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リアクション
●第四章 機晶姫と起木保
「封印された機晶姫……」
早まる鼓動を抑えつつ虎鶫涼がリリィ・ブレイブと共に機晶姫を見た。
金属の甲冑に似た胴体。その上を、淡い黄色のワンピースが覆っている。服は、普通の服と変わらないように見える。
「封印解除は、あたし達に任せて!」
朝野未沙が朝野未羅、朝野未那と共に進み出た。了承を得る前に朝野未那がケースに【博識】をフル活用して分析。
「……これはネジと魔法が合わさった封印のようですねぇー。ネジを上手く外さないと駄目ですねぇー」
「任せてほしいの!」
朝野未羅は【ピッキング】を応用。ケースを留めるネジを丁寧にはずしていく……。
カラン
全てのネジを外し終えると蓋が落ち、直立の状態でケースに収まっている機晶姫の姿が露わになった。
「……起動しないね」
首を傾げ、朝野未沙が機晶姫をよく観察しようと顔を近付けた。
朝野未羅、朝野未那もケースの中の機晶姫を覗きこむ。
ケースの蓋が外れた音に、封印が解けたことを全員が悟った。
用意、ドンの銃声が鳴ったかのごとく、【疑心暗鬼】や機晶姫を狙ってやってきたメンバーが一斉に走り出した。
「先手必勝ォオオ!」
叫んだウィルネスト・アーカイヴスは【雷術】を金属の地面にぶつけた。
「!?」
閃光弾のかわりのそれは、見事に【疑心暗鬼】のメンバーに効いた。
「その機晶姫たんを起こすのは俺だー!!」
宣言して疾走。その先には機晶姫を起動させる二人の影。
「機晶姫、機動するですぅ〜!」
ゆったりとした言葉を発しつつも、神代明日香は素早く移動。
朝野三姉妹を退け、ケースの中の機晶姫の腕についた球体に【雷術】を放ち、電気を供給する。
眠りについた機晶姫は、これで起きると書物に書いてあったのだ。
しかし……その白く美しい眠り顔は微動だにしない。
「うーん、起きないですぅ……」
「おかしいですわ……」
首を傾げる二人は、あっけなく横に追いやられた。
「どいたどいた!」
ウィルネスト・アーカイヴスは叫んで、機晶姫にずいっと顔を近付けた。
「眠り姫を起こすには……やっぱキスか?」
ウィルネスト・アーカイヴスは唇を突き出す。
「……この……かわいい……機晶姫は……自分のものだ!!」
機晶姫を目にした鬼崎朔は叫び【鬼眼】を使用。鋭い睨みをきかせてウィルネスト・アーカイヴスの動きを止めた。
「後れをとったでござる!」
慌てて走り出すナーシュ・フォレスター。
「争奪戦だァアアアァ!」
叫んだヴェッセル・ハーミットフィールドもそれに並ぶ。肩をぶつけ合い、機晶姫を目指す。
「くっ、このままだと機晶姫にたどり着けない……」
顔をしかめたヴェッセル・ハーミットフィールドは、スピードを上げた。しかし、ナーシュ・フォレスターはついてくる。
再び肩の押し合いを始めるが、勝負はつかない。
「センセイ! 頼みます!」
覚悟を決め、ヴェッセル・ハーミットフィールドは仙桃を振りかえり、叫ぶ。
「この馬鹿弟子がぁ」
仙桃は援護せず、成竜……ドラゴンへ一気に変身。爪を振り下ろし、尾を振って機晶姫に向かう二人を妨害。
「うあっ、俺まで……」
ヴェッセル・ハーミットフィールドは鼻を打ち、眼の下の赤いペイントと血の区別がつかなくなる。そのまま転倒した。
そんなパートナーには目もくれず、機晶姫の前へ行く仙桃。
「……かわいい」
機晶姫を目前にして、鬼崎朔は呟いた。その瞬間、仙桃の手に押しのけられる。鬼崎朔は、あえなく機晶姫の前から遠ざけられた。
「悲しいけど、これ争奪戦なんだよね……ベス、ござる君、キミ達の雄姿は忘れないよ……」
倒れている二人を一瞬振り返ってから、仙桃がにっこり笑って機晶姫の黒い髪を撫で、人間型に戻った。
「おめでとう、今日からキミは俺のコレクションだ……っ!」
「ナーシュ、今だ」
傍らにあった金属の石を仙桃の額にクリーンヒットさせ、井ノ中ケロ右衛門がナーシュ・フォレスターに告げた。
「助かったでござる!」
井ノ中ケロ右衛門にナーシュ・フォレスターは手を振り、機晶姫へと一気に近付いた。
金属の地面を蹴り、一直線に機晶姫の元へ。
機晶姫が気になる井ノ中ケロ右衛門も近付いてきた。
「確かにキレイだな……」
ほう、と息をつく井ノ中ケロ右衛門。
「本当に機晶姫が封じられてるなんて思わなかったぜ。いいもん見たな」
それを横目にナーシュ・フォレスターは機晶姫の白い頬へと顔を近付けた。
「眠り姫は王子様のキスで目を覚ますものでござる」
髪を払って口元を手で拭うと、唇を尖らせて彼女の桃色の唇へと近付け……。
その横顔に【光術】がぶつけられた。
「機晶姫を目覚めさせるのは、ボクだ」
告げるのはエル・ウィンド。オールバックの金髪を撫でつけ、挑発する。
「ナーシュ、キミには退いてもらうぜ」
もう一度【光術】を放つが、ナーシュ・フォレスターは避けた。
「そうはさせないでござる」
ナーシュ・フォレスターは詠唱。【火術】をエル・ウィンドの足元へ放った。
「次は当てるでござるよ」
「脅しのつもりか?」
「本気でござる」
二人で、睨みあう。鋭い視線が錯綜する。
「一気に行くぞ!」
「応戦するでござる!」
エル・ウィンドの【光術】とナーシュ・フォレスターの【炎術】がぶつかり合う。
光はより眩しく輝き巨大化。炎も渦を巻き大きな炎の壁を作りだした。その隙を縫い【光術】がナーシュ・フォレスターに及んだ。
「よし」
まぶしい光に倒れたナーシュ・フォレスターを背後に、機晶姫に近付いた。
「封印を解くためだ。仕方ないよな」
自分に言い聞かせるかのごとくエル・ウィンドは呟いた。機晶姫の唇に、唇を寄せる……。
一方、命辛々仙桃の攻撃をかわした起木保は、初めて機晶姫を近くに見た。
「……あれが、この洞窟の機晶姫か……うわっ!」
起木保の頭を踏み飛び越え、機晶姫の前へ行く島村幸。
唇を尖らせたエル・ウィンドを押しのけ【博識】を使用し機晶姫の構造を調べる。
「これは例にないタイプですね。金属の防具装備の体に普通の服を着ているとは……興味深いです!」
身を乗り出す島村幸の横に、新たに二人がたどり着いた。
「忌まわしき禁忌の機晶姫よ! 俺の手で目覚めろーッ!!」
やっとのことで機晶姫の元にたどり着いた大野木市井は、大音量で叫ぶ。
「変な夢見ないでください! てか目覚めさせるのは私ーッ!」
マリオン・クーラーズは大野木市井を押しのけながら叫ぶ。二人は体当たりしつつ機晶姫に語りかける。
「ゴーレムはもういない。だから起きろよ」
「何も恐れることはありません。目を覚ましてください」
反応はない。続ける語り言葉は、もはや叫び声と化した。
「今だ! 起きるんだ!」
「早く起きてください!」
しかし、機晶姫が目覚める様子はない。
そこへ起木保が近付き、二人を退けて跪いた。
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