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【十二の星の華】黒の月姫(第2回/全3回)

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【十二の星の華】黒の月姫(第2回/全3回)
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 六本木 優希は、アレクセイに「おまえの気持ちを、あのじーさんに思いっきりぶつけてこい!」と励まされ、爺やの前に立つ。
 優希は初手はディフェンスシフトで守りを固め、アレクセイから聞いていた赫夜の戦い方を参考に、守りを固めつつ、木刀で次々と爺やに打ってかかる。
「太刀筋は良いな、しかし、某の敵ではござらん」
 と、爺やは優希が怪我をしないようにと、優希の手から木刀を飛ばしてしまう。
「一本ありましたわね」
 と婆やが笑うと、ミーナ・コーミア(みーな・こーみあ)が葉月の持ってきた桜餅を食べながら見物している。
「あ、全部食べちゃったら、葉月に怒られちゃうや」
「ああ、みなさん、お疲れになったら冷たいお茶に、温かいお茶、お手ふきを用意しておりますから、ご自由にお使い下さいね」
 婆やが声をかけ、優希の手に冷たいおしぼりを乗せてあげる。
「あのくそじじ…いえいえ、吉備津はあれでも藤野家最強をうたわれた剣士だったのですよ…みなさま、お若いけれど、吉備津に敵いますかどうか…おほほほ」
「え!?」
 優希もアレクセイもその言葉に驚いてしまう。
「一手、ご教授お願いします」
 菅野 葉月は他の面々と、少し事情が違っていた。赫夜の腕はこの吉備津の仕込みと睨み、一太刀交えたいとやってきたのだ。勿論、赫夜たちのことは心配していたが、いきなり聞くのもぶしつけだと思ったのだ。
 葉月が打ち込んでいくと、爺やがすっと体をかわし、葉月ののど元に木刀をギリギリのところで寸止めする。
「うむ、なかなかの筋の良さじゃな、菅野 葉月殿」
「…あ、ありがとうございます…!」
 にこやかにはしているものの、爺やから発される殺気に葉月は圧倒された。


 ウィング・ヴォルフリートは、個人宅の道場ということもあり、魔法を自分に禁じた。
(壊してしまうわけにはいきませんからね…)
 まず、御影流の流双剣を使い、間合いを見極め、勝負は一瞬。踏み込みで一気に距離を詰め、木刀で相手の剣に撃ちつけ、破壊しようとする。
「御影流 流双剣奥儀・・・『諸行無常』!!」
「ぬう!」
 とは言え、爺やも最強の名を誇った剣士。木刀をもう一本取ると、二刀流でがっちり四つに組み合う。
「…そこまでだ! このままでは、道場が壊れてしまう」
 ミュリエルと道場に帰ってきた赫夜が止める。
「ウィング殿と申されたかな、さすがの腕前じゃな」
 爺やもぜいぜいと息が上がっているが、自然とすうっと呼吸が戻る。さすがに老人とは言え、剣士であった。
「こちらこそ。素晴らしい体験をさせて頂きました…」

「レイナ・ライトフィードと申します。よろしくお願いします」
 木剣などの稽古用の剣二刀流、今目指そうとしている戦い方を組み立てながらレイナは爺やにかかっていく。
「ふむ、女剣士殿か、おぬしは非常に芯の通ったおなごのようじゃな。太刀筋が真っ直ぐじゃ。気に入った!」
「お褒めにあずかり光栄!」
 かっと木刀を合わせると、ここが引き時と二人は言葉もなく、剣を下ろし、互いに一礼した。


 次の挑戦者は騎沙良 詩穂。
「詩穂も本気で挑むから爺や様も手加減無用ですよ! それに聞きたいことが沢山あります!」
「よろしい!」
 二人は木刀を交える。
(凄い剣の力量…! 赫夜お嬢様と同じくらいなのかしら…?)
 爺やが多少、手を抜いたのか、二人の仕合いは、互角で終わった。

 リカイン・フェルマータは手甲で、爺やに挑む。
「これには鉄の爪が付いていますが、大丈夫ですか」
「おお、なんと美しいおぬしのような娘が、恐ろしいものを。だが、よろしい、かかってきなさい」
 リカインが手甲で爺や目掛けて突進すると、手甲をあっさりと叩き落としてしまう。
「いたっ」
「婆や殿、このお嬢さんに手当てを」
「あ、私がヒールを致しますわ」
 優希が自分のスキルを使ってリカインの手をヒールしてあげた。

「おいおい、あんな『ばか女』でも一応、おれのパートナーなんだぜ」
 アストライト・グロリアフルが立ちはだかる。
「『ばか女』ってなによ!」
 リカインがキレかかるが、お構いなしのアストライト。
「執事のジーサン、こっちに来ているくらいなんだから剣の花嫁や光条兵器のことは知ってるよな? その上で俺は光条兵器でジーサンに勝負を挑むが構わねえか? …一応聞きたいことはあるけどさ、多分決着がついた時には答えが出てるだろうから気にしなくていいぜ」
「宜しい、光条兵器でかかっていらっしゃるがいい…物理的属性のない光条兵器と木刀、どうなるか」
(都合ジーサンの攻撃は止められないから、ま、相打ち狙いってやつか。当たるかどうかが分かりゃいいんだから振り抜く気はねぇけどな…それに爺さんの腕は立つ。ネラの影武者をやっている可能性はたかい。それをたしかめてえ…)
 アストライトはそう考えると、ブレードトンファーを出し、爺やに向かっていく。
 爺やは上手くブレードトンファーを避けると、アストライトの脇にびしりと、木刀を入れた。
「ぐぅっ…」
「急所はあてておらぬ。それにそのような光条兵器、某も恐ろしゅうてたまらんわ」
(このジーサン、光条兵器とやりあうのを避けやがった…やっぱ、協力者の可能性はすてきれねえや)
 アストライトはそう、ピンと来ていた。