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第四師団 コンロン出兵篇(第2回)

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第四師団 コンロン出兵篇(第2回)

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 シクニカの東側。
「さぁ、熱狂なさい。私に、戦に、この世界に」
 アルコリアが死霊兵や新たに死霊兵となった敵兵を跪かせている。そして、
「仲間をやられてるのに背を向け逃げる神の図!
 何処、何処へ逃げた神龍騎士。私に跪け!」
 神龍騎士ラスタルテの姿は見あたらない。
 
 
 西側……
「ああ、シーマ!」
 円、ミネルバ、ナコトらの頭上に浮かぶ巨大な龍。神龍騎士が、抱えていたシーマをどさっと地上に下ろす。
「一人しか見あたらんかと思うたら、ここに三人……いや、魔鎧がいるな、四人か。私の多くの部下、それに九の龍騎士が討たれた。少々見くびっておったか」
 ラスタルテだ。槍を掲げると、ナコトの後ろに死霊兵と化していた龍騎士たちが眠るように地に伏した。死霊兵たちも次々と消滅させられていく。
 ミネルバは大剣を振るい、ナコトは魔方陣を描いた。円もレーザーガトリングを抜くが、「ちょ、ちょっと。やばそうやばそう。牛ちゃん、牛ちゃんは??」「あの、円様ー、あの、りろーどのたいみんぐをちょっともう一回確認しておきたいのですけどぉ……」「そんな場合じゃないんだよぅ!」
 


 
 砂漠をやって来た死霊の群れから逃げ切って、何とかシクニカに到着したジャンヌ・ド・ヴァロア(じゃんぬ・どばろあ)。郊外の酒場でひと息ついていた。
「でもまさか、戦いになってしまうなんてね……」
 ジャンヌはひとまず食事を取って人心地つけながら、簡単に情報を集めた。
 占領以前のシクニカは軍閥下の圧政に苦しんでいたが、占領した者たちは民には優しいらしい。しかし、つながりのあった帝国を怒らせることとなりこのように戦争になってしまった。民の多くは、本城や周辺の地下に隠れている、とのことだ。
「帝国とここを占領した人たちとが手を組む可能性はあるの?」
「いやぁ、こうなっちまった以上はなぁ……」
 ずごぉぉぉぉぉぉん
 外で、何が何やら物凄い音がした。
「な、何?!」
 同じ酒場にいた人たちも、騒ぎになって外に飛び出していく。
「あ、うわ、わ……何で、こんなのばっかり……」
 化け物じみた巨大な、龍? 龍騎士の乗る飛龍のようなのとは全く違う。無論……さきのジャジラッド・ボゴルとその巨大ワイバーン・バルバロイであった。
 うあーー。人々が逃げ散っていく。
「だ、誰……?」
 ジャンヌは足が震えそうになるが、気丈に立っている。
 ワイバーンから下りた巨漢がどしどしと歩いてくる。
「うん? 女?」
「ち、違う、何を言うか、私は……」
「むう。武器商人? おお、その背に背負っているのは、パワードパーツか。ちょっと、見せてみろ」
「や、やめろっ。気安く、触るな!」
「ふん……何だおまえは。どけい。オレは酒場に入るんだ」
「ああ、うむ……」
「(ヘンな娘。商人にしては軍事口調の訛りがあるか。……)
 おいマスタァ。酒だ。あと、肉だ。あるだけ持ってこい。外のやつにあげるのでな。さて、ひと息入れたらぶっ放しにいってやるかぁ! 教導連中は、まだ来ていないのか!」
「教導連中はだと……!?」
 
 
 
 
 桐生組らの奇襲は功を奏し帝国軍にかなりの打撃を与え、これだけ多勢の敵数に対し善戦に持ち込んだ。とくに将レベルの戦いにおいては桐生組らは恐るべき個々の戦闘能力を持つ者揃いで、九騎の龍騎士をすでに殲滅してしまった。ラスタルテは味方を葬った警戒すべき敵を(未だ名は知らぬが翼の女として聞いた)アルコリア一人と見ていたが、その部下ナコト、シーマ、そして桐生組のミネルバ、オリヴィアら個人で龍騎士と渡り合える名だたる将らが控えていたとは。しかし予想に反し初戦からも神龍騎士であるラスタルテ自身が動き、シーマが個別撃破されてしまった。
 円、ミネルバ、ナコト、アムリアの前に立ちはだかるラスタルテ。ラスタルテを探すアルコリア。東側を食い止める、オリヴィア。東の密林帯からの帝国援軍は……
 
 また、この地に降り立った恐るべき存在ジャジラッドと彼が持ち込んだイコンにも匹敵する巨大ワイバーン・バルバロイ。
 それから、ラスタルテに信用された謎の中東の女とは。
 
 
 緊迫する状況の中、桐生ひなは一枚の書状を書き上げる。
「外交面にも目を向けないと完全孤立しちゃうのですよ〜。それは避けたいですっ」
 その書状は、シクニカから最も近い教導団の基地クレセントベースに送られる。
 そこには、
 ・桐生組として教導団に敵対・妨害の意思はないこと
 ・目的はシクニカに善政を敷くことにあり、領土確保のためではないこと
 ・今後の状況次第で、最低限の協力を行える間柄でいること
 が記されていた。