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リアクション
「やっぱり桜はキレイだよな」
シートの上に腰かけて、風祭 隼人(かざまつり・はやと)は体を反り返させて桜を見上げた。
「ずっと見ていても、飽きませんね。美しいですわ」
彼の隣には、婚約者のルミーナ・レバレッジ(るみーな・ればれっじ)がいる。
彼女は保温バックの中から、作ってきた料理を取り出していく。
から揚げに、卵焼き、ウィンナー、小さなおにぎりに、肉団子、ポテトサラダ。
「こっちは、貰ってきたパン。サンドイッチ系にしたぜ。あと、飲み物は、茶とコーヒーを貰ってきた。……酒は、まだ一緒に飲めなくてごめんな」
「いえ、お茶に合う味付けにしましたから」
お酒は必要ありませんと、ルミーナは微笑んだ。
「うん、それじゃいただきます」
「戴きます」
隼人はルミーナからフォークを受け取って、さっそくから揚げを刺して口に入れる。
「こちらもどうぞ」
その間に、ルミーナは、紙皿にサラダをとって、隼人に渡してくれた。
「ん、ありがとー。ルミーナさんはホント気が利くな。……味付けも最高!」
花も美しいけれど、花より団子、それよりルミーナに夢中になってしまいそうになる。
「幸せだぜ……」
しみじみ言いながら、隼人はルミーナが作ってくれた料理を食べて、一緒に桜を観賞する。
「皆も幸せそうです。桜の花が咲いている時間は短いですけれど……この場所が、このまま在り続けたのなら」
「うん、来年もまた花が咲く」
そして皆また、笑顔の花を咲かせる為に、この場所に集うのだろう。好きな人と共に。
「隼人さん、こちらもどうぞ」
ルミーナが、自分のフォークでとった肉団子を隼人の方へと向けた。
「あ、ありがと!」
隼人が口を開けると、ルミーナは肉団子を隼人の口の中へと運んでくれた。
「……うん、美味い! 肉のうま味が良く出てるな〜」
「はい、調味料にこだわり、タレは控え目にしてみました」
幸せそうな隼人の笑みを見て、ルミーナの顔にも花が咲く。
(お、美味しそう……)
フレデリカ・レヴィ(ふれでりか・れう゛ぃ)は、近くで花見をしていたルミーナの弁当を見てしまった。
(でも、負けてない。うん、負けてない……)
そう唱えながら、フレデリカは自分の作ってきた弁当を広げた。
「あ、フリッカさん。お弁当作ってきてくださったんですね」
「う、うん。パンまつりをやるって話だったから、パン中心のね。食べながら観賞しよ」
「はい、では飲み物は僕が貰ってきますね」
「ありがとう。その間に用意しておくね」
フィリップ・ベレッタ(ふぃりっぷ・べれった)は屋台に飲み物を買いに出かけて、その間にフレデリカは作ってきた弁当と、フォークや紙タオルをシートの上に並べた。
「お待たせ!」
息を切らして、すぐにフィリップは戻ってきた。
彼が貰ってきたのは、お茶と、オレンジジュース、フルーツの炭酸飲料だった。
「フリッカさんはまずは、何飲みます?」
「オレンジジュースを戴こうかな。あ、私が入れるわ」
言って、フレデリカはフィリップが持っていたボトルに手を伸ばした。
二人の指と指が触れ合う。ただそれだけのことなのに、なんだか嬉しくて微笑み合った。
「僕もオレンジジュースでお願いします」
「うん。はいどうぞ」
フレデリカはボトルの代わりに、おしぼりをフィリップに渡した。
「用意がいいなぁ」
感心しながら、フィリップは手を拭いて。
それから二人は、飲み物を手にして乾杯をして。
のんびりお弁当を食べながら桜を眺めだした。
「ふふ、綺麗ね」
今日はフレデリカにとって久しぶりの休日だ。
恋人のフィリップと美しい桜をながめながら、のんびり過ごす事が出来る。この時間はとても贅沢な時間だった。
桜の花に負けない可愛らしい笑顔を、フレデリカは終始浮かべていた。
「綺麗だし、お弁当は美味しくて……ホント、とっても嬉しいです」
フレデリカの手作りのパンに、BLTサンドイッチを食べながらフィリップも穏やかな笑みを浮かべている。
「あ、ありがとう」
フィリップの言葉が嬉しくて、フレデリカはどきどき彼を見つめる。
実はパンを焼いている最中には失敗をしてしまって。
指にはちょっと火傷がある。
失敗したパンは家に置いてき……。
(!?)
フレデリカが声を上げるより早く、フィリップが焦げているサンドイッチを掴んだ。
(失敗したのは、置いてきたはずなのに)
紛れ込んでしまっていた。
止める間もなく、フィリップはサンドイッチを口に入れてしまった。
彼の顔がちょっとだけ反応を示す。
「ご、ごめんなさい……」
「え?」
「ちょっとそれ、焼きすちぎゃって……。変なもの食べさせちゃってごめんなさい!」
ぺこりと頭を下げて謝るフレデリカ。
「そんなことないです!」
フィリップは少し強めの声で言う。
「こういうのも、香ばしくて美味しいよ。手作りの味です」
そう微笑むフィリップを見て、フレデリカはますます彼に惹かれてしまう。
「ご……」
もう謝るのはやめて……。
「ありがとう。フィル君」
嬉しそうに、微笑んだ――。
お腹が膨れてからは、自然に2人は手を繋いで。
ゆっくり、花を楽しんでいた。
のんびり、他愛無い話をしながら。
「……フリ……」
肩に柔らかな重みを感じて、フィリップがフレデリカを見ると。
彼女は彼の肩にもたれて、うとうとしていた。
「フィル君……大好き」
まどろみながらの言葉に、フィリップは少し驚いて。
「ありがとうございます、フリッカさん。幸せな、一日になりました」
火傷した指の側をそっと撫でた後、フィリップはフレデリカの肩を優しく抱いた。
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