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レッツ罠合戦!

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レッツ罠合戦!

リアクション

 暗い洞窟を、ヘッドライトの明かりが照らします。
 一人洞窟を進む、赤いライト付きのヘルメットを被り、ジーンズに白いTシャツ姿の人影――セオボルト・フィッツジェラルド(せおぼると・ふぃっつじぇらるど)が、たむっ、とごく低い段差を飛び降りました。
 すると。
「ぐはっ……!!」
 何をどうしたのか酷く苦しそうな顔を浮かべ悶絶し、その場に倒れ込みます。
「ぐっ……い、芋ケンピを……!」
 セオボルトは苦悶の表情のまま懐をまさぐると、そこから高級芋ケンピを取り出しました。最後の力を振り絞るようにしてそれを口へ運ぶと、途端に力がみなぎって、セオボルトはその場に平然と立ち上がります。
「なかなかの罠ですな……しかし、芋ケンピさえあれば自分は何度でも甦る! 芋ケンピよ……最後までもってくれ……」
 懐に忍ばせた芋ケンピを洋服越しに握りしめるようにして祈り、セオボルトは再び歩き出します。
 道中、不自然に道をふさいでいる壁がありましたが、手早く機晶爆弾をセットして爆破します。その辺りの手際は見事なもので、先ほど膝ほどもない段差で死にかけていた人間とは思えません。
 が、道が少し下り坂になっている所で、足元に罠のスイッチを見付けると、
「こんな罠に引っかかるとでも?」
ニヤリ、と笑ってそのスイッチを飛び越えようとして――
 着地に失敗し、再び悶絶するのでした。

「別れ道ですわね」
 二手に分かれた道の前で立ち止まっているのは、プリーストのリリィ・クロウ(りりぃ・くろう)です。
 ちなみに、配布されているにも関わらず、地図は持っていません。
「左だぜ、左」
 リリィのパートナーのカセイノ・リトルグレイ(かせいの・りとるぐれい)が、手元の地図を確認して告げます。
「あら、地図を持ってきたんですの? 見せて下さいませ」
 言うなりリリィはカセイノの手から地図を取り上げます。
 そして行き先をしっかり確認します。
「左の道より、こちらの道のほうが危険そうですわね。こちらに行きましょう」
「あっ、コラ! なんでそっちに行くんだよ」
「自分自身に試練を与えるためですわ。さあ、行きますわよ」
 リリィはカセイノの制止を丸無視して、右の道を歩き始めます。
「この先何かありそうですわね……」
 女王の加護によって何かを察したリリィが、カセイノに告げます。二人は慎重に歩き始めました。
 と。
 ひゅん、と横の壁から槍が突き出てきました。
 リリィは咄嗟にかわしましたが、避けきれなかったカセイノの腕を槍が掠めます。
「ッ……!」
 思わずカセイノは顔をしかめますが、立ち止まっては危険です。二人は急ぎ、槍ゾーンを走り抜けました。
「頼むから地図を見てくれよ……!」
「いいえ、全て試練ですわ」
 言いながらリリィはカセイノにヒールの術を掛けてやります。程なく腕の傷は塞がり、二人は再び歩き始めます。

 三つの人影が、洞窟を駆け抜けていきます。
「前進あるのみっ!」
 紫月 唯斗(しづき・ゆいと)は、罠を避けるとかそんな面倒な事はナシ、とばかりに一目散に走っていきます。火を吹く像やら槍やら矢やらが飛び出してくる壁やらは、唯斗が纏う魔鎧、プラチナム・アイゼンシルト(ぷらちなむ・あいぜんしると)が防いでいるとはいえ、些か無謀な突撃です。
 後からパートナーのエクス・シュペルティア(えくす・しゅぺるてぃあ)紫月 睡蓮(しづき・すいれん)が呆れ気味に着いてきます。
 ばたむ、と先行する唯斗がある部屋のドアを開けました。
 そう広さのない空間です。部屋の中には特に何もありません。吊り天井の仕掛けもなさそうです……が。
「……何だ、あれは?」
 奥へと続く扉の前には、なにやら書物が積み上がっています。
「何ですか、あれ?」
 おいついた睡蓮も、部屋の奥に積み上がるそれに目を留めて首を傾げます。
「罠かもしれないが……いずれにせよどかさないと先に進めないな」
 言いながら唯斗は積み上がった書物……週刊少年シャンバラのもとへ歩み寄ります。
「こ……これはっ!!」
 ようやくその書物の正体に気付いた唯斗の目が一瞬少年の色に輝きます。
 積み上げられた雑誌の表紙は、例え漫画に興味がない人間でも誰しもが知っている名作ばかりです。
「とにかく片づけなくてはな……」
 誘惑を振り払うように言いながら、唯斗は一冊ずつ丁寧に積み上げていきます。
「一気になぎ払って仕舞えば良いのではないか?」
 エクスがじれったそうに言いますが、そうは無碍に出来ません。せっせと片づける唯斗にならい、エクスと睡蓮もまた片づけに参加し始めます。
 が。
「唯斗兄さん、何してるんですか!」
 気が付いたら、唯斗はドアの前に座りこんで週刊少年シャンバラを読みふけっていました。
「あ、あと一冊、あと一冊だけ……!」
「ダメじゃ、もうすっかり片づいてしまったぞ」
 エクスと睡蓮に左右をがっちり掴んで引きずられるようにして、唯斗は次の部屋へと連れて行かれます。
 そこには……
「うわぁ……!!」
「これは……」
 ふわふわもこもこのわたげうさぎが、ちょこんと座ってこちらを見ています。
 睡蓮とエクスはふらふらとわたげうさぎの元へと吸い寄せられていきます。
「ちょっと皆さん! 先を急がなくて良いのですか? ……というか私ももふもふしたいんですけど……」
 プラチナムが叱咤の声を上げますが、もふもふしている二人の姿を見ているうちに羨ましくなってきた様です。
 こうして、一行はすっかりわたげうさぎの虜となってしまうのでした。

――ここに罠があります。
「って言われてもね!」
 セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)は、そこら中に貼られた貼り紙など気に留めることもなく、奥へ奥へと突っ走って行きます。
「ちょっとセレンフィリティ!」
 パートナーのセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)が慌ててセレンフィリティを追いかけますが、セレンフィリティは無防備極まりないビキニに教導団制服の上着を引っかけただけの姿で、次々発動する罠をひょいひょいと避けて行きます。
「罠を避けるのに必要なのは、タイミングとリズム感、ってね! おっと……!」
 セレンフィリティは足元の妙な血だまりをぴょんと飛び越えます。
 いい加減にしなさい、とセレアナも続きます。同じように血だまりを飛び越え、怪しいロープも飛び越え――
 その一歩先に設置されていた釣り糸に、足が掛かりました。
 びぃん、と嫌な予感をさせる音と共に、頭上から――
「ひぃ…………ッ!」
 ヘビだのカエルだのあまり口に出したくないイニシャルGだののおでましです。
「もう……」
 ゲテモノ達を慌てて振り払ったセレアナのこめかみに、おっと青筋。
「やってられないわ!」
 そう叫ぶと、セレアナは一目散に奥へ奥へと走り抜けて行きます。途中でセレンフィリティを追い抜きましたが気にもしません。
「あ、ちょっとォ?」
 突然の出来事に、セレンフィリティは慌ててセレアナを追いかけていくのでした。

「オレの邪魔はさせねぇぜ!」
 国頭 武尊(くにがみ・たける)が、後続に向かって煙幕ファンデーションを投げつけました。
 濛々たる煙が上がり、ついでに混ぜられたしびれ粉の効果で後に続く人々は身動きが取れなくなります。
 それを好機と、武尊は奥へ向かってダッシュします。特に策があるわけではありません、自らの超人的肉体、後は女王の加護を信じ、トレジャーセンスを頼りにただただ駆け抜けていきます。
 すると。
 ひとつの小部屋の真ん中に、いかにもそれらしい宝箱を見付けました。
 まだ誰も見付けていないようです。武尊はニヤリと笑うと、慎重に宝箱を開けました。
 その中には――

――数々の罠を潜り抜け、ここまで辿り着いた。その経験は、貴方に自信を与えるでしょう。その経験と自信こそが宝です――

 と、古めかしい字体で書かれた羊皮紙が一枚ぺらん、と入っていました。
「おお……そうか、これこそが宝か……!」
 武尊は羊皮紙を握りしめてふるふると喜びに震え……
「ンな訳あるかァアア!」
 訂正、怒りに震え、手の中の羊皮紙を引きちぎりました。そして、「STAFF ONLY」と書かれたドアを開けて、さらに奥へと向かうのでした。