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リアクション
4.
勢いづいた西チームと、逆転を狙う東チーム。せっかくエリザベート校長が応援に来て下さっているのだから、良いところを見せなければならない。
その為か、コート内には強気な選手たちが入っていた。
「みんな、どんどん攻めていくよ!」
中でも超強気なのが緋王輝夜(ひおう・かぐや)だ。彼女はディフェンスに回るつもりなどない様子で、ひたすらシュートを放つことだけを考えていた。
「ちびっこはあたし含めて三人、一人ずつ入れれば余裕で逆転できるわ」
と、ちぎのたくらみで幼児化した湯島茜(ゆしま・あかね)が言う。
しかし試合が始まって間もなく、そのたくらみに大きな壁が現れることとなった。
「もらうぜ!」
と、天海北斗(あまみ・ほくと)が茜の手からボールを奪う。取り返そうとするが身長差で負けてしまっている。
「そうはさせませんっ」
最も背の高いローレンス・ハワード(ろーれんす・はわーど)が妨害するも、天海護(あまみ・まもる)へのパスを許してしまう。
「え、えっと……」
あまり運動をしたことがないため、どうしたらいいか分からない。とりあえず護はドリブルをしてみた。
「甘い!」
と、そこへカレン・クレスティア(かれん・くれすてぃあ)が手を出し、呆気なく奪われてしまうボール。さすがの護も悔しくなって走り出す。
「ジュレ!」
護に邪魔される前にジュレール・リーヴェンディ(じゅれーる・りーべんでぃ)にパスを回すカレン。
「あっ」
すぐにボールを追いかけようとして、護は身体に異変を感じた。全身から力が抜けるように倒れ込む。
その場にいた誰もが驚いていた。試合が一時中断され、場内がざわめく。
チームメイトのクレア・シュミット(くれあ・しゅみっと)は護へ駆け寄ると、声をかけた。
「どうした? 胸が痛むのか?」
「兄貴は、昔から心臓が弱いんだ。ごめん、兄貴……!」
と、駆け寄ってくる北斗。最初に教えてもらっていれば無理はさせなかったのに、とクレアは悔しく思う。心臓に持病があるなら、すぐ病院へ連れて行くべきだろう。
間もなく護は運ばれて行ったが、責任を感じた北斗も付いて行った。
『サテ、気を取り直していきマショー! 現在、西チーム57点、東チーム49点ネ。どちらが勝つか、まだ分からないヨー?』
再開された試合は、ちびっこの活躍により盛り上がる。
「あたしを止められるもんなら止めてみろー!」
ミラージュで生みだした分身で敵を惑わせる輝夜。その間にドリブルでゴールまで突っ走ると、分身を解くのとほぼ同時に跳び上がった。
「レビテート!」
ふわりとその場に舞いあがり、低い身長をカバーする。ブロックする隙はなく、がっとダンクシュートを決める輝夜。――東:57点。
『勢いが良いネ! これはもしかすると、西チームが負けちゃうカモ? ってゆーかまた同点ネ!』
「見たか、あたしの実力!」
「うむ、我も負けてはいられぬのだ」
チームメイトの活躍に気合を入れ直すジュレール。
「頑張れ、ローレンス!」
と、クライス・クリンプト(くらいす・くりんぷと)が応援する。
少し離れた席ではエッツェル・アザトース(えっつぇる・あざとーす)も東チームを応援していたが、ふと周囲をうろついている女性がいることに気が付く。パートナーの活躍は見れたし、ちょっと飽きてきたエッツェルは立ち上がる。
「どうなさいました?」
声をかけられたシルフィスティ・ロスヴァイセ(しるふぃすてぃ・ろすう゛ぁいせ)はびくっとした。
「え、いや、何でもないです」
エッツェルは首を傾げたが離れて行きそうにない。
シルフィスティは怪しい人がいないか密かに調査していたのだが、ちょっと想定外の展開になりつつある。困った。
別の場所では空京稲荷狐樹廊(くうきょういなり・こじゅろう)が売り子をやりつつ目を光らせ、また別の席ではリカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)がアレックス・キャッツアイ(あれっくす・きゃっつあい)を連れて警戒していた。
アルメリア・アーミテージ(あるめりあ・あーみてーじ)はボールを持ったジュレールの前に立ちはだかる。
「先には行かせないわよ」
ちびっこのジュレールはコートの端へ追いやられていた。交わそうと思えばできそうだが、今の状態は完全に不利だ。シュートを狙うにしてもアルメリアにカットされるのがオチだろう。
「任せるっ」
と、隙をついてボールをローレンスへパスする。
「もらった……!」
両手を伸ばしてパスカットしたのは風斗・サードニクス(かざと・さーどにくす)。すぐに精神感応で繋がっている綱斬巡(つなきり・めぐる)へパスを回そうとするが、その姿を探している内に邪魔が入ってしまう。
「失礼します」
と、結局ローレンスにボールを奪われ、はっとする風斗。
「何やってるんだよ、風斗!」
耳を伝って聞こえる巡の声と、脳内に響く声の二重で怒られてしまった。次こそは巡にパスを、と心に誓う。
その間にもボールはカレンの手へ回っていた。
「必殺! スピンパス!」
と、茜へ向かって強烈な回転のかかったボールを投げる。ボールはバウンドすると、アルメリアから解放されたジュレールの方へ角度を変えて行く!
「今度こそっ」
ボールを取ったジュレールは、すぐに誰ともなくボールを床にたたきつけた。
「必殺スピンシュート」
カレンの放ったそれと同じように跳ねたボールが方向を変える。跳び上がったジュレールはそれを空中でキャッチすると、バスケットに向かって叩きこんだ。
『一人アリウープネー。東が優勢になってきたヨ』
――東:65点。
「国は二つに引き裂かれ、八月に偉大なる首領が現れる。天に星が輝き、大いなる湖に落ちる。それは、小さき者たちの手によって為されるだろう」
「何、それ?」
目を丸くするカレンへ茜は言う。
「予言よ。東の方が小さい子は多いから、きっとそれを言ってるんだわ」
その予言はミシェル・ノストラダムス(みしぇる・のすとらだむす)のものだった。当たるかどうかはまだ分からないが、確かにちびっこの数は東の方が多い。
ここからはさらに点を引き離し、勝利への道を確実なものにしたいところだ。
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