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Entracte ~それぞれの日常~

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Entracte ~それぞれの日常~

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 ヴァチカン。
 
 マヌエル枢機卿が大勢の人々の前に立った。
 今、この時をもってこの世界――『地球』が動く。

『親愛なる兄弟姉妹の皆様。
 本日、ヨーロッパに激震が走りました。
 この世界に渦巻く悪意が形となり、私達の前に現れたのです。
 それは、私達自身が生み出してしまった歪みなのかもしれません。
 しかし、ならばそれを正すのもまた、私達です。
 そのための力を、私達は主より授かりました――ご覧下さい』
 
 ヴァチカンの空を、件の赤い機体、そして銃の代わりにランスを装備した紫の機体が駆けて行く。

『神の代行者たる騎士「クルキアータ」。我々の新たなる希望です。
 しかし、こうも思われることでしょう。『武力を持って武力を行使する勢力を討つのはテロリストと同じである』と。
 その通りかもしれません。ですが、そうすることでしか「救済」がない場合、ただ大人しくしていられるでしょうか。
 私達は生まれながらに罪を背負っています。そして、主のため、親愛なる兄弟姉妹のために戦うことも罪であるというのなら、私はそれを全て背負いましょう。今ここに、主の下に集った者達のためにも。
 今、世界は一つにならなければなりません。私達の前に迫っているものは、悪意だけではありません。
 この惑星(ほし)に住まう者達の中には、己が欲望のために、他者をも飲み込もうとする者達がいます。そして、その者達によって、さらなる反発が、悪意が、憎悪が、生まれようとしているのです。それらはいずれ、跳ね返ってきます。
 はっきりと言いましょう。今、シャンバラで活動をしている地球人達のことです。もちろん、彼らの全てがそうであるというわけではありません。彼らの中にも、私達と同じように強い信念を持っている者達がいます。そのような者達をもひとまとめにして、悪意の塊であるなどとはとても言えません。
 しかし、例え多くがそうであっても、わずか少数の『力ある者』たちの歪みが、時として大きな歪みとなってしまうのです。
 パラミタは私達とは異なる、異教の神々が治める地です。異なる価値観を持っている、中には分かり合うことさえ難しい者達もいることでしょう。ですが、それならばお互いに住み分けを行えばいいだけです。それをせず、支配を広げようとするから反発を招くのです。
 そして、彼らの反発は頂点に達しようとしています。その怒りの矛先は私達に向けられるかもしれません。
 ですが、それを招いたのは私達と同じ人間であるということを忘れてはなりません。その者達を正せるのも、また私達です。
 そのために力を使う必要があるというのなら、彼らに対しその力を振るいましょう』

 そして、宣言する。

『今ここに、私達は地球の、主の下に集う兄弟姉妹を脅威から守るため、独立武装勢力対策軍「F.R.A.G(フラッグ)」の設立を宣言します。
 「Force of Repressing to Armed Groups」。力をもって力を制することへの私の言葉は、先程お伝えした通りです。
 今、私達は内なる戦いの中にいます。ですが、これはただの戦いではありません。

 これは、真なる平穏を取り戻すための「聖戦」です』

 後に、マヌエルの演説は聖戦演説、あるいは聖戦宣言と呼ばれることになる。

 ここに、地球上における、仮初の平穏な日々は終わりを告げた。
 そして互いに守るべきもの、取り戻すための、聖戦という名の『戦争』が始まる――