リアクション
「武装をしていません。校長を帰してください」 〇 〇 〇 ファビオの封印の石を取りに向っていた一行は、夜遅くに百合園女学院に帰還を果たした。負傷者はほとんどいなかった。 まだ封印解除すべきかどうか判断が出来ないため、玉はとりあえず鈴子が管理することになり、迎えが来た者から家へと帰っていった。 「っと、ミルミちゃんゴメンね」 ミルミと一緒に正門に向っていたアルコリアが0時の鐘の音を聞き、立ち止まった。 「どしたの?」 「ん……青い髪の班長さんが、大切な人の為に頑張ろうとしてるから。上手くいきますようにって」 アルコリアが満月を見上げ、ミルミも月を見上げた。 「あの捨て身すら厭わない決意は、屋上から長い出張に出た方に関係あるんでしょうし、ね」 あの場に、アルコリアもミルミもいたから。 ミルミ個人は、アルコリアが常にくっついていたから。全くの無傷で、敵との接触もなかったけれど……。 「ミルミもお祈りするね。みんな、みんな、無事に帰ってきますように……」 ミルミは――そして、アルコリアも人質交換が行われていることを知らない。 だけれど、校長の身に何かがあったのかもしれないことくらいは感じていた。 手を繋いで、目を閉じて。 共に祈った。 エリスは、リーアと共に、ヴァイシャリーに戻って来ていた。 リーアはすぐに病院へと運ばれて、数日入院することになり、エリス達は自分の部屋へと戻っていた。 夜遅くまで、キッチンでエリスは料理をしていた。 静香がいつ戻ってきてもいいように。 迎えて、何時も通りのお茶が出来るようにと。 「本当においしいんですえ、今度こそ……」 食べてもらい損ねた『旬のアンズをジャムにして、挟み込んだお菓子』を作りなおし、冷やしておく。 「ホント、美味しそうですわねぇ」 そんなエリスにティア・イエーガー(てぃあ・いえーがー)が後ろからぎゅっと抱きついて、耳を噛んだり、胸を触ったり、悪戯をする。 「やめておくれやす」 じたばた抵抗するエリスに、ティアは笑みを浮かべる。 ティアなりに、元気のないエリスを、元気付けようとしているのかもしれない。 「私には皆さんの様に戦うたりするなん力あらへんよって、この位の事しかでけへんけど……揃って無事戻って来はりますように」 ティアを振り払いながら、エリスは慕い、心から案じている校長や百合園の仲間達の姿を思い浮かべていく――。 呼雪は研究所内をユニコルノや白百合団員達と駆けていた。 団員達に、妖精のチアリング等で、回復、援護し、必要に応じて前へ出て、キメラを討つ。 無抵抗の相手には攻撃を加えず、縄で縛っていく。 ――プレートのかかった部屋に入った時だった。 その部屋はすでに誰かが調べた後のようであり、散らかっているだけで何もないのだけれど……。 窓から、眩しいくらいに月の光が射し込んでいた。 満月、時間は0時を過ぎた頃、だ。 「アレナ様……」 ユニコルノが小さく声を発した。 「呼雪は、なんと伝言を頼んだのですか?」 月を見ながら、ユニコルノが尋ねる。 「特に変わったことは書いていない」 そうそっけなく言い、呼雪は武器を手に廊下へと戻っていく。 ユニコルノは窓の外を見て、アレナの姿を思い浮かべる。 「信じています。この戦いが終わって再び会える事も、アレナ様が今まで仰った言葉も」 そして、呼雪の後を追った。 廊下に出た呼雪は一瞬だけ、振り返って月の光に目を細めた――。 言っただろう、お前は自由だと。 それに……今は独りではない筈だ。 神楽崎副団長以外にも大切な者達がいるだろう? お前が傷付いたり命を落としたりすれば、悲しむ者がいる事を忘れないで欲しい。 大切なものを守る為に力が必要なら“躊躇うな” 自らの願うものを、お前自身の手で掴み取れ。 ……次に会う時は、笑顔を見られると信じている。 |
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