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リアクション
帰還
弁天屋 菊(べんてんや・きく)や酒杜 陽一(さかもり・よういち)の不安は、どうやら杞憂だったようだ。
ジャタの森からの帰途には、なんら妨害が入ることなく、一行は無事百合園女学院に帰還した。
ラズィーヤ・ヴァイシャリー(らずぃーや・う゛ぁいしゃりー)が喜びの表情で出迎える。
「まあ、みなさんお帰りなさい。無事でよかったですわ」
朝倉 千歳(あさくら・ちとせ)は、ラズィーヤに挨拶する。
「ラズィーヤ、ただいま。イルマと一緒にハチミツを採ってきたわ。これよ」
イルマ・レスト(いるま・れすと)が、可愛らしい小瓶に入ったパラミタミツバチのハチミツを、恭しくラズィーヤに手渡す。
同時に、芦原 郁乃(あはら・いくの)も瀬蓮にハチミツの瓶を渡す。
「ありがとう。これでラナの喉も治るわね。だれかに、このハチミツを使って料理してもらおうかしら?」
アンナ・アシュボード(あんな・あしゅぼーど)が、手を上げて名乗り出た。
「料理だったら私が作ります。調理の特技がありますからね! 蜂蜜大根を作るからラナさんに飲んでもらいましょう」
そばでは、ララ・シュピリ(らら・しゅぴり)がキャッキャと騒ぐ。
「わぁい、アンナおねぇちゃんが作るりょうり、おいしそ〜なの! ララも波音おねぇちゃんと一緒にはちみつ飲みたい〜!」
「ララちゃん、これはお薬だからおいしくないのよ。大根の味しかしないの」
「それでも飲む〜! 飲むったら飲む〜!」
じたばたするララ・シュピリを温かい目で見守りながら、アンナ・アシュボードは調理をはじめた。
まず、大根を小さなサイ状に切り容器に入れる。そこへ、採ってきたハチミツをかける。
「よし、これで2時間ほど置けばいいわ。出てきた水分をお湯で割って飲むのよ。大根の酵素で喉の炎症を抑えられるんですよ」
真名美・西園寺(まなみ・さいおんじ)も、ハチミツを使ったドリンクに挑む。
「へぇ、その蜂蜜大根、効きそうね。よーし、私だって負けないもんね。一回試作品作るわ。ラズィーヤが宣伝してくれそうだしね。佐々木、手伝って」
そういうと真名美は、レモンとライムを準備し、ハチミツを使ってレモネードを作りはじめた。「喉に良いもの」というコンセプトのため、隠し味は生姜だ。
「あ、でも炭酸水は使わないよ。ラナさんの喉を考えて優しい味に仕上げるから・・・・・・歌手の方は喉が一番大事よね。僕も料理人だから、両手と舌がダメになっちゃうと困るんだ。はい、できたわ」
そういって、真名美はラナにレモネードを渡した。
ラナは美味しそうにレモネードを飲んだ。
「あ、あ・・・・・・あ!」
「あ、少しだけ、声がよくなった!」
真名美とラナは手を取り合って喜んだ。
さらに、2時間が経過して、アンナ・アシュボード(あんな・あしゅぼーど)の作った蜂蜜大根が出来上がる。
ラナがそれを食べると、今度は完全に吟遊詩人の美声を取り戻していた。
「あ〜〜〜」
「すごい! 治っちゃったわ」
ラズィーヤは、とてもうれしそうだ。
「よかったですわ。さあ、今夜は私の別荘で吟遊詩人ラナ・リゼットのコンサートよ。みんな来てね」
「はーい」
※ ※ ※
その日の夕刻、生徒たちはぞくぞくと
ラズィーヤ・ヴァイシャリー(らずぃーや・う゛ぁいしゃりー)の別荘へと集まってきた。
みんな、ラナ・リゼットの歌声を楽しみにしている。
もうひとつ、生徒たちが腕をふるったハチミツ料理も、みんなの大きな楽しみであった。
まずは、腹ごしらえとばかり、コンサート前に料理が振舞われる。
清泉 北都(いずみ・ほくと)が採れたてのハチミツをだした。
あたりにプーンと甘い香りが広がる。
「ほら、いい匂いでしょ。さあ、みなさんお疲れさま。ティータイムにいたしましょう」
北都が、バトラーらしく、テキパキとみんなにお茶をふるまった。
カナリー・スポルコフ(かなりー・すぽるこふ)は、そのお茶にハチミツを入れてかきまぜる。
「はい、ラナさんどうぞ。あとは、ハチミツのハーブ漬けや湿布なんかも喉に効くわね。ラナさんに再び歌う力が出ますように!」
「ありがとう、カナリーさん。喉はもうすっかりよくなった。心配かけたな」
一方、
神楽坂 翡翠(かぐらざか・ひすい)たちはお菓子作りにいそしんでいた。
「さあできた。はちみつれもんとハチミツ入りのチョコブラウニーだぜ。みんなにも分けてあげるよ。自分は、戦闘よりもこっちのほうが楽しみだったからな」
そういって、他の生徒たちが美味しそうにチョコブラウニーを食べるのを、微笑みながら見ていた。
特に美味しそうに食べていたのは
橘 綾音(たちばな・あやね)。
「市場に出回らない幻のハチミツって、こんな味がしたんだー!」
翡翠のパートナー
柊 美鈴(ひいらぎ・みすず)と
フォルトゥーナ・アルタディス(ふぉる・あるたでぃす)も気持ちは同じ。
「あたしもお菓子作りの手伝い、楽しかったわ・・・・・・うーん、美味しい! 優しい甘さね。疲れが癒されるわ。それに、甘い物が大好きな子もいますからね、フォルトゥーナ」
「え? 美鈴、それあたしのこと?・・・・・・でも疲れた時には、やっぱり甘いものね。苦労しただけあるから、特別美味しい気もするわ」
隣のテーブルでは、食べる事に関して過剰に幸せを感じるという
草刈 子幸(くさかり・さねたか)が、持参した山盛りご飯に、ハチミツをかけていた。
「自分は、はじめにご飯ありきな人間であります。ゆえに、ご飯以外の食材は全ておかずです。ハチミツは一番絞りが美味いらしいであります! きっとご飯にかけたら美味いであります!」
「さっちゃん、ご飯にハチミツかけるのは気持ち悪いんじゃが・・・・・・ま、見ている分には面白いからかまわんし、美容にもいいっちゅうから、ええか・・・・・・っつーか、さっちゃん、そがぁに食べたら腹めぐよー、やめんさいー!」
みんな、美味しい料理に舌鼓を打ち、吟遊詩人の歌を待っていた。
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