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【怪盗VS探偵】煌めく船上のマジックナイト

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【怪盗VS探偵】煌めく船上のマジックナイト

リアクション

「なんか、凄いことになってるよね」
 もぐもぐと料理を頬張りながらそう言うのはグェンドリス・リーメンバー(ぐぇんどりす・りーめんばー)だ。
 白いワンピースに赤い靴、いつもとは違って頭に付けてるリボンは靴に合わせて赤にしている。
「怪しすぎるパーティーだとは思っていたが、ここまでハチャメチャだとは……」
 同じく、料理を食べながら言ったのは七篠 類(ななしの・たぐい)だ。
 黒いスーツに紺のネクタイとシックにまとめている。
 他の人より目立たないようにと配慮してのことらしいが――
「そうでありますな! ここまでだと我輩達はどうにも……地味……もぐもぐ」
 ハムスターのごとく料理を頬張っているのは、頤 歪(おとがい・ひずみ)だ。
 連れが洋風なのに、歪だけ袴なので、せっかく類が地味にしても目立ってしまっている。
 ハムスターのようになっているのも問題なのかもしれない。
(うむうむ、目立っておりますな! これなら地味な類殿も一緒に目立つであります!)
 しかし、歪の思惑は長くは続かなかった、みんなの視線は蝶子達の一進一退の攻防に釘付けとなっている。
「招待状の差し出し人ってあの人なのかな?」
「どれだ!?」
「あの紫の着物着てる派手なお姉さん」
「なるほど……中心人物のようだな」
「そんなに類さん、差出人が気になるの?」
「ああ……こんなハチャメチャやる奴だ……気になるだろう」
「なんか……恋してるみたいだね」
「馬鹿言え」
 グェンドリと類の会話に一切歪が入ってこなかった理由は、ぜんざいを頬張っていたから。
 それとどうやったら類が目立てるか考えているらしい。
「パーティーのお礼言いたいな。だって、可愛い洋服が着れて、美味しいご飯食べさせてもらったから」
「そうか……ちょっと待ってろ!」
 類はそう言うと、バーストダッシュで一気に蝶子達の元へと突っ込んで行った。
 もう少しで蝶子の元……というところで、類は勢いよくすっ転んだ。
 そして、手には何故か帯が……。
「いっやーん」
 真剣な勝負だったはずなのに、蝶子の紐パン姿がさらされた事により、一気に冷めてしまった。
「……大丈夫だ、転んでない」
「いや、転んでましたよ」
 何事もなかったように立ち上がった類に青太がツッコミを入れた。
「お姉さんだよね? この招待状くれたの」
 戦いが一段落したので、グェンドリスが蝶子に近づいた。
「ええ、そうよ。気に入ってくれたかしら? 何かやるなら大勢の方が楽しいわよね!」
 蝶子は帯を結び直しつつ、そう言った。
「うん、ありがとう」
「あら、可愛い」
 蝶子は気に入ったのかグェンドリスの頭を撫でた。
「さ、逃げるわよ! と、その前に、春美さん達、守ってくれて感謝するわ」
「私は探偵だけど……蝶子さんって嫌いになれなくて。もし、私が探偵じゃなかったら……もしかしたら……ううん、もしの話しはしちゃダメよね! 早く一流になってね! 怪盗と探偵として戦えるのを楽しみにしてるから!」
「春美さん……何、そんな細かい事を気にしてるの?」
「え?」
「探偵だから何? 怪盗とは仲良くしちゃいけない決まりでもあるのかしら?」
「いや、だってライバルなんだし……」
「そんなの偏見なんじゃない? あたしは怪盗だけど、探偵が仲間にいても面白いと思うわ。だから……“もし”を実行したくなったらいつでもいらっしゃい!」
 そして、蝶子達はまた走って行ってしまった。
 春美の心に何かを残して。


「怪盗さんいましたーーーー!」
 蝶子達を追いかけて来ているのはオルフェリアだ。
「にゃーーーっ!」
 御影は全力で走ってきて、蝶子の背中に抱きついた。
 スピードが落ちたところでオルフェリアも背中から抱きついた。
「いっやーん」
「んにゃ? ごめんにゃーー!」
 オルフェリアが御影にぶつかり、その反動で帯を引っかけて、解いてしまったようだ。
 蝶子は自分で素早く帯を直す。
「何かしら?」
「サインを、オルフェにサインください!」
「まあ、素敵。良いわ」
 蝶子はすぐにサインを書いてやる。
 なんだか、字体に特徴があり、全体をみると蝶の雰囲気を思わせるサインになっていた。
「わー! ありがとうございます!」
「また、いつでもいらっしゃい。遊んであげるわ」
 蝶子は色紙を大事そうに抱えたオルフェリアと物足りなさそうにしている御影にそう告げた。
「にゃー! 遊びに行くにゃー!」
 走り去る蝶子達をオルフェリアと御影は嬉しそうに見送ったのだった。


「せっかく出来た友達をどこに連れて行こうっていうんだい!」
 メイコはドレスを脱ぎ捨て、動きやすい格好になると、レッサーワイバーンに向かって、遠当てを実行。
 ワイバーンの脇腹に当たったが、少し体勢を崩すくらいの衝撃しか与えられなかった。
 かなり距離があるせいだろう。
 メイコの攻撃の直後、銃での攻撃がワイバーンに向かっていったが、ひらりとかわされてしまった。
 火焔がやっと追い付いたのだ。
「冷たき海上にてなお熱く正義に燃える男! 熱血探偵・百日紅火焔参上! ……これは本当に格好良いのでしょうか?」
「…………」
 火焔の口上に橙歌は無言を貫いた。
「手伝いますよ」
 側にいた淳二が奈落の鉄鎖でワイバーンを少しだけ床へと近付ける。
 その隙に、メイコの遠当て、火焔の銃で攻撃を加えた。
 足をかすり、ワイバーンは咆哮を上げながら、床へと着地した。
 美緒の元へと駆け寄ろうとするメンバー、しかし――
「初めまして、探偵さん、怪盗さん。私は漆黒に流れる者――怪傑ナイトリバー! さあ、ここからが本当の狂宴(パーティー)。夜の始まりよ!」
 間に刹姫が割って入ってきた。
 黒マント状になった雪を羽織り、紙で作ったダサイお面で顔を隠した刹姫だ。
「彼女は私が頂くわ」
 濃度の薄いアシッドミストを発動させ、辺りの視界を悪くすると、美緒のそばに近寄り、美緒の腕を取ろうと、手を伸ばしたのだが――
「きゃっ」
「ん?」
 むにむにとする感触、思わず、何度も揉んでしまう。
「あぅ……やめてください……」
『サキ! それは腕じゃない! 胸だ! ……もっと揉んでも……げふんげふん』
 雪の言うとおり、掴んでいたのは、あのけしからん胸だった。
 やんわりと、正悟が刹姫の手を外すと、またワイバーンを飛ばして、会場の入り口付近まできていたので、外に飛び出してしまった。
 刹姫は外された手をまだ、もみもみして、自分の胸を見た。
 何かに敗北したようだ。