の巫女が着ないと駄目だと言うから仕方なく!」
「珍しいな、下着を着けてるのか……うわっマジで暴れるなって落ちる落ちる!?」
「五月蠅い、この格好の方が恥ずかしいんだ!」
「照れてるのか? いつもは下着を着けてないから丸見えなのに何故照れるんだ? でも、照れ顔も可愛いな」
「可愛い言うな!」
 顔を真っ赤にした玉藻。
 恥ずかしさで暴れるたびに、紫色の下着がどんどん露出していく。
「あ! 玉ちゃん、ちゃんと下着付けてくれてるんだ。うんうん、折角選んだし使ってもらえて私、嬉しいよ!」
 白花を蹂躙しつくした野獣。もとい月夜が今度は刀真に抱えられた玉藻に向かって飛び込む。
「玉ちゃ〜〜ん!!」
「うぉわッ!?」
 月夜に抱き付かれ、バランスを崩した刀真が玉藻を抱えたまま派手に転倒する。
「う……う〜〜ん」
 刀真が目を開けると、雅羅が覗き込んでいた。
「大丈夫?」
「ああ……平気だよ」
「少し飲み過ぎたんじゃない? 女の子一杯侍らす人って私の国じゃ大体悪党よ?」
「何かハーレムハーレムって言われてるけど……まあ良いかなって思ってる」
「どうして?」
「なんだかんだ言っても、俺はこいつらに護ってもらわなかったらとっくに死んでるだろうし、それに……これからもずっと傍にいて欲しいと思っているから」
 下から雅羅の顔を見つめ、苦笑する刀真。そこに、月夜の顔がインしてくる。
「刀真、それ本当?」
 刀真の顔のすぐ近くに現れた月夜の顔は、先程までの緩くなっていた彼女の顔ではなかった。
「刀真は私達にずっと傍にいて欲しいんだ?」
「ああ。そうだよ」
「私は刀真の物だからずっと傍にいるのは当たり前だけど、もうそろそろ刀真には今まで以上の態度で示して欲しいな」
 吸い込まれそうな月夜の黒い瞳を刀真がじっと見つめた後、静かに目を瞑る。
「(これは遠回しにちゃんと自分の物にしろと言われているのか?)……ああ、じゃあ今年はちゃんと俺のものにしてやるさ」
 そう言って笑う刀真。
「……って、なに口走ってんだ。俺も酔ってるね」
 刀真としては笑いの方向へ持って行こうとしたらしい。
「刀真、我に手を出すのならいつでも良いぞ? 早くしろ」
「……は?」
 玉藻が刀真の手を取り、下腹部へ誘導しようとする。
「刀真さん。私、緊張してちょっと飲み過ぎたかもしれませn。はぁ……お水が美味しいですね」
 白花は玉藻とは逆の刀真の傍に寝転び、彼の足の間に自分の足を絡める。
「私達が刀真さんの物にされちゃうんですか……そうしてくれるのは嬉しいですけど……って私は何を言っているんでしょう!? でも……私も待ってますね」
「え……?」
「ふえっ!? ちゃ、ちゃんと刀真の物にしてくれるって……」
 予想外の返事が返ってきた事に瞳を潤ませる月夜が、刀真の顔に胸を押し当て
「まっ……待ってるよ」
「モゴッ!? ……つ、月夜!?」
 美少女達にもみくちゃにされる刀真を、雅羅がやや冷めた視線で見つめる。
「刀真? 構われすぎて死ぬっていう未来も想像しておいた方が良さそうね」
「そこのはいてない娘。その制服の下には何もはいてないのか?」
「……一緒にしないでくれる?」
「我は日本酒と蜂蜜酒を頼む。後は何かお勧めがあるのなら頂こう」
「俺も蜂蜜酒、おかわり!」
 刀真が月夜の下から腕をぶんぶんと振る。
 月夜がクルリと雅羅の方を向く。
「あ〜〜〜! 雅羅だ〜〜!」
「え?」
「一緒の楽しもうよ〜〜!」
 起き上がった月夜がクイッと雅羅の手を引く。
「きゃッ!?」
 腕を引っ張られた雅羅が、刀真の上に倒れこむ。
 ラム酒を飲む佑也も、「あ、俺も蜂蜜酒くださーい」と声をかけつつ、今やツイスターゲームの如く組んずほぐれつ状態の刀真をチラリと見る。
「こら、月夜。いい加減離してくれよ……。ん? いや、月夜じゃないぞ、この重量感……誰だ?」
 顔面に押し付けられた質量の違いを、酔った頭でも瞬時に判断する刀真。
「イタタタ……ごめんね、刀真」
 刀真の上で起き上がったのは雅羅であった。
「(成程……通りで……)いや、気にすることはない」
 かなり羨ましい状態でも、刀真はいつものように冷静に返事する。
「(リア……)」
 様子を見ていた佑也が言おうとして飲み込んだ言葉は、直ぐ様代弁される。
「リア充爆発しろーーー!!」
 隣の席で飲んでいた若きサラリーマンの男性の咆哮が店内に響く。しかし、今の刀真の状態を見て、それに異を唱える者は皆無であった。