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リアクション
観客席にて2
次の歌合戦までの合間、少し時間があった。
その間にコルフィス・アースフィールド(こるふぃす・あーすふぃーるど)は密かに行っていた撮影物の状態を確認しようとしていた。
「やっぱポロリは水泳大会の醍醐味だよな。ちゃんと撮れているかな? あれ?」
望遠付きのデジカメが自分の手を離れていく。
デジカメは健闘 勇刃(けんとう・ゆうじん)が没収した。
「さっきから何やってんだ、コルフィス? 俺たちは遊びにきたわけじゃないぜ! しかも写真撮影は禁止だ!」
「ちょ待ってくれよ!? 新調したばかりのデジカメなんだぞ!」
「大会が終わるまで預かっておくからな。終わったら返してやる」
「え? 後で返してくれるのか? それを先に言ってくれよ……」
コルフィスはそっと胸を撫で下ろす。が――
「メモリーを全消去してからな」と勇刃が付け加えた。
「そんなァ……」と、コルフィスが崩れる。
「あの……健闘様……」
セレア・ファリンクス(せれあ・ふぁりんくす)が勇刃にふと尋ねる。
「わたくしもディーヴァなのに、どうして参加させてくれないのでしょうか?」
歌が好きなセレアが少し悲しそうに言う。出たかったのだ。
勇刃は慌てて弁解した。
「悲しむのは止めてくれ。セレア、君のポロリを人に晒したくないんだ」
「健闘くんは純情ですね。というか、水着が取れるなんて見ているこっちが恥ずかしいです……」
天鐘 咲夜(あまがね・さきや)の感想。浮島観戦中、何度も顔を背けていた。
「そうだったのですか、そこまでわたくしのために気を遣ってくださって、流石健闘様ですわ」
セレアは納得してくれた様子。
彼らは一時任務を忘れて次のプログラムを待った。
「誰よ。こんなの撒いたやつ……!」
コレット・パームラズ(これっと・ぱーむらず)は歌合戦のステージの惨状に憤慨していた。その惨状によって、足を滑らせたからだ。
「どうしたコレット?」と一輝が尋ねる。
「ステージの上がオイル塗れ! 一輝のタバスコ入り水鉄砲なみにひどいよ」
「タバスコはましだ。ハバネロだったら失明するところだぜ?」
どうみても、これは鏖殺寺院による工作に違いない。ADに紛れた誰かがやったと考えられる。
しかしこれでは歌合戦じゃなく、別の種目になってしまうとコレットは主張する。
「時間がないけど、油をどうにかしないとね。一輝、マット敷くから手伝って」
【デッキブラシ】と洗剤を手に取り、コレットは手早くステージ上の油を除去した。まさに《至れり尽くせり》だった。
――控え室
「ななな。ちょっと」
CY@Nがなななを呼ぶ。宇宙より電波を受信していて彼女の反応が1テンポ遅れる。
「どうしたの?」
CY@Nは呪いの傷痕のある胸の下を抑えていた。彼女がワンピースである理由はポロリを防ぐためではなく、その独特の傷を隠すため。
「どうやらさっきの浮島でキーワードを聞いたみたいだわ――」
「へ!? じゃあここでイレブン虐殺宣言とかしちゃうわけ!?」
「大丈夫。少し、傷痕が傷んだだけよ。でも、傷がなにかに反応したみたいで――」
おそらく、骨女が吹っ飛んだ時の悲鳴が呪いの言葉の一つだっただろう。
「もしかして、呪いの言葉は複数用意されている?」
と、なななは以外にキレた推理をする。金 鋭峰(じん・るいふぉん)団長が言っていたCY@Nの呪いの複雑さとはこのことではないかかと。
呪いの段階を複数に分けることによって、発動時の効果、解除に要する必要なワードの効果を薄める。確かに厄介だ。
「でも、逆に言えば、まだチャンスってことよね? 解呪の言葉を知っているやつを見つけるのに」
今まで取っちめた中には解呪の言葉を知っているものは居なかった。段階を要する呪いならば、鏖殺寺院はまだ幾度と無く彼女を狙ってくるだろう。
しかし、未だ呪いを発動させる言葉もその段階まで後幾つあるのかも、ましてや解呪の言葉も分からない。
ただ、状況は鏖殺寺院の有利に傾いたことだけはわかった。
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