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少年探偵と蒼空の密室 A編

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少年探偵と蒼空の密室 A編

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ANSWER 6 ・・・ トップチームの問題 清泉 北都(いずみ・ほくと) レン・オズワルド(れん・おずわるど) フレデリカ・レヴィ(ふれでりか・れう゛い) 紫月 唯斗(しづき・ゆいと) 御空 天泣(みそら・てんきゅう) 山田 桃太郎(やまだ・ももたろう) 榊 孝明(さかき・たかあき)

 巨大アミューズメントセンター、エッグマン空京ミッドタウン内では、緊急発表がなされていた。
「全国大会中止って、どういうこと」
 蒼空の絆空京大会の優勝チームの一員、清泉北都は、突然の発表に首をひねる。
「それで、今日、このまま、マジェスティックのロンドン塔に移動して、プレミアイベントに参加って、まったく意味がわからないよ」
「いいじゃないか。プレミアイベント参加させてもらうとしようぜ。俺は、夜の方が調子がでるしな」
 北都のパートナーの吸血鬼ソーマ・アルジェント(そーま・あるじぇんと)は、気にした様子もなく、平然としている。
「場所がどこだろうと、なにか起きる時は起きるさ。俺は北都を守るだけだ」
「ソーマは気軽だよね。僕は、イベントに参加するけど、みんなはどうする?
 僕、個人の意見なんだけど、このゲームって、ゲームじゃないよね。現実のイコンを僕らが遠隔操作して、どこかで作戦を実行してる感じがする。みんなは、どう思う」
 優勝チームの仲間たちは、誰も北都の意見に異を唱えなかった。みんな、内心、北都と同じように感じているのだ。
「この秘密に気づいた人が殺されたり、行方不明になっているのかな。わからないけど、とにかく、そういう可能性がある以上、僕は、このゲーム内で敵の命を奪うような行動をするのは、危険だと思う。今夜のイベントで、また、プレイすることになっても、僕は、自分も、相手も、できるだけダメージの少ない方向で動くつもり」

(メティスの解析で、蒼空の絆がイコンの遠隔操作を行う装置なのは、わかった。つまり、俺たちは、ゲームと偽られて、人殺しをさせられたわけだ。許せないな)
 冒険屋ギルド代表レン・オズワルドは静かに怒っていた。パートナーの機晶妃メティス・ボルト(めてぃす・ぼると)のデーター解析によって、蒼空の絆の正体を知ったレンは、すでに自分が次になにをすべきか決意をかためていた。
「悪いな。俺は、みんなとは別行動を取らせてもらう。今夜のイベントにはたぶん参加しないと思う」
「レンと私は、自分たちなりに蒼空の絆事件を追わせていただきます」
 レンとメティスは、チームの仲間たちから離れ、エッグマンの出入り口へむかう。
「メティス。マジェスティックの地下に遠隔操作のイコンが集結しているんだな」
「はい。さきほどの大会で使われたものも含めて、遠隔操作のイコンへの指示は、筐体から機体に直接届くのではなく、センターを経由してから、各機体へ送られています。先ほど、私は、センターのコンピュターに侵入しました。現在、マジェスティックの地下には、遠隔操作のイコンが続々と集まってきています。大規模な作戦決行の準備段階だと思われます」
「なにを企んでいるのかは知らないが、そのふざけた計画はブチ壊す! 俺たちの今回の作戦名は、エピメテウス。ギリシア神話の巨神のように、一瞬のきらめきですべてを焼き尽くしてやるさ」

「私もプレミアイベントに参加するわ。たぶん、そこで私たちは蒼空の絆に乗ることになると思う。でないと、わざわざ私たちを招待する必要がないからね。それに、ここにいた黒服の人たちも、またそこに現れるんじゃないかしら。レンさんがどう動くつもりかは、まだわからないけど、連絡を取って、連携して捜査をすすめたいわね」
 頭の回転の早いタイプの人間が、よくそうなるように、フレデリカ・レヴィは、一気に口早に自分の考えを述べた。
「くるとくんとあまねちゃんからの情報も欲しいわ。私たちの操作するイコンが現実に軍事行動をしているとして、いつまでも裏で糸を引いている連中の思惑通りに動いてやるもんですか」
「レンさん、メティスさん、くるとくん、あまねさん、他にも手に入る情報はできる限り早く入手して、みなさんにお伝えしますから、くれぐれも無理はしないでくださいね。軍事行動の被害を最小に食い止められればいいんですけど。フリッカもあまり先走らないように気をつけて。場合によっては、退却が最善の策の時もありますから」
 フレデリカのパートナー、ルイーザ・レイシュタイン(るいーざ・れいしゅたいん)は、小さくため息をついた。優しく温和な性格のルイーザとしては、フレデリカはもちろん、他にみんなにも、あまり危険なことに深入りして欲しくないのだ。
「このゲームの正体がおぼろげながらもわかった以上、ここで手を引いて、後は、軍隊や警察に事件を任せてもいいのではないかしら」
 こっそり本音をもらし、ルイーザは眉間の皺を深める。

 優勝チームの一員、紫月唯斗のパートナー、エクス・シュペルティア(えくす・しゅぺるてぃあ)紫月 睡蓮(しづき・すいれん)は、プレミアイベントの参加について相談しているメンバーたちから離れ、センター内の調査を行っていた。
「むぅ、レインはなぜ、わらわを見て、逃げてしまったのじゃ。どうして、怪しい黒服の一団と一緒にいるのじゃ」
「エクス姉さん。一瞬ですが、さっき、会った時、目をみてわかりました。レインさんは、悲しんでいます。本心は、唯斗兄さんとエクス姉さん、アンナさんに助けて欲しいんだと思います。レインさんを助けてあげて」
「当たり前じゃ、わらわに任せろ。唯斗が仲間たちと今夜のイベントでの作戦を練っている間、わらわとおぬしでレインや黒服の一団につながる手がかりを探すぞ」
 名門シュペルディア家の姫君で、正義感の強いエクスと、人形のような外見のアリスの睡蓮は、トイレや物置、従業員更衣室にまで忍び込んで調べたが、特に怪しいものは、見つからなかった。
「レインと唯斗は、蒼空の絆を通じて知り合った友達であり、パートナーじゃった。言葉を交わす機会は少なくとも、心はつながっていた。唯斗やわらわたちの姿を見つけたレインが、どこかにメッセージを残すのは、じゅうぶんにあり得るぞ」
 二人はあきらめずに探索を続ける。

 繊細そうで物静かな雰囲気の外見そのままの性格の御空天泣が、おずおずと手をあげた。
「僕も、今夜のイベントにでます。僕なりに考えがあるので、みんなの役に立って、事件解決に貢献できるように……善処します」
「とてもそうは見えないと思うけど、男性恐怖症気味の天ちゃんが男の人がいる前で、ここまで言うってのは、内心、かなり燃えてるって、ことだよ」
 天泣のパートナーのラヴィーナ・スミェールチ(らびーな・すみぇーるち)は、八重歯がチャームポイントのかわいらしい少年の姿をしている。が、内面はかなり黒い。
「趣味の悪い人殺しゲームでそんなに燃えちゃって、天ちゃんも、みんなも、案外、残酷なんだね。ボクは、子供だから危ない遊びにはかかわらずに、今夜のイベントは、みんなの様子を眺めてることにするよ。みんな、がんばってね」
「趣味が悪いゲームだってのは、たしかだね。美しくないよ」
 ラヴィーナの嫌味っぽい口調をスルーし、言葉の意味そのものに同意を示したのは、ピンクの髪の美少年、山田桃太郎だ。
「天御柱学院の僕たちパイロットが、命賭けで乗っているイコンをこんな風に悪用するのは、まったく持って美しくないやり方だ。僕は、この事件の黒幕が大嫌いだ。どこの誰だか知らないけど、このまま好きにさせる気はないよ。どんなやり方になるかはわからないが、今夜、僕はそいつの野望を挫く、それはもう決定済みさ」
「とりあえず、あたしは、レインをさらった連中をぶん殴る。レインがおかしくなってるようなら、あいつも殴って、正気に戻してやるよ」
 桃太郎のパートナーのアンナ・ドローニン(あんな・どろーにん)は、友人であるレインを取り戻すことを第一に考えている。
 紫月唯斗とゲーム内チーム、テンペストを結成していたレインは、蒼空の絆のソロプレイ中に、筐体から姿を消した。
 唯斗やアンナが蒼空の絆の事件の調査に乗りだしたのは、元々は、レインの行方を捜すためだ。
「唯斗。アンナ。プレミアイベントに参加するのは、正解のようじゃぞ」
 エクスと睡蓮がみんなのところに戻ってきた。
 エクスは一枚のカードを差しだす。
 蒼空の絆のPL用のICカードだ。
 PN(プレイヤーネーム)は、レイン。
「蒼空の絆の筐体でな、いつまで待ってもプレイ中の表示が消えない筐体があったんじゃ、途中で人が入れ替わったようにも思えぬし、場内の調査をしていたわらわたちは、それが不思議でな。中をのぞいてみたら、内部は無人で機体はオートパイロットで作動しておった。筐体には、このカードが挿入されていた」
「唯斗兄。カードの裏を見て」
「レインからのメッセージか」
 唯斗は、カードの裏面にペンで手書きされたメッセージを眺めた。
「今夜、イベント開始前にロンドン塔 ソルトタワー」
 
「みんな、それぞれ考えがあると思うんだが、少し俺の話を聞いてくれ。俺のパートナーの椿が、天御柱学院へメロン・ブラック博士に会いにいっている、リンドセイ・ニーバーと連絡を取ったんだが、むこうはむこうで大変な状況らしい」
 天御柱学院の榊孝明が、この場にいるチームのメンバー全員に語りかけた。
パートナーの益田 椿(ますだ・つばき)が一歩、前にでる。
「リンドセイと直接話したあたしから、伝えるわ。蒼空の絆を調べに天御柱学院に行った人たちは、いま、学院に身柄を拘束されているわ。遠隔操作のイコンを使って村を攻撃しようとした容疑よ。
 博士に新型筐体のテストプレイをすすめられて、プレイした結果がこれ。
いい知らせも一つある。あたしたちのチームはまだどうやら本当には、戦闘を行っていないみたい。学院はいま、博士の遠隔操作イコン部隊を調査しているの。この大会は、おとがめなしらしいから、あのリアルな体験の後だと信じられないかもしれないけど、あれは仮想現実、またはどこかで行われた模擬戦。
学院は内外からの声と独自の調査の結果からメロン・ブラック博士を解任させたわ。博士は学院を去った。蒼空の絆全国大会が中止になるのは、当然のなりゆきだね。博士は、今夜、自宅のロンドン塔でのイベントでなにをするつもりなんだろ。学院の目が光っていて、イコンの遠隔操作は難しい。でも、博士の領地みたいなもののマジェスティックでなら、ことを起こせるかもね」
「俺は、博士に言いたいことがある。だから、今夜、マジェスティックのイベントへ行く。会えるかどうかはわからないが。みんなはどうする? 危険は約束されているような状況だ」
 孝明は、尋ねてすぐに、バツの悪そうな笑みを浮かべた。チームメンバーの表情に、迷いはない。
「すまない。愚問だったな。それぞれ目的は違っても、俺たちは、チームだ。助け合って、一緒に戦い抜こうぜ」