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カノンを取り戻せ!

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カノンを取り戻せ!

リアクション


1


 中国の山奥にある鏖殺寺院基地……そこに三者が一様に介した。
「あなたは……鮮血副隊長ね? そっちのあなたは? 見たところ寺院の紋章を持っているようだけど」
 貴族服をきた女、メニエス・レイン(めにえす・れいん)がそう訪ねます。
「よう、メニエス・レインじゃないか。こっちにいるのは、たしかミレリアの『おねーさま』だったかな?」
「うふふ、そうよん。ミレリアちゃんと遊びにきたの。後ろのはお供よ……」
 牛皮消 アルコリア(いけま・あるこりあ)トライブ・ロックスター(とらいぶ・ろっくすたー)の言葉に応えてそう言う。
「ふん……どうだか」
 王城 綾瀬(おうじょう・あやせ)は侮蔑の色を隠そうとしない。
「マイロードに非礼なその態度、どうやら教育が必要なようですね……」
 ナコト・オールドワン(なこと・おーるどわん)がそう言って魔力をほとばしらせると
「つまんないことで喧嘩するならあたしが相手になるわよ」
 とメニエスが殺気を漲らせながら言う。
「ごめんなさいね。この娘は後で叱っておくから……」
 そう言ってアルコリアがナコトに抑えるように言う。
「イエス。マイロード」
「無駄な争いにならなくて良かったな……」
 シーマ・スプレイグ(しーま・すぷれいぐ)が白の剣を鞘にしまいながら言う。あの一瞬で抜刀していたのだ。
「私はミレリアちゃんとお話ししたいだけだから取り次いでくれるかしら、幹部さん?」
「あたしに言っているの? ふふ……まあいいわ。あたしもこの基地は初めてだけど、あたしの顔ならどうにかなるでしょう」
 そう言うとメニエスはトライブとアルコリアたちを引っ張って門番に鏖殺寺院の紋章を見せた。
「あたしはメニエス。他のは連れよ。通してもらえるわね?」
 そう言うと門番の男は緊張した様子を見せた。
「あ、あのメニエス様ですか。少々お待ち下さい」
 そして男は電話で何事かのやりとりをかわすと、「お待たせしました」と言ってメニエスたちを中に通した。
「司令室はこちらです」
「ご苦労様……」
 メニエスが見下した様子でそういうが男は緊張でそれに気づかない。
「貴方がこの基地司令かしら?」
 一人の男の前でメニエスの足が止まる。
「はい、メニエス様。お噂はかねがね伺っております。それから、そちらの仮面の方は鮮血副隊長様ですな。それで、そちらは?」
「へろへろー、私はミレリアちゃんに会いに来ただけよん。お呼ばれをされてね」
「ミレリアですか。あのわがまま娘にも困ったものだ」
 司令官が困った表情を見せると、
「ねえねえ、ミレリアってやっぱりわがままなの? アイドルだから?」
 とラズン・カプリッチオ(らずん・かぷりっちお)が好奇心いっぱいに尋ねた。
「まあ、エースパイロットだからというのもあるがな……ミレリアなら格納庫にいる。おい、この人達を格納庫まで案内して差し上げろ」
 シタッパーズ1号が呼び出されて命令を受ける。
「はっ」
「俺も付いて行くぜ、用があるのはイコンなんでな」
「はっ」
 こうしてアルコリアら4人とトライブら2人は格納庫へと向かった。
「司令官、トップパイロとのミレリアや{SNL9998854#設楽 カノン}のデータをくれないかしら?」
「はっ……! おい!」
 部下に命じるとその男は端末を空けた。
「お好きなように操作なさってください。パイロットのデータベースはこちらからアクセスできます」
 メニエスは端末をいじると早速ミレリアやカノンのデータを引き出した。そしてこんな一文が目に入る。
 設楽カノンについては洗脳がまだ不安定である。何かのはずみで洗脳が解けるかもしれないので注意されたし。
「洗脳……ねえ。言っちゃなんだけど、無粋ね。エレガントじゃないわ」
「まあ、あの娘が強化人間部隊でトップですからな……それに、戦闘人形には何も知られないほうがいい」
「ふぅん……まあいいわ。またぞろ天御柱とかが攻めてくるらしいから見学させてもらうわ」
「了解しました」

 ――イコン格納庫
「へろへろー、ミレリアちゃんいるー?」
 アルコリアがそう言うと内蔵型ソニックスピーカーから「おねーさまぁ……」と甘える声が聞こえた。
「ミレリアちゃん、あっそびにきたよー」
 再びそう言うとシュヴァルツ・フリーゲのコクピットが開き、ボディラインがはっきりするパイロットスーツをきたミレリアが降りてきた。ついで、パートナーのリリアも降りてくる。
「はい、これ。シーマちゃんに作らせたクッキーとお気に入りの中国紅茶よん。さて、ミレリアちゃん」
 テーブルにつきながらアルコリアは語った。
「いろいろ聞きたいことはあるけど、私も友達や天学の人に聞かれたら答えると思うから……差しさわりある所は答えなくていいからねー」
「はい」
「ミレリアちゃんが寺院にいる目的は何?」
「ん〜。恩返しですぅ。寺院の人には色々とお世話になったからぁ」
「例えば?」
「食事とか、服とか、教育とか、お金とか、いろいろですぅ」
「寺院のやってることは気にならないの? テロとか」
「正義のためですよぅ」
 そこにシーマが割って入る。
「……話の途中悪い、ミレリア。鏖殺寺院に……正義はあるか?」
 そう言ってから顔をしかめた。
「あー、いや……正義という概念自体アレだな。哲学的な回答でも、言葉遊びでも構わん……興味本位だ」
「正義がなかったら誰がお金を出してくれるって言うの? 正義だからお金を出してくれるのよ。心優しい皆さんがぁ」
(たしかにスポンサーにはスポンサーなりの思惑があるのだろうが……)
「地球規模の組織ですよぅ。ボランティアで戦争なんかできませんよぅ」
「それもそうだな……悪かった。気にしないでくれ」
(やはりボクは寺院のやり方を受け入れられん)
 そう考えながら話の先を促す。
「歌とか、イコン戦闘以外に趣味は?」
「そうですねえ。ハリウッド映画とか好きですよぉ。地元の子どもにも映画を見せると喜んでくれるんですぅ」
「地元?」
「中東よねえ? 中東って地獄だった? 反吐が出そうな世界だった? ねぇ、苦しみ悲しみ憎しみ……あったら教えてよ」
 ラズンが楽しそうに尋ねる。
「……地獄よ。泥水をすすり、木の根を食べて、飢えをしのぎ、病気にかかって幼い子供が死んでいく。それが中東よ」
 ミレリアの表情が真剣なものになる。
「だからあたしはこんな状態から街のみんなを救ってくれた寺院には感謝しているわ。あたしが戦うのは恩義のためよん」
 一転して明るい調子に戻る。
「カミロさんやミレリアちゃん以外に強いパイロットさんって心当たりあるの? 強いイコンでも可よ。戦って面白そうな相手を教えてほしいな」
「評議会にはもっと強いパイロットもいますよー。カミロさんも十人評議会の一人ですねぇ……」
「マネージャーさんとは恋人とか特別な関係? 私と同じで知っててずりすり引きずりまわしてるタイプなのかな?」
「リリアと? リリアとは姉妹のような関係です。子供の頃から一緒に苦楽を共にしてきた仲ですゎ」
 ひと通り聞きたいことを尋ねるとアルコリアはお茶をすすりながら頷いた。
「ふーん。まあ、わかったわ。じゃあ、これは私から言いたいことなんだけど、鏖殺寺院をやめてどこか別の学校に来る可能性はゼロ?」
 それを聞いてリリアは考えた。
「うーん。あまり身バレしていないしこのまま鏖殺寺院にいてもアイドルを続けることは難しくはないと思うんですけどぉ、アイドルを続けるのが無理になるようだったら鏖殺寺院からはなれますわん。それこそ、S@MPに入るのもいいかもしれないわねえ」
「それと最後に、すっごく気まぐれだから約束できないけど、私に手伝ってほしいこととかある?」
「2021年になっても中東やアフリカは貧しいままです。そんな貧しい地域を救ってるのが鏖殺寺院なんですぅ。だから、鏖殺寺院に対する偏見を解消していって欲しいです。それに鏖殺寺院はパラミタから地球人がいなくなればなにもテロみたいなことはしませんもん」
「そう、わかったわ。さ、クッキーもっと食べなさい。シーマが焼いたんだから美味しいわよ」
「はい、おねーさま」