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リアクション
【Battle・5 人生は結局自分との勝負の連続】
第五の訓練、開始前の控え室。
「女の子はねぇ、大っきくなんかなりたくないのよー。10Mの乙女なんて一生の恥よ、天下無敵のアタシがお嫁に行けなくなっちゃうじゃない」
高らかに叫んでいるのは草薙 真矢(くさなぎ・まや)。
聞いているのはパートナーのミスター コールドハート(みすたー・こーるどはーと)。
「……で? 俺に何をしろと?」
「あたしの代わりにでっかくなれっての」
「はぁー? 嫌だよお前がでかくなれっての」
「そん時ゃアンタの事、全力で踏みつぶすけど?(にっこり)」
「……うぜェ」
「今回はアンタに、イコンの狙撃をしてもらいたいの」
「はぁ? こんなちっこいライフルで、あのデカブツを撃てってのかよ」
「だからあんたがデッカくなるんじゃないの」
「素早く動くイコンじゃ、サイトに納められねーんだがなぁ」
「森の中で動けなくなったら、初心者はすぐ空中に逃げるわ。空飛ぶ鳩撃ち、ブースター全開の木偶の坊なんて楽勝よ」
「地上で襲われたらどうすんだよ」
「ダミートラップ撒いときゃ敵が勝手に避けてくれるって(にっこり)」
などとふたりは話し合い、そして……。
○イコンチーム
神楽坂 紫翠(かぐらざか・しすい)と橘 瑠架(たちばな・るか)のイーグリット、
アルテッツァ・ゾディアック(あるてっつぁ・ぞでぃあっく)と六連 すばる(むづら・すばる)のコームラント、
天御柱生徒のイーグリット一機、コームラント二機。
○巨大化チーム
真矢とコールドハート、
大洞 剛太郎(おおほら・ごうたろう)と大洞 藤右衛門(おおほら・とうえもん)、
猫逢坂 於菟松(ねこおおさか・おとまつ)。
真矢は、ひとり本当にそのままのサイズで行動していた。
今は天御柱のコームラントの足下まで偵察に来ている。
「予想通り気づかれてないわね、それにしてもこの森林地帯で、よく動けるわね」
コームラントはバキバキと木々を踏み荒らしながら、敵を探しているようだが。
さすがに足下にヒトのサイズでいるとは思っていないのか素通りしていった。どうやらこの機体の主は索敵に慣れていないらしい。
そのままあさっての方向へと進んでいくようなので、
「とりあえず、今はあの機体は放置しといてよさそうね」
真矢は別の場所へと駆けていった。
世界樹のすぐそばに、アルテッツァとすばるの機体、そして天御柱のコームラントがおり。更に正面には剛太郎と藤右衛門とが身構えていた。
「スバル、準備はよろしいですか?」
「マスター、システムオールグリーン、ご命令を」
「操縦を任せます。私はちぎのたくらみで敵の防御力を下げて、攻撃に集中……おや?」
と、アルテッツァはスキルを発動させるが。
対している剛太郎は、見たところ何の反応も無い。
不審に思い、今度は味方の機体へ向けてガードラインを使ってみるがやはり効果が無い。
「おかしいですね。どうしてでしょうか」
『マニュアルに記載されていただろ? イコンに乗った状態では、攻撃や回復のスキルは使えない。特にちぎのたくらみは、外見を幼くして相手を誘惑する技。イコンに乗った状態じゃ、外にいる相手からパイロットの姿が見えないから意味を成さないんだ』
見かねたアリサが解説を加え、なるほど、と納得するアルテッツァ。
「なんだか知らないけど、いつまでもぼんやり待ってるつもりはないでありますから」
そうしてまごまごしている彼らにじれた剛太郎は、土を強く踏み、飛び掛っていく。
「あんたらに、捕まってたまるかってんだよぉ!!」
すばるはうまく機体を動かして彼から距離をとるものの。
同様に退避しようとして、わずかにバランスを崩したコームラント。
そこに剛太郎はすかさず組み付き、大外刈りでイコンの足をとり地面へと投げ倒した。
「もらった!」
流れるような動作で、剛太郎はイコンの首部分と右腕を両の脚で絞めにかかった。
いわゆる三角絞めという技である。
これを人間にかければ、痛みに耐えかねてギブアップもあり得たが。やはり相手はイコン。絞めにも構わず、必死に腕や脚を動かして抜け出そうと試みていった。
だがそのたびに機体からガギギギ、という耳障りな音が奏でられていく。
イコンのパンチもキックも剛太郎には通用せず、絞めから抜け出せない。それどころか、無理に攻撃を加えて余計に機体が悲鳴をあげていた。
両者が木々をなぎ倒し、土煙をあげて暴れまわるあおりを相当受けながらも、
真矢は被害に遭わないギリギリのラインをはかって偵察していた。
「なるほど? イコンはかなり優れた装甲を誇ってるみたいだけど、叩く、蹴る、みたいな動きをさせるのにはあんまり向いてないみたいね」
呟きながら、今度はアルテッツァ達の機体へと視線を向ける。
彼らは助けに行こうとしていたのだが、
「剛太郎〜。がんばるんじゃぞ、その間こっちはわしがなんとかしとくからのう」
邪魔するようにして藤右衛門が、隠し持っていた七首で突如斬り込んで来ており。
そのうえ天御柱のイーグリットと於菟松も戦いの最中に乱入され、行くに行けないでいた。
「あれまあ、こんなところにも敵がいるとは。せっかくだし一緒くたにやってしまおうか」
口調こそ穏やかな於菟松だが、綾刀を手に迷わず斬りかかってくる。
アルテッツァはビームサーベルでどうにかそれを受け止めるものの、その後ろから藤右衛門が迫ってくる。
(やられる……!)
機体の中で思わず目をつぶるアルテッツァ。すばるはどうにか機体を動かそうとしているが、於菟松が押さえつけるようにしているため上手く脚部分が動いてくれない。
天御柱のイーグリットも戦闘で消耗して動けないようで、コームラントも未だ剛太郎に組み付かれたまま。
万事休すかに思われたが、そこへ遠距離からのビームが藤右衛門の足へと飛来する。
「!」
藤右衛門は足を止め、どこからの攻撃かと周囲に気を配る。
「気づかれましたかね?」
「いえ。まだ」
今の攻撃を放ったのは、数十メートル南西に位置する木影に隠れる翡翠と瑠架機によるものだった。
「それにしても珍しいですね。現場に出るのは、人手不足もありますしね?」
「そうですね。操縦は……あまり得意じゃないんですけど……若干劣勢のようですし、このまま援護に回りましょうかね」
「はい、後方支援ですね? 了解です」
ふたりは前に出過ぎないよう警戒しながら、援護と撹乱に専念していき。
そのおかげか、アルテッツァ達もわずかに盛り返し攻勢に転じ始めていく。
「皆さん、やる気ありますね? そんなに目立ちたいのでしょうか?」
「どうでしょうね。それより瑠架、この近くにほかに敵はいますか?」
「左方400m地点に、潜んでいる生命反応が一……いえ、二……?」
翡翠と瑠架が話し合うその左方向から、ライフルの弾が飛んできた。
瑠架は上空へと飛んで弾を回避させ、更にビームライフルを構え、お返しの一発をお見舞いする。
ビームはライフルを撃った人物、コールドハートの頭上を過ぎて、木を何本か破壊していった。
「やっぱ普通のライフルじゃ、性能の差は明白だな。でも空に逃げたなら、格好の的だ!」
攻撃の手を緩めず、ライフルで狙い撃ちを続けていくコールドハートだが。
翡翠達のイーグリットは急速に空中で方向転換し、右へ左へ目視でやっと追えるか追えないかのスピードで回避行動を展開させる。
「!? 嘘だろ。こんなのどう考えても当てられやしないぜ。誰だよ、空中に逃げたら楽勝とか言ったの」
「なに人のせいにしてんの」
焦る彼の機体の足下、そこにいつの間にか真矢が戻ってきていた。
「イコンは狙撃より、接近して肉弾戦に持ち込んだほうがいいわ」
「はぁ? 最初は狙撃でいけとか言ったくせに」
「うるさいわね! 人がせっかく偵察してきたんだから文句言わない!」
「けど相手はずっと回避するばっかで近づいてこないぜ。多分そうしたら不利だって、わかってるんじゃないのか?」
「なんとかしなさい!」
「なるわけないだろ!」
「あ、ちょっと、前、前!」
「え?」
と、口論に気をとられていたコールドハートの眼前には、
翡翠が放ったビームの光がもろに目を刺激しながら迫ってきていた――。
『そこまで!』
それから数分が過ぎ、ついにタイムリミットとなった。
『撃破数と試合運びを鑑みて。今回はイコンチームの勝利!』
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