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リアクション
決着、エリザベートvsエギル 3
「よし、このまま戦線維持だ! ザカコ! エギルの野郎を頼む!」
「わかった! やってみる!」
ヘルの言葉にザカコ・グーメル(ざかこ・ぐーめる)が返して、真剣な面持ちでエギルを見据える。
っと、星印の剣を構えたザカコがエギルへと歩を進める。敵の数が少なくなっている今こそ攻撃のチャンスと見たのだ。
だがエギルもそれに即応。更にゴーレムを召喚し、自分を攻撃させまいとする。
「これならどうです!」
現れたゴーレム付近の重力を操り、その体をひしゃげさせていくと同時に、エギルへの攻撃も試みるザカコ。
「受けてなるものかっ!」
重力操作を肌で感じでその場を離れて、グラビティコントロールの攻撃を回避するエギル。
「クレア! ザカコさんに続くんだ!」
「わかったわ!」
涼介・フォレスト(りょうすけ・ふぉれすと)の声を聞くや否や、クレア・ワイズマン(くれあ・わいずまん)がエギルへと追いすがる。
「邪悪なる妄執に駆られし者よ、ここに消え去れ!」
ブライトブレードドラゴンで空中を疾走し、星印の槍をエギルへと連続して突き放つ。
その攻撃は致命傷にはならないものの、次々とエギルの体へ傷をつけていく。
「くそ! 次から次へとさかしいやつ等だ!」
「それはおまえのことだろうな。エギル」
「背後かっ!」
クレアの対応に追われていたエギルの背後にはニコラ・フラメル(にこら・ふらめる)が迫っていた。その手には、クレアと同じく星印の槍が握り締められている。
「こうして戦うのも何度目か。妙な縁すら感じるな、はっはっは……だがそれもここで終いとしよう」
ニコラが自身にゴットスピードをかけて、背後からエギルへと向う。その奇妙な縁を断つ為、この哀れな男を解き放つため。
「くそ、ゴーレム!」
未だクレアの猛攻を凌ぐのに手一杯のエギルが背後にゴーレムを召喚し、ニコラの攻撃を防ごうとする。
「そう何度も同じ手が通用すると思わないで!」
五月葉 終夏(さつきば・おりが)がそう叫びながら、グラウンドストライクを発動し、ゴーレムの下から鋭利に尖った岩を呼び出して、ゴーレムにひびをいれる。
「ゴーレムごと、貫かせてもらう!」
もろくなったゴーレムへ鋭い一突きを見舞うと、ゴーレムの体を貫通し、エギルの右わき腹をとらえる。
「ぐおっ!?」
「完璧にはとらえられなかったか」
「そのまま心の臓を食い破るですぅ!!」
口惜しそうな顔をするニコラの後ろから、エリザベートが恐ろしげな事を言っている。
「皆! エギルとの戦闘エリアに救済の聖域を発動させたわ! 魔方陣の中で思う存分戦って!」
終夏の言う通り、地面には魔方陣が発生し、その中にいる者は傷は癒され、体中から力をみなぎらせていた。
「くそがっ!」
エギルがクレアとニコラを振り切り、態勢を整えようとする。だが、そんな猶予すら与えられない。
「ここまでされては、負けるほうが難しいと言うもの。お覚悟を」
風森 望(かぜもり・のぞみ)がドラグーン・マスケットの技術を応用発展させた龍銃ヴィシャスを構え、その照準をエギルに合わせる。
「やらせるかっ!」
龍銃ヴィシャスの銃口が自分に狙いをつけている事に気づいたエギルは、複数の炎の塊を望へと放つ。
だが、粗雑な攻撃は望をかすめることすらなかった。
「あらあら、これでは舞を舞っていてもよけられそうですわね? やってみましょうか?」
そう言いながらエギルが見ている前で実際に待ってみせる望。それを見たエギルはギリギリと歯を噛み合わせる。
「と、ここらで一発、鉛弾が怖い、と」
その舞終わりにエギルへ銃弾を撃ちまくり、弾幕をはる望。突然の行動にエギルは驚くもどうにかバリアを展開し、全ての弾を無力化する。
「それはただの弾幕援護、次はわたくし、ノート・シュヴェルトライテ(のーと・しゅう゛るとらいて)の攻撃ですわ!」
望の弾幕支援が続いてる隙にバーストダッシュで間合いを一気に詰め、ノートはエギルのすぐ近くまで接敵。
セラフィックフォースでを発動し、イーダフェルトのエネルギーを二つ愛剣に注ぎ込み、全力でエギルに斬りかかるノート。
「この三十秒で決めますわよ!」
「この、馬鹿力め……!」
「誰がヴァカキリーですって!? このすっとこどっこい!」
侮辱された?ことにより更に攻撃の苛烈さは増し、その勢いは徐々にエギルを空中へと誘うほど。
「これで、決めますっ!」
「っぐぁう……!?」
宵一のヴァンダリズムによる常軌を逸した攻撃により、既にかなりの疲労が見えていたエギルに、ノートが持つアイオーンが深々と刺さる。
「お、の、れ……だが、まだ……」
「いいえ、終わりですわ。御覧なさいな」
そう言ってノートは離脱。不振に思うエギル、その直後複数の並々ならぬ気を感じ取る。
「しまっ――――」
だが時既に遅し。
「さっきのお返しもまとめて!」
のぞみの倍返しをこめたマルチ・エアレイドが。
「ド本命は私でした」
望の地獄すら生ぬるく感じるヘルスパークが。
「終わらせます!」
ザカコの星辰エネルギを込めた星印の剣の迷いのない一撃が。
「私は死者の妄執よりも生者の未来のために戦う!」
クレアの天を穿つかと思えるほどの昇龍突が。
「あっがああ!?」
四人の攻撃が一つとなり、エギルの心身に致命的なダメージを与える。
「皆、下がってくれ!」
更に、涼介が星辰の籠手からエネルギーを受け、星宿りの杖と流し込み、間髪入れずにエギルへと数個の隕石が降り注がせる。
「ああ、ああああ、ああああぐあああああああああああ!!!??」
エギルが苦痛のあまり叫び声、いや、獣のような悲鳴を上げる。
「来ました来ました来ましたですぅ! 今攻撃した五人から伝わる力が、私の中で奔流して溢れでそうですぅ!」
五人のマレフィキウムによる力の増幅に打ち震えるエリザベート。
それだけに止まらず、エリザベートは自身の魔力、そしてロゴスの力を集約させ、己が全霊を具現化させる。
それは手の平に収まるほどの小さな玉で、虹色よりも更に多くの色を含ませた光を放っていた。
「……は、っははっはあ!! な、がまの、力を……借りてぇ!! その程度が、限界ガぁあ!! エリザベート・ワルプルギス!」
エギルの煽りに、しかしてエリザベートは微塵も動じず、こう切り返す。
「……この力、その身に刻みなさい。同時に私がワルプルギスの名を冠していること、再認なさい」
そう言うと、エリザベートから小さな光が放たれ、エギルへと向い、静かに命中する。瞬間。
――――ッッッ!!
凄まじい衝撃、そして魔力が辺り一帯に迸る。それは契約者たちですらも吹き飛ばさんばかりの無差別な衝撃。
「――――――あ?」
その爆心地にいたエギルは、自分でも驚くほどあっけない声をあげ、立ち尽くしていた。
目の前に、自身の体にあったはずのロゴスが浮いているのを、虚空な目でしばし見つめた後にドサッと音を立てて床に倒れ伏した。
「や、やってやったですぅ……!」
膨大な魔力を放出したせいか、先ほどまで元気だったエリザベートもかなり疲労していた。
ふらふらとエギルに近寄り、空中に浮遊している光、ロゴスの眼前までやってくる。
「さあ、私の中へ来る、ですぅ……!」
エリザベートが小さな右手を伸ばしてロゴスに触れたその時、ロゴスはエリザベートの手から体内に入り込む。
「……復活ですぅ!」
ロゴスを取り込み魔力補充にもなったのか、エリザベートの顔色もよくなり、最後にはいつも通りエリザベートへと復活を果たす。
(……何か、違和感があったですぅ。……まだロゴスが体に慣れていないせいですかぁ?)
ロゴスを取り込んだ瞬間に感じた刹那的に違和感を感じたエリザベート。
しかし、このロゴスに慣れていない、あるいはロゴスとロゴスが干渉しあっている、などと考え深く考察することをやめた。
その後、ネフェルティティたちを追うか迷ったがこれ以上の増員は必要ないと判断し、契約者たちとともに先に万魔殿から脱出した。