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【ろくりんピック】シャンバラ版バスケットボール

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【ろくりんピック】シャンバラ版バスケットボール

リアクション

 最初からずっとコート内にいた麗夢は、相手チームに自分よりも小さいのによく動きまわっている人がいることに気が付いた。巡である。
 チャンスさえあればあっという間にシュートを決めてしまいそうな巡。先ほどからオリヴィアと円のやりとりが目立つ中、麗夢は巡をマークすることに決めた。そろそろ疲れてきたが、やれることはやりたい。
 一方、ひたすらボールを落とし続けるミネルバに疲れが見え始めてきた。クレーメック・ジーベック(くれーめっく・じーべっく)はそのことに気付くと、彼女を重点的に追い詰め始める。
「こっちだ!」
 と、呼びかけて回してもらったパスを別の味方へパスするクレーメック。そこへ入って来るミネルバ。
「ブロック!」
 落とされるボール、ボール、ボール。その度に動きが鈍って来るミネルバ。
 クレーメックはほくそ笑んだ。――そうだ、それでいい。一番背の高い選手が消えてくれれば、試合はまた西のものになるだろう。
 西チームにしつこい選手がいると気づいていた。円は受け取ったボールをすぐにゴールへ向ける。
「ブザービーターやりたかったけど、悠長なこと言ってらんないよね」
 と、遠くに待つバスケットへ狙いを定めた。スナイプやシャープシューター、エイミングなどを複合させた必殺技で、円は確実にシュートを狙う。
 ゴール前で待機していたクリストバルヴァルナ(くりすとばる・う゛ぁるな)がジャンプして守ろうとしたが、ボールはそれよりも俊敏な動きでバスケットへ吸い込まれていく。
 ボールの落ちる音がして、わっと歓声が沸いた。――東:26点。
『東チームがやり返したネ! でもまた一点差ダネ』
「やったぁ! これでボクの役は終わりね。あー、疲れた」
 と、円が退場するのを横目に、オリヴィアはひたすらボールを打ち落とし続けたせいで疲れきっているミネルバに気付く。
 自分も一回くらいシュートを入れたかったが、誰かが止めないとコートから出そうにないミネルバを連れて、オリヴィアも外へ出た。

 代わりに入ったのは応援団長を兼任するクロセル・ラインツァート(くろせる・らいんつぁーと)だ。その後ろにはマナ・ウィンスレット(まな・うぃんすれっと)シャーミアン・ロウ(しゃーみあん・ろう)もいる。
「コート内にいるちびっこは東が3人、得点も東が一点リードしている! たかが一点、されど一点。この勝負、東がもらいますよ!」
 勢いよく飛び出したクロセルは、クレーメックからボールを奪うとすぐにマナへパスをした。
 転がってきたボールをしっかりとキャッチするマナ。しかし、体長60センチの彼女にバスケットボールはでかかった。
「う、うむ……」
 どうやって運ぼうか考え、大玉転がしのようにボールを押し始める。反則じゃないのかと言いたいところだが……。
『転がしちゃダメなんてルール、どこにも書いてナイヨ。だからあれは反則じゃないネー』
 異色を放つ選手、マナに両チームとも見入っていた。はっと気付いたクレーメックが動き出した時、マナを近くで見守っていたシャーミアンが動いた。
 すかさずマナごとボールを持ちあげる。落ちないよう必死にボールを抱えるマナ。
 そしてシャーミアンは、投げた――!
 クレーメックは、マナがいるので迂闊に手を出せないでいた。頭上を飛んでいく物体を目で追うばかりだ。
『おっと、バスケットまで届きそうにないネー』
 だが、あともう少しのところで落下してしまうボールとマナ。
「はっ……!」
 マナはとっさにドラゴンアーツを発動させると、気合でボールを投げ飛ばした。
 ぎりぎりのところで中へ入っていくボール。――東:34点。

 しかし、落ちて行くマナが他の選手にぶつかったので西にフリースローが与えられてしまう。
 麗夢にとってはチャンスだった。
 邪魔のいない空間で狙うシュートなら、入るかもしれない。入ったら自分はちびっこなので6点が加算される。
 慎重に狙いを定め、深呼吸をする。東がリードしているだけに、この時はとても重要だ。
「……っ」
 投げたボールはバックボードにぶつかったが、リングの内側を回った末に落ちた。
『入ったネー! これは良い試合になってきたネ!』
 西:31点。

 さりげなくライバル心を抱いていた相手に点を入れられた巡は悔しかった。運動は得意なはずの自分がまだ何も出来ていないとは。
 歩はいつの間にかコートを下がってしまったし、マシな戦いを出来るのは自分だけだ。
「先制攻撃っ」
 と、ヴェルチェ・クライウォルフ(う゛ぇるちぇ・くらいうぉるふ)がクレーメックからボールをはたき落とす。互いに何か感じるものでもあるのか、ずっと互いをマークし合っている。
 巡は転がってきたボールを拾い上げ、ゴール近くにいたクロセルへパスをする。
 その隙にゴールへ走り寄り、クロセルのシュートしたボールを空中でキャッチ! 確実にバスケットの中へ押し込む。
「入れっ!」
 ぱすっとバスケットを通過するボール。
『あれはまさしくアリウープ! 綺麗に入ったネー』
 ――東:39点。
 ようやく活躍できたことに巡は満足していた。