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【怪盗VS探偵】煌めく船上のマジックナイト

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【怪盗VS探偵】煌めく船上のマジックナイト

リアクション

「ちょっと! こっちに来ますよ! いつまで食べてるんですか!」
「おう……ふ……」
 レジーナはこの騒ぎでも料理を食べていた健勝の頭を光条兵器で思いっきり殴りつけた。
 前から蝶子達が走って来ているのだ。
「止まれ! 止まらんと撃つであります!」
「止まれと言って止まる人なんかいませんって!」
 レジーナのツッコミ通り、蝶子達は誰1人として止まらない。
「痛いでありますが……てぇいっ!」
 さっき殴られた痛みで照準が定まっていないのに、そのまま蝶子の足元を狙って撃った……が、見事に外れて、後方へと弾はそれた。
「ああっ!!!」
 しかし、何か……いや、誰かに当たったらしい、声が聞こえた。
 その声に蝶子達も振り返る。
 声の持ち主はウェイターに化けて潜入していた仮面だった。
 ウェイターとはいっても、よくこれで乗船が認められたものだ。
 蝶子に前もって言っていなかったら、通してはもらえなかっただろう。
 全裸に薔薇学マント……そして、下はこんがりと良い色のエビフライでこんもりしていた。
 そう……していたのだ。
 健勝の弾丸がエビフライだけを吹き飛ばしていたのだ。
「俺のエビフライもげちゃった! 青太君、付けて! 付けてー!」
「って、なんでそれで僕に付けてもらおうとするの!」
 近くにいた青太に走りよるが、青太は逃げ出した。
「良い子を取り締まるためにきたのですが、これは見過ごせません。無法判官として、青少年健全育成装甲突撃軍少佐として、あなたを逮捕します」
 出てきたのはガートルードだ。
「捕まえちゃダメー! きゃー!」
 ガートルードとシルヴェスターは真面目にやっているのだが、仮面はどう見ても、楽しみながら逃げているとしか、思えない。
 それもそのはずで、逃げていると色んな人が仮面を見て、悲鳴を上げているからだ。


「待て!」
 目の前を通り過ぎようとしていた蝶子を止めようと、忍が手を伸ばした。
「いっやーん!」
 しかし、強運だからなのか、凶運だからか、その手は帯を引っかけていて、蝶子はまたも肌蹴てしまった。
「しーちゃん?」
 隣で怪盗を捕まえるのをフォローしようとスタンバイしていた香奈は笑顔なのに、何故か怖い。
「いや、待て! これは、違うんだ!」
「そうだよね……こんな事、進んでやるはずないよね?」
 笑顔が怖い。
 香奈の手には光条兵器の桜華が出現していた。
「違うんだー!」
 痴話喧嘩になってしまったのを楽しそうに眺める者がいた。
「さすが忍。期待を裏切らない男よ」
「なんか面白いねー」
 信長は満足そうに笑い、氷雨も楽しそうに見ている。
 氷雨の近くでは、ご飯を食べながら、他の場所を見ているアイスとスノウの姿もあった。
 蝶子達はこっそりとその場を後にした。


「やっと、おねーさんに追いついたー! えいっ!」
「いっやーん!」
 蝶子に追い付いて、嬉しくて、円は帯を引っ張った。
「円さん!?」
「ああ、青太くん、無事合流出来て良かったねー」
「いや、それよりどうして帯を……」
「やだなー、ボクなりの挨拶だよー」
「あら、そうなの? ならいつでもやって良いわよ」
 何故か、蝶子からいつでも帯を引っ張っていい許可が下りてしまった。
「ええー!? 蝶子お姉ちゃん、それはちょっと……」
「あたしが良いって言ってるんだから、良いのよ! 面白いから!」
「わー、さすがおねーさん。わかってるー。あ、そうそう、今回もちゃんと仕込みしてきたよ、箸袋をひらがなで『ぱーぷるばたふらい』に、すり替えてきたから宣伝はばっちりだよ」
「あら、あれをやってくれたのは円さんだったのね。大好きよ」
「わーい♪」
 蝶子に好意を示されて、円は嬉しそうだ。
 面白くなさそうなのはリースだが。
 とにかく、円がこの時点から合流した。


 誰も居なくなったステージの上に上がり、マイクを手にした男がいた。
「予告状を出した怪盗紳士と申します! 大切なモノ、それは貴女の心です! 俺とオトモダチよりちょっとばかり親密な関係になってください、美緒さん!」
 スピーカーから大音量で会場内に響き、ちゃんと美緒にも聞こえている。
 美緒が正悟に何かを告げると、ワイバーンをクロセルの位置まで戻してくれた。
 ワイバーンから降りることはできないが、わりと近くまで下がってくれた。
 クロセルは足をぷるぷるさせながら、つま先立ちして、美緒に花束を渡す。
「綺麗な花束ありがとうございますわ。それでは」
 美緒は笑顔で花束を受け取り、それだけ言うと、またワイバーンは天井付近まで上がっていってしまった。
「って、それだけですかーーっ!?」
 マイクを使っていないクロセルの叫びもまた会場内に響いたのだった。


「クロセルさん、やってるのそれ、ただの告白ですから! 怪盗パープルバタフライの邪魔じゃないですよ!」
 手を組んでいるクロセルの行動までは知らなかったようで、鬼崎 朔(きざき・さく)が全力でツッコミを入れたが、クロセルに届いているかはわからない。
 今日はタキシードに月光蝶仮面の仮面を付けている。
「ごほん……気を取り直して……。未だに【蝶】を語り、悪事を働く不届き者が……この月光蝶仮面……二度と怪盗パープルバタフライを名乗れなくしてやろう! 覚悟!!」
 蝶子達の前にたちはだかる。
「揚羽蝶仮面もいるであります!」
 アゲハ蝶の仮面とメイド服を着たスカサハ・オイフェウス(すかさは・おいふぇうす)もその隣に控えていた。
「あたしの方が蝶は似合うわ。月光蝶仮面さんこそ、改名したらどうかしら?」
 蝶子も負けじを言い返す。
「蝶が似合うのは月光蝶仮面と揚羽蝶仮面であります!」
 スカサハはそう叫ぶと、加速ブースターで動きながら、六連ミサイルポッドを蝶子達に向けて発射した。
「わーっ!」
 当たりそうになったのは何故か、蝶子ではなく青太だった。
 さすがドジっ子。
「流石にそれは危ないんじゃないかなぁー」
 スカサハにブリザードをお見舞いしたのはアイマスクを外した春美だ。
 青太を庇うように立った。
 朔はそれを見ると、春美にボウガンでサイドワインダーを放つ。
 それを爆炎波で迎え撃ったのは、これまた仮面を外したピクシコラだ。
「クラン行くであります!」
 スカサハはピクシコラに機晶犬をけしかける。
「危ないって言ってるじゃない。そんな本気だしちゃダメよ」
 蝶子は鞭を操り、クランの進行方向の床に振り下ろすと、クランは後方へ飛び、鞭をかわした。
 一進一退の攻防が続く。