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【ザナドゥ魔戦記】芸術に灯る魂(第1回/全2回)

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【ザナドゥ魔戦記】芸術に灯る魂(第1回/全2回)

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終章 守るべくものの覚悟

 シャムスたちがザナドゥへと出立した後の南カナンでは、ロベルダ率いる残された南カナン兵が訓練に精をあげていた。
 主力部隊と領主本人がいない今のニヌアでは、その兵力にも不安が残る。ロベルダは残存兵力と物資の確認を終えると、彼らの力の底上げを考えて新たな編成と訓練を始めた。
 そこにはシャウラ・エピゼシー(しゃうら・えぴぜしー)の姿もある。南カナンを案じてニヌアに残った彼はロベルダとともに自らも南カナン兵に混じって訓練を積んでいた。
 哨戒部隊の編成と運用。主力がいない間の防衛体制の強化。街中への定期的な巡回。彼の提案によって成された兵力のカバー策はいくつもある。無論、それらを全て彼一人が考えたわけではない。ロベルダやパートナーのユーシス・サダルスウド(ゆーしす・さだるすうど)。それに同じ仲間である南カナン兵たちの結束があってのことだった。
 そんなシャウラはいま、ロベルダに剣術の特訓を受けていた。
 幾多の戦いをくぐり抜いてきたロベルダは、腕力や速さに衰えはあるものの、技量そのものはさほど衰退していない。老体とはいえ、まだ軍人になって日の浅いシャウラが彼に勝つのは難しいことだった。
 何度も剣を振るうが、そのたびに軽い動作で刃を見切られてしまう。やがていつものように一本取られて――シャウラはばたんを疲労困憊で倒れ込んだ。
(頑張っていますね……)
 そんなシャウラを見守りながらユーシスは思う。
 そういえばニヌアに残ったのは、もともとシャウラの言葉がきっかけだったか。
 『手薄なニヌアが標的になる可能性もある』。そう考えた彼はニヌアに残り、こうして自らも強くなる為に剣を振るっている。彼の瞳にあった迷いは、もはや薄く見えなくなってしまったように思えた。
 代わりに灯っているのは――覚悟。
 護りたいもの。護ろうとするもののために、彼は引き金を引いたのだ。
「ぬあああー、疲れたー!」
「お疲れ様です。日に日に上達していきますね。これは……一本取られる日も近そうです」
「そ、そうかぁ……?」
 照れくさく頬をかくシャウラ。
 上半身を持ち上げて、彼は休憩がてらに遠くを見た。するとふと、思うことがある。
「なあ、ロベルダさん」
「はい、なんでしょう?」
「……和平ってさ、んな簡単じゃないよな」
 ロベルダは一瞬だけ動きを止めて、彼の隣まで近寄った。
「そうですね……確かに、簡単ではないでしょうね」
「…………だよな」
「多くの種族がいて、多くの国があり、多くの意思がこの世には存在します。時には誰かを憎み、誰かを突き離したくなるときもある。そしてときには……仲良くなりたいと願うこともね」
 シャウラはロベルダの顔を見上げた。
 彼の瞳は少しだけ哀しげだったが、穏やかな顔だった。
「しかしそれは、一つの事柄で収まりきれる問題ではないのでしょう。だからそれを理解して、他人を思いやれるようにならないといけない。自分だけで世界は回ってないのだと、自分だけが、正しいのではないのだと……」
 自分の過去を思い出しているのだろうか。ロベルダもまた、遠い場所を見ていた。
「誰もが仲良くなることが出来るわけではなくとも――『想いやり』を抱くぐらいは、きっと出来るでしょう? そんな小さな覚悟。そして、その覚悟をもって武器を持てる大きな覚悟もまた、必要なのかもしれませんね」
 そして彼は、シャウラと向き合った。
「……その覚悟は、とうに出来ているのでしょう?」
 シャウラは頷いた。
 自分の覚悟が、彼の言う覚悟かどうかは分からない。しかし確かにこの胸にあるのは、誰かを守ろうとする意思だった。
 抜けるような空の向こう。仲間たちが同じ意思を抱いていると信じて――シャウラは再び剣を握った。

担当マスターより

▼担当マスター

夜光ヤナギ

▼マスターコメント

シナリオにご参加くださった皆さま、お疲れ様でした。夜光ヤナギです。
【ザナドゥ魔戦記】シリーズ「芸術に灯る魂」いかがだったでしょうか?

まずは公開が遅れてしまったことをお詫び申し上げます。
大変申し訳ございませんでした。

今回は初の異国ということで、色々と緊張を含みつつ執筆させていただきました。
魔族に対するそれぞれの考え方、接し方。どれをとっても同じものは一つとしてない。そんな気がします。

シャムスはアムドゥスキアスと対峙し、そして芸術大会による対決を申し込まれました。
それぞれの思惑もあり、囚われたエンヘドゥは対決のかけとなり、戦いは動き始めます。
きっとそれもまた変化があることでしょう。
変化する世界はリアクションの醍醐味。皆さまのアクションを心待ちにしています。
自分も、皆さんのアクションに負けないよう、【ザナドゥ魔戦記】の世界を盛り上げて行くために一層気合を入れて頑張るつもりです。

次回はアムトーシス完結編。
それでは、またお会いできるときを楽しみにしております。
ご参加本当にありがとうございました。