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【学校紹介】鏖殺の空母

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【学校紹介】鏖殺の空母
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5:イコンデッキ


 メニエスはデッキに侵入しようとしてくる潜入部隊を<エンドレス・ナイトメア>と<その身を蝕む妄執>で足止めする。
 <エンドレス・ナイトメア>で生み出された闇黒は潜入部隊に頭痛と吐き気、不安と恐怖を与え、混乱が広がる。
 そして<その身を蝕む妄執>は名状しがたい幻覚を生み出し恐怖を与える。
「クックック……恐怖なさい」
 メニエスが邪悪に笑う。
「うわああああああああああああああああ」
「ママ! ママ!」
「助けてくれええええええええええ!」
 潜入部隊はこうして足止めをされる。
 ミストラルはメニエスの攻撃に合わせて前に出て、両手につけたカタールで潜入部隊を攻撃する。切り裂かれて崩れ落ちる潜入部隊。
 トライブは隔壁をおろして<氷術>で凍らせて時間を稼ぐと、メニエスとミストラルの首根っこを引っ張ってシュメッターリングに放りこむ。
「何をするの、あなた」
 メニエスは突然のことに抗議する。
「負けは確定だ。逃げたほうがいい」
 トライブがそう答えると、メニエスは考えるような表情をする。
「たしかに、元々見に来るだけのつもりだったし、守る義理もないのよね」
 メニエスはそう言うがミストラルは
「だが、我らがイコンを操縦できるのですか?」
 と言う。
「別に操縦する必要はない。イコンで艦の外に出ればいいだけだ。あとは空飛ぶ箒があるし俺には小型飛空艇がある」
「なるほど。だが、どこを押せばエレベーターが起動するのです?」
「マニュアルがあるだろ、一応」
 探してみれば操作マニュアルが確かにあった。
 メニエスはマニュアルに従い、発進のコードを送るとエレベーターが起動してイコンが上に運ばれ始めた。
 やがて甲板に出るとカタパルトで発射されそうになる。
 そこに垂の攻撃と朔の攻撃が推進装置に命中し爆発を起こす。
その瞬間にトライブは脱出装置を作動させる。
「さて、今のうちだ」
 トライブは小型飛空艇でイコンから脱出し、メニエスとミストラルも箒で脱出する。そして空のシュメッターリングは発射されてそのまま水没。戦闘後に天御柱のイコンによって鹵獲されることになる。

 ベリーショートな焦げ茶色の髪と青色の瞳を持つ知的な青年アルツール・ライヘンベルガー(あるつーる・らいへんべるがー)は<ファイアストーム>で隔壁の氷を溶かすと近くにあった装置を操作して隔壁を開ける。
 そして乗り込んだアルツールが見たのは発進するイコンの姿だった。
「逃げられたか……まあいい。今はエレベーターの工作だろう」
 アルツールはそう言うと他の生徒にエレベーターへの工作のチャンスだといった。
「よしきた。御神楽校長に調達してもらったプラスチック爆弾が役に立つ時がきたな」
 実年齢は21歳なのに外見年齢は40歳くらいに見えるふけ顔の松平 岩造(まつだいら・がんぞう)はそう言うとエレベーターにプラスチック爆弾を設置する。
「ファルコン、雑魚は頼む」
「はい」
 頭髪のない男性型機晶姫ファルコン・ナイト(ふぁるこん・ないと)は<妖刀村雨丸>を片手に<加速ブースター>に点火しながら向かってくる敵兵をスピード戦に持ち込んで切り倒していく。
「どっけええええええええ!」
 狭い通路ではファルコンのスピードに追いつくことは不可能であった。ファルコンは超速で敵兵を切り刻んで回る。通路は血の海になった。
 鮪はイコンの足同士をワイヤーロープで結んで固定する。イコンの転倒を狙っての行動である。
「よっしゃ。これでイコンの出撃は遅れるな」
 鮪はそう言うと敵の迎撃に向かった。
 アルツールは<武者人形>と<使い魔:紙ドラゴン>を実体化させると、パートナーのシグルズ・ヴォルスング(しぐるず・う゛ぉるすんぐ)ソロモン著 『レメゲトン』(そろもんちょ・れめげとん)のお供につける。
「我が名はヴォルスングのシグルズ。ジークフリートと名乗ったこともある。命が惜しくないものからかかってこい!」
 シグルズことジークフリートは<武者人形>を前衛として<ライトブレード>を振り回しアルツールの呪文完成までの時間を稼ぐ。
「アルツール、急げ。いくら狭い通路とは言え支えるにも限りがあるぞ!」
 北欧神話に歌われる英雄ジークフリートはそう叫ぶとあるツールを急かした。
「しぎゃああああああああああああああ!」
 紙ドラゴンはブレスでジークフリートの支援を行う。
 金髪を後ろで束ね、金色の目をした端正な顔立ちの『レメゲトン』も小人の小鞄の小人を実体化させ敵の妨害を行う。
「くらえ<光術>!」
 『レメゲトン』はさらに光術を目くらましとして使う。
 ジリジリと時間は過ぎる。その間にも敵兵は迫り来るがジークフリートと『レメゲトン』は必死に敵を支える。
 やがてアルツールの呪文が完成する。
「完成したか! 『レメゲトン』、下がれ! ファルコン・ナイト殿も引かれよ」
 ジークフリートがそう言って『レメゲトン』の首根っこを引っ張る。
 アルツールが<ギャザリングヘクス>と<禁じられた言葉>で強化した<ファイアストーム>を放つ。
 空母の狭い通路に密集した敵兵を地獄の業火が焼く。術を放った直後にジークフリートが隔壁を封鎖する。
 密閉された空間での炎の嵐は正しく地獄を焼く炎。消し炭も残らないほどに焼き尽くされる鏖殺寺院の兵士たち。
「自分で生み出した光景ながらい恐ろしい……」
 アルツールはそう言ってこめかみを押さえる。
「アルツール、続きが来るぞ、追撃を!」
 ジークフリートがそう叫ぶとアルツールは再び呪文を唱え始める。
「私に任せな! <サンダーブラスト>!!」
 乳白金の髪をポニーテールでまとめた赤い色の瞳を持つ美少女ミューレリア・ラングウェイ(みゅーれりあ・らんぐうぇい)が<サンダーブラスト>を唱え、激しい雷撃の嵐が敵兵士を貫く。
「助かった」
 ジークフリートがそう言うとミューレリアは「気にすんな」と答えた。
「それよりもイコンの中のデータを奪っちまおう」
 ミューレリアがそう言うとジークフリートは「陽太がやっているはずだが……」と言った。


 その間――
 黒髪を坊ちゃん刈りにしたどこか頼りなさそうな少年影野 陽太(かげの・ようた)は、イコンのコクピットブロックに乗り込み<ナゾ究明>、<R&D>、<先端テクノロジー>、<ユビキタス>をフル活用してデータを吸出し、<銃型HC>や<デジカメ>に記録していく。
「これでよしっと……あとはちょっといたずらしちゃおうかな」
 そう言って陽太はコンピュータをいじるとイコンの推力を下げる。これで万全な状態では戦えないはずだ。
「妙子さん、そちらはどうですか?」
「OKや。よっしゃ、これでええやろ」
 焦げ茶色の髪を三つ編みおさげにした関西弁少女穂波 妙子(ほなみ・たえこ)もイコンの配線をいじって出力が出ないように工作する。
 正悟もイコンの頭部に爆薬を仕掛け、センサー類を破壊するように工作する。
「ほい、これでよしっと」
「おい、早くしろ。こっちもそう長くは持ちこたえていらんねーぞ」
 黒髪をショートカットにし、精悍そうな外面を持つ緋山 政敏(ひやま・まさとし)が陽太に向かってそう言う。
「もう少しです。待ってください」
 洋太の答えを背中に聞きながら、政敏は<弾幕援護>で弾幕を張り、デッキへの敵兵の侵入を止めているが何人かは抜かれてくる。
「よーく狙って……」
 そんな敵は<スナイプ>で狙撃するが状況は悪化する一方だ。
「政敏、そんな事いっててあんたが抜けた敵にやられたらどうしょうもないでしょう」
 金髪をポニーテールにした巨乳のヴァルキリーカチェア・ニムロッド(かちぇあ・にむろっど)がパートナーにそう叫びながら<雷術>で敵を感電させる。
「すまん。サポートを頼む」
「了解! <轟雷閃>」
 カチュアは雷撃を放つ。激しい雷撃は敵兵の行動中枢を止め、敵は意識を失った。
 二人がそんなやりとりをして連携プレイで敵を抑えていく。
 基本的に政敏が弾幕を張り、カチュアが抜けてきた敵を倒す方針でイコンデッキの入口付近で戦う。
 パワードスーツを着用したエヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)も陽太と一緒に<銃型HC>にデータを吸収させている。
 だが敵の攻勢が激しくなってきたのを聞いてイコンを降りると、<ライトニングウエポン>を使った<戦闘用ドリル>で敵を貫いていく。
「ドリルはロマ〜ン! 野望を阻む者は、すべからく滅殺すべし……」
(なんか魔剣士の影響が残ってるな……)
 そんな事を考えながらもエヴァルトは敵を次々と打ち砕いていく。
 セミロングの赤髪を持つ小柄な機晶姫ロートラウト・エッカート(ろーとらうと・えっかーと)は<殺気看破>と<後の先>での状況把握を基軸にしてスキルと装備をフル活用して迫り来る敵を打ち倒していく。
 だがふたりとも時々敵の反撃を受けてダメージを受ける。
「いったーい」
「ああ、また修理費が!」
 ロートラウトの破損にエヴァルトが悲鳴をあげる。
 彼女の修理費用は彼の家計を圧迫していた。
「さすがにこれだけの大人数は厳しいな」
「そういう時こそ陣形を崩すな。狭い通路を利用しろ。あっちのポイントが薄い。フォローに回ってくれ」
 正悟は陣形を意識して迎撃戦の指揮をとっていた。おかげでだんだん侵入してくる敵兵は減ってくる。そして――
「アルツールの呪文が行くぞ!」
 ジークフリートの警告で皆後ろに下がりアルツールは再び<ギャザリングヘクス>と<禁じられた言葉>で強化した<ファイアストーム>を放つ。
 直後にジークフリートが隔壁を封鎖。再び地獄の炎に敵は包まれる。
「今のうちに人用のエレベーターで脱出しよう」
 ロートラウトがそう提案する。
「いいね、乗った。<氷術>!」
 カチェアが隔壁を氷術で凍らせると、イコンデッキに来ていたメンバーは一旦人用のエレベータに乗り込み甲板へと退避する。
 やがて隔壁が開けられ敵兵がなだれ込んできた。パイロットスーツを着た者たちもいるようだ。
 陽太は甲板に出ると発煙筒で煙を出し狼煙の代わりにイコン部隊に合図をする。