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しっぽ取り宝探しゲーム

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しっぽ取り宝探しゲーム

リアクション

1.

 蒼空学園正門前。
 放課後になると、その場所は耳としっぽを着けた生徒達で賑わっていた。その中に紛れていた松田ヤチェル(まつだ・やちぇる)に、何者かが話しかけてきた。
「ヤチェルん!」
 はっと振り返ると、猫耳としっぽを着けたルカルカ・ルー(るかるか・るー)がヤチェルの前で立ち止まった。
「ルカちゃんも来てたのね、にゃん」
「ええ、面白そうだから参加するにゃん」
 と、ノリノリなルカルカ。
「あと、こっちはルカのパートナー、ルカ・アコーディング(るか・あこーでぃんぐ)にゃ」
 そう言ってルカルカは後ろについてきていた自分とうり二つの少女を紹介した。
「今日はよろしくね」
「……ルカちゃんが二人いるにゃ」
 と、ヤチェルが目を丸くすると、二人が顔を見合わせて笑う。その様子を見ていた由良叶月に気付いたルカルカは、元気よく彼に手を振った。
「叶月さんも、今日はがんばろうにゃ!」
「……」
 叶月は答えなかった。猫耳としっぽを装着して以来、彼は一言も発していない。
「カナくんたら、恥ずかしがっちゃって喋らないにゃん」
「そうなの? 無口は良くないにゃん!」
 ルカルカに言われてそっぽを向く叶月。このゲームにヤチェルを誘ったのは自分だが、今更それを後悔していた。

 開始の合図が流れると、生徒たちは一斉に森を目指して走り出す。
 審判を務める風羽斐(かざはね・あやる)翠門静玖(みかな・しずひさ)は、その光景を眺めながら彼らの行く末を追う。
「最後に勝つのはどんな動物か、気になるな」
 と、どこか楽しそうに呟く斐。静玖は目の前を次々に通り過ぎていく参加者たちを見て言う。
「オッサン、あれって有りなのか?」
「ん?」
 静玖の指さしたのは、鎧を身に着けた一人の生徒だった。耳は着いているものの、しっぽが見えていない。
「そこの、えーっと、鎧を着けたおまえ! ちょっと止まって」
 と、呼びとめる。
 振り返った毒島大佐(ぶすじま・たいさ)に、斐が笑う。
「そうそう、おまえだよ」
 大佐はしぶしぶ立ち止まり、彼らの方へ向かった。
「名前は?」
 と、参加者の名簿を手にした静玖が問う。
「毒島大佐がお」
「このゲームは二人一組だぞ」
「それくらい知っているがおー」
 と、大佐は言うと、身に着けていたはずの鎧が人型を取った。
アルテミシア・ワームウッド(あるてみしあ・わーむうっど)にゃ」
 と、魔鎧の彼女が言う。名簿を確認した静玖は、彼女にも白い猫耳としっぽが装着されているのを見て言った。
「ああ、じゃあオーケーで」
「よし、気を取り直して行くがお!」
 アルテミシアが再び鎧となって大佐の身を包む。
「本当にオーケーなのか?」
 走り出した大佐の後ろ姿に斐が疑問を投げかける。鎧にはマントが着いており、大佐のしっぽが見事に隠れていた。
「あれ、すごく卑怯じゃね?」
「……ルール違反じゃないから良いだろ」
「ああ、それもそうだな」
 そんな二人を遠くから見ていた相楽心亜(さがら・ここあ)は、パートナーの椥辻久遠(なぎつじ・くおん)へ言う。
「久遠、フード取らないとダメちー」
「えぇ、やっぱダメ……にゃ?」
 と、恥ずかしがる久遠。リスの耳としっぽを着けた心亜は、斐たちの方へ目を向けた。
「審判がそこにいるちー。他の人たちもみんな耳出してるから、久遠も出すちー」
「うぅ……分かった、にゃ」
 と、フードを外す久遠。現れた猫耳は彼の心境を表すようにくたっとしていた。
「や、やっぱり恥ずかしい……にゃ」
「でも、人に会わないで宝箱は見つけられないっちー」
 と、心亜。
「……うぅ、だけど」
 それでも久遠は人目を気にする様子だ。
 心亜はひとつ息をつくと、手にした地図を指さした。
「じゃあ、迂回するっちー。どこまで行けるか分かんないけど、それなら大丈夫ちー」
 はっとした久遠が申し訳なさそうに頷き、心亜がその手を引いて歩き出す。