リアクション
【Epilogue】
天御柱学院食堂にて、海京で養殖されたカキ料理が振舞われていた。
「う〜ん。運動した後だけに、美味しいですぅ。ねぇ?」
「確かに美味しいな。でも、なんでエリザベート校長までここに?」
「細かいことはきにしないきにしなぁい。本命の訓練では、イコンチームに勝ったんですからぁ。これでいいんですぅ」
「ま、お互い良い訓練になったとは俺も思うけどな」
そうして理由になってない理由を述べながら、ぱくぱくとカキをほおばるエリザベート。
その様子に三船敬一は苦笑しつつ、カキを口へと運んだ。
「エリザベート様も、配慮はしていたんですよね。そこまでの大技は使わず、主に火術とか氷術とか、基本的な魔法しか使っていませんでしたし」
ナナのフォローに、エリザベートは「そう、そう」としきりに頷いて、
「何だかんだでこの様な行事に協力してくれるのが校長の良い所ですからね。お疲れ様ですよ」
ザカコの労いの言葉と、渡されたお菓子を遠慮なく貰っていた。
そんな校長にズィーベンは、いつも都合いいんだから、と思い苦笑した。
「いやあそれにしても勝ててよかったです。きっとあなたが、私の勝利の女神だったのです」
ふと、ナナに声をかけてきたのはエッツェル。
あからさまな口説きに対し、ナナはやんわりと話を切り上げていくのだった。
エッツェルのパートナーのレッドは、黙って横で待機しながら見ていたが。
彼が心の中で苦笑したかどうかは、彼にしかわからないことだった。
そのころ。
訓練に負けたイコンチーム側は、海京表面についたフジツボ剥がしに勤しんでいるが。
そこにアリサの姿もあった。
「別にあなたが手伝う必要はないんじゃない?」「我もそう思う」
「いや、天御柱の生徒として。私も手伝うのが礼儀というものだ。そもそも、それはそっちも同じだろう」
アリサと話しているのはカレンとジュレール。
「ま、そう言われたらそうかもね」
「その心がけ、うちの校長も見習って欲しいものだよ」
笑いあう彼女達の隣では、テキパキと掃除に励む神楽坂翡翠と橘瑠架がいた。
ふたりになんだかテンション高めに話しているのは月夜見望。
「応! お疲れ様だぜ! 君達!! おかげでいい戦闘データは手に入ったぜ! 君達の手柄だ!」
「いえ。自分達は自分達のやることをしただけです」
「そうよね。でも初操縦にしては、上手くやれたとも思うわ」
「偉いっ! そういう謙虚さを俺も見習いたいもんだな!」
そうしてあらかた掃除し終えた頃合に、
「フジツボは珍味らしいぞ。これから我が振舞うとしよう」
というジュレールの発言により、こちらでも調理が開始されていく。
「あ、そうだ。忘れないうちに報告しとくぜ」
望は思い出したように、アリサへと近づくと、
「イコンの改善点としては、強度で言うとやっぱ間接部分だな。構造上、仕方ないとは言え攻められたらヤバそうだ。あと、訓練だからムチャな動かし方したってのもあるが、勝手に自滅してイコンを壊すパターンも多かったな。これはイコンよりパイロットの問題だが、意外と接近戦に弱い点は考慮しといたほうが良さそうだな」
一息に今回のことを報告した。
「わかった。わざわざありがとう、感謝する」
「なに、勝手にやったことだからな。さって、本当にフジツボって食えんのかな……」
若干不安そうに皆の輪へ戻る望。
そして。最後にアリサは思う。
(いずれ来る本当の戦いに勝つために、私達は、もっともっと高みを目指さないとな)
END
マスターの雪本葉月です。
今回はまたまた対決ものです。
私は懲りるという単語を知らないんでしょうか。知らないんでしょうね。
しかもロボットを操縦したり、巨大化したりで、ムチャクチャやってます。
それに、勝敗はけっこう判定頼りになった感も否めませんし。
面白いリアクションをくださった皆さんを満足させられるものに仕上がったかどうか。
ともあれテーマは『勝負』です。
誰かと誰かが勝負すれば、たいていの場合は勝ちと負けが決まるもの。
当たり前のことですけど、何事もそれで終了じゃないんですよねぇ。
勝って満足してそれ以上を求めない者。勝ってもそれに慢心せず更に高みを目指す者。
負けてもそれを教訓に次への一歩に繋げる者。勝っても負けても何も変わらずにいる者。
そんな勝負の世界は厳しくも、楽しいものですね。