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横山ミツエの演義(第3回/全4回)

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横山ミツエの演義(第3回/全4回)

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武雲嘩砕一日目〜建国宣言の準備


 その日の夜、ミツエは本部で諸葛亮 孔明をはじめ、親衛隊の面々と国名と建国宣言文について話し合っていた。
 何のために新王朝を築きたいのかという孔明の問いに、ミツエは率直に「自分の国が欲しいから」と答えて、孔明に呆れられたような目を向けられたが、それが正直なところなのだから偽ることはできない。
「どうして自分の国が欲しいのかってことでしょ。カーシュにも言ったけど、中国が滅ぶのを黙って見ていられないからよ。頂点にいるあの男が国をダメにするなら、あたしが立て直すわ。それで、中国のみんなもこれから連れて行くみんなも飢えない国を作るのよ」
 中国には新しいトップが必要なのよと強く訴えるミツエ。
「……なるほど。では、皆さんにはこれから訪れる苦難を受け止める覚悟はおありですか?」
 この場にいる一人一人を見回す孔明に、最初に答えたのは姫宮和希だった。
「なめんじゃねぇよ。これから先、立ちふさがる奴は残らずぶっ飛ばしてやるぜ。行く先が地獄でもどこでもついてく覚悟だ」
 他の者からも反対はない。
「それでは、内容と国名を決めましょう」

 募集した国名にはたくさんの応募があった。
 名を書かれた応募用紙をテーブルに広げて、みんなでそれぞれ順に見ていく。
「えーと、『胸(キョウ)』? おっぱい三国志が強烈でって……クッ、あたしの胸のサイズなんか気にしなくていいのよっ。『京』と『胸』じゃだいぶ違うじゃない」
「こんなのもあるぜ。『豊(ホウ)』『乳(ニュー)』。国も胸も豊かになるように。『乳』は、言うまでもないなイテッ」
「どいつもこいつもっ」
 ナガンの足を蹴飛ばすミツエ。
「これはどうです? 『麗(レイ)』。王であるミツエさんの美しさを表すと共に……あ、すみません。これはナシで」
「ちょっと、何で折りたたむの? 何が書いてあったの?」
「何でもありません。他のを見てください……あっ」
 紙片を隠そうとする優斗の手から無理矢理むしり取ったミツエは、中身を読んだとたん冷たい空気を纏った。
「お。『麗』は他にもあるぞ。カレー店の……ごめん、何でもない」
「和希……?」
 体感温度が二、三度下がったのを和希は感じた。
「これならどうじゃ!」
 バーン、とミツエの前に紙片を突き出すナリュキ。
 そこに書かれていたのは。
「『梅(ウメ)』。ミツエ様は梅干が好きそうなので……って、好きで悪かったわね! おにぎりの具では梅干が一番好きよ!」
 まともというか、真面目な投稿ももちろんあった。
 波羅蜜多実業高等学校からとった『波(ハ)』、ミツエの漢字名と関連付けて『煌(コウ)』、今後も上を目指すようにと願いを込めた『昇(ショウ)』などなど。
 良い候補はたくさんあるのだ。
「『頂』『天』『永』……『金』? これはまた痛烈ね」
 かつて金という、異民族が作った大きな国が中国大陸にあったが、これを投稿した人はそういう意味だけを込めたわけではない。金鋭鋒への嫌味も込めた名前らしい。
 その後も選考は続いた。