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第四師団 コンロン出兵篇(第2回)

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第四師団 コンロン出兵篇(第2回)

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一戦終えて――ヒクーロ国境
 
 岩山を越えて、ぶたぶたと羽音を響かせ、船が来る。
 雲賊の船だ。一隻、二隻、三、四、五、六……
「ど、どういうこと?! 何をしに……まさかあたしたちをっ……?」
 龍騎士に飛びかかろうとしていた雲雀は、はっとそちらを向く。
 敵か。味方か。
 雲賊どもは、教導団と龍騎士らのもみ合っているところへ無差別に突っ込んできた。
「ああっ、こ、この……怪我人もいるのに、こんなときに、こんなときに何を!」
 しかしそれは龍騎士たちの方も同様。いきなりの新手の来訪に驚いた様子で、砲撃などを受けないよう各々が飛龍にまたがると周囲に散った。するとやはり、雲賊は攻撃に出る。それを見るや、龍騎士は残っている部隊の指揮を執ってすぐさま、岩山の影の方へと退散してゆきそのまま見えなくなった。
 今度は、雲賊の砲撃は、地上に残っている教導団部隊に向けられる。
 雲賊ら、一斉に狙いを定める。
「教導団!! ここから出て行けやぁぁぁぁ!」
「ま、待った。あいつら、コンロンの十字の腕章を付けている。旗も上がっているぞ」
「教導……じゃねえのか? 一時、攻撃をやめや!」
 雲賊らは砲撃をせずに、艦の上空を過ぎ去っていった。
 紋章は、コンロンにおける医療行為専門班を示すもので、医者らチームを連れてくる際に、雲雀が全員に付けさせたものであった。もともとは、ヒクーロ国境に近づくにあたって、怪我人の治療を行うのみであることをヒクーロ側に知らせるためであった。
「た、助かった……」
 雲賊らも艦が撃墜された艦であり、医療従事者らが怪我人の救出を行っているのだと知ると、攻撃や接触を行ってくることはなかった。この行為は軍閥長の目に留まったが、当然、帝国を怒らせることになり、帝国は賊の引渡しを要求してきて、応じなければ賊を討つべくヒクーロ領内に侵入すると言ってきた。親父は雲賊を庇ってこれを拒み、ヒクーロと帝国の激突はやはり現実のものとなることとなる。
  
 
 教導団は獅子の艦、大型艦を失ったが、ロンデハイネ中佐、クレーメック中尉は艦の外を飛行していたクレーメックのパートナー、ヴァルナによって救われており、瀕死の深手を負っていたレーゼマン少尉と強化人間のクルツも一命を取り止めたのであった。帝国は龍騎士二騎が戦死、多くの龍騎兵も教導団とその後に雲賊との戦闘により討たれた。一騎は、残りを率いてヒクーロ東の駐屯地へと引き返した。
 
 
 
ヒクーロ問題の裏側でも暗躍せし者
 
 かつて教導団に属し、今、薔薇学のイエニチェリとなっているこの男、南臣 光一郎(みなみおみ・こういちろう)
 現在はタシガンで虎視眈々その野望と欲望を開花させるべく情勢に目を光らせていた。
「今回のヒクーロ問題……」
 その情報も、忠実な僕・鯉オットー・ハーマン(おっとー・はーまん)によりすでに彼のもとへもたらされていた。
「ヒクーロ討伐の策源として、クィクモまでの補給路とその拠点たるタシガンの重要性が増すことから、国軍のタシガンへの干渉が強まる可能性があるぜ、なぁ!」
「お、おう?」
 オットーも薔薇の衣装に身を包んだ姿で久々教導団シナリオに登場だ。
「ただでさえこんな状況なのに、また獅子がタシガン駐在の資格を濫用することになれば、タシガンの保守派が跳ね返る」
「お、おう……」
「わからねぇかなぁ? そこで俺様の出番よ」
「お、おう。また何かしでかすのかよ」
「フハハ。この機会に、タシガンにおける獅子の影響力を根絶、且つ、諸悪の根源として新星のジーベックをフハハ――してみせようぞ。オットー、俺様たちも動くか」
「おうおうおうおう」
 
 
 こうして、クィクモ、ヒクーロ、シクニカなどコンロン各地、のみならず、暗躍する者の存在も、コンロン出兵も終わりに近づく中、浮上しつつある。教導団生徒は意識を高め、しかし果敢に対処しコンロンにおける目標を達成し可能な限りよい形で収めねばなるまい。