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フューチャー・ファインダーズ(第2回/全3回)

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フューチャー・ファインダーズ(第2回/全3回)

リアクション


【11】


 寿子とリナとベファーナは、第6地区に通じる門の前まで来た。
 アイリがいるという第9地区も選択にあった。しかし、彼らが戦うというなら、そこに逃げ込むのは違うと寿子は思った。まだここに来るに至った経緯は思い出せないけれど、怪我をしたアイリが自分を送り出したのは、自分を信頼しているからだ。この任務を寿子なら完遂出来ると。
「……なら誰かに守ってもらうのは違うよね」
 それに、とリナは言う。
 特務隊が反攻作戦を企てているのならば、いずれ彼らも第6地区に、その奥にある大神殿に来る。だったら先に乗り込んでおくのも悪手ではないハズだ。
 三人を追い込む形となったヌギルの騒動だが、ここに来て追い風となった。彼を追ってクルセイダーは第8地区の中心部に集結しているため、門にはクルセイダーがいない。神官が数名警備しているだけだ。この機を逃す手はない。
「……ここは私に任せてください。教団のローブを着た方が妙な真似をしないほうがよろしいでしょう」
 ベファーナは魔杖キルシュを振るって、門から離れたところにある監視カメラを破壊する。すると神官達がカメラのほうに集まってきた。
 その隙に第6地区に侵入する。
 第6地区には祝祭のためたくさんの神官が集まっていた。三人は目につかないよう、大通りから離れ人気のないほうに。小さな教会の裏庭に忍び込む。
「……これはちょうどいいですね」
 干してあった洗濯物から、ベファーナは神官の聖衣を拝借し変装を行う。
「出来れば、生身の男性から剥ぎ取りたいところですが、まぁよいでしょう」
「え?」
 笑顔で一線を超えたことを言ったベファーナに、寿子は固まった。
「……あ、な、何を言ってるんでしょうね。変だな……」
 記憶障害の影響で性癖を忘れてしまっているベファーナだが、時間とともに少しずつ戻ってきているようだ。戻ったほうがいいのかはわからないけど。

「……おや、あなた達もこちらに来たんですね」
 不意の声に振り返ると木陰に三つの影が見えた。既にこの地区に潜伏中のゼノビア・バト・ザッバイ(ぜのびあ・ばとざっばい)シャノン・エルクストン(しゃのん・えるくすとん)、そしてグレゴワール・ド・ギー(ぐれごわーる・どぎー)の三人だ。
「お、驚かせないでよぉ……」
「それは失礼しました」
 寿子が胸を撫で下ろすのを見て、ゼノビアは小さく笑った。
「でも良かった、味方に会えて」
「私達も仲間が増えるのは大歓迎ですよ。すぐにでも隠れ家にお連れしたいところなんですが、その前に少し寄り道をしてもいいでしょうか?」
「どこに行くの?」
「腹が減っては戦は出来ませんから、食料集めに」
 ゼノビアも洗濯物の聖衣を拝借。シャノンとグレゴにも聖衣を渡す。
「これで目立たなくてすむね」
「……何故、我がこのような邪教の薄汚れた襤褸布を着ねばならぬのだ」
「バケツ頭が贅沢言うんじゃありません。あなたが一番目立つんですから」
 それから教会の食堂に忍び込む。
「……通りにご馳走が並んでたけど、そっちからもらうんじゃだめなの?」
 寿子が当然の疑問をくちにするとゼノビアは首を振った。
「考えてみてもください。素性を知られないようこそこそと食べ物を取りに行き、そそくさとどこかに消える、余計に目立ちます。ただでさえ、この地区は神官の巣窟なのですからどこで正体が露見するかわかりません」
「うん。だからね、色んなところから少しずつ貰っていくのがいいんだよ」
 シャノンはそう言って戸棚から缶詰をパクる。
 その時、ふとテーブルの上に一枚の紙があるのがゼノビアの目に入った。
 そこには”祝祭の日程表”と書いてある。その日、どのような催しを行うのか、細かく書かれた予定表だ。6日分書いてあるが、気になるのは最終日だ。超国家神の祝辞、そしてガーディアンのお披露目と気になる単語が並んでいる。
「なるほど……これは使えますね」

 ある程度食料を確保し、一行は町外れの倉庫に。
 そこには宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)那須 朱美(なす・あけみ)宇都宮 義弘(うつのみや・よしひろ)、それから騎沙良 詩穂(きさら・しほ)セルフィーナ・クロスフィールド(せるふぃーな・くろすふぃーるど)清風 青白磁(せいふう・せいびゃくじ)の姿があった。
「……第9地区に日本の国防軍か」
「状況は随分変わったようですね。戦時下ならば仕方がありませんが……」
 朱美とセルフィーナは言った。
「となると、この祝祭期間中に特務が事を起こすってぇことか?」
「その前に、情報を集めておかないと困るなぁ」
 青白磁と詩穂は言った。
「例えば、”ガーディアン”の情報かしら?」
 祥子の言葉に、義弘は不安な顔を見せた。
「この日程表に、ガーディアンのお披露目って書いてあるけど大丈夫かな」
「何が大丈夫なの?」
「……ナンバーゼロが”失敗作”の烙印を押されたのはどうしてだろうって考えてたんだ。ナンバーゼロは普通のガーディアンより凄い力を持ってる。でも、強過ぎる力はそれだけコントロールが難しいってことだよね?」
「このお披露目の時に何かが起こったってこと?」
 寿子が言うと、奥で本を読むグレゴの目が光った。
「己の手で己の首を絞める、このような一顧に値せぬ妄言を語る邪教に相応しい末路よ。我が神こそが真の神、悪しき偽の神には必ず裁きが下る」
 教団の価値観を知るため、拾って来たグランツ教の教典に目を通していたが、読めば読むほどにグレゴの憤怒の炎は燃え盛るばかりだった。
「私達は特務隊に合わせて行動しようと思いますが、皆さんはどうされます?」
 ゼノビアは、詩穂と祥子に尋ねた。
「詩穂達は情報を集めてくるよ。今はそれしか出来ないからやるしかない……って言うか、いつやるか、今でしょ!」
「私は考えがあるの……上手く行くかわからないけど試してみる価値はあるわ」