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Blutvergeltung…導が示す末路

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Blutvergeltung…導が示す末路

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第3章 信ずる友のための護り手と気ままな娘たち Story2

 魔女たちは相変わらず共闘し合っているが、大佐の方は封神台の傍で立ちはだかるように1人で戦っている状況だ。
 レリウスやハイラル、歌菜たちは封神台の中へ入った仲間のために、敵を退かせようとするものの・・・。
 共闘する者と単独で戦う者と分かれてしまったため、彼らも分断せざるを得ない。
 1人と多数人数を相手にするわけだが、サシで倒せるほど甘い相手でもないからだ。
「よすが。このままだと皆、感染しちゃうよ」
 佐々良 皐月(ささら・さつき)は歌菜たちまで狙われてしまうと、縁の袖を引っ張る。
「空にいる2人はまだ平気そうだけど。絶対に感染しない・・・っていうわけでもないからね」
 黒き炎の中にどれだけ病原体が潜んでいるのやらと、燃え続ける焔を縁が睨む。
「皐月は真くんたちのサポートをお願いね」
「えっ、3人だけで大丈夫なの!?」
「うーん・・・。陣くんたちが出てきたら、撤退するわけだし。なんとかなるんじゃないかなー?ほら、向こうのお手伝いをしてきてっ」
 そう言うと縁は、ぽんっと軽く彼女の背を押す。
「(焔は見えてもフラワシ自体が見えないんじゃ、守りきれるかどうかも分からないからねぇ・・・)」
 歌菜たちのサポートしている羽純の傍に走っていったのを見ると、大佐の方へ視線を戻し、彼女を苦しい目に遭わせないように、最も危険な場所から引き離した。
 バーストダッシュで避ける大佐を、奈落の鉄鎖で地上へ落とそうと狙う。
「―・・・・・・っ。(捕らえにくいったらありゃしないねぇ)」
 蝶のようにひらひらと舞いながら避ける相手を睨み、ストロベリースターに乗って追いかける。
「邪魔な男どもから墜落させようと思ったが。縁、おまえから落としてやろうか」
 ターゲットを切り替え、バーストダッシュで間合いを詰めながら、ラディウスで腕を使い物にならなくしてやろうと狙う。
「しまった・・・ハイラル!」
「(間に合うかっ!?)」
 レリウスの声にブライトクロスボウを大佐に向ける。
「どうやら本当に墜落させられたいらしいな」
 縁から離れ間髪避けたものの、掠り傷すら負わせられず、つまらなそうに少し眉間に皺を寄せた。
 ミラージュの幻影で照準を狂わせようと、今度はハイラルに迫る。
「どれが私か分かるかな?」
「へっ、本物は1体なんだろうっ」
 全部射抜いてしまえば問題ないと、ハイラルはターゲットに矢を放つ。
「ククク・・・簡単に後ろを取られるとはな」
「させませんっ」
 ドフッ。
 小型飛空艇ヘリファルテを踏み台に、レリウスが大佐の足に龍飛翔突をくらわした。
「―・・・そんなっ」
 はずだったが・・・。
 その仕留めたはずの者が、スゥー・・・と跡形もなく姿が消え去ってしまった。
 倒したと思ったのは、ただの幻影だったようだ。
「(後ろにっ!?)」
 殺気看破で大佐の気配を察知し、振り返り様に柄を腹に叩き込んでやろうとする。
「また墜落し損ねたな?」
 苦しみが長引くだけだ、というふうに言い放ち、彼女は槍から逃れる。
「そちらが大人しく退いてくれれば、手荒なマネはしたくないんですけどね」
 レリウスは地面に堕ちかかっている小型飛空艇ヘリファルテに飛び乗り、ハンドルを握って高度を上げ、敵と距離を取る。
「(森の幻影と違って、相手の幻を見せられるだけのようだが・・・)」
 嫌なことを思い出してしまったのでは、とハイラルは彼の方へ視線を向ける。
 冷静さを保っているように見え、今は戦いに集中しているようだ、と安堵の息をついた。
 3人がかりにも関わらず大佐は怯む様子も、焦りの表情も見せず、バーストダッシュでターゲットを絶えず変更し、獲物の背後を取る。
「ちょこまかと鬱陶しいねぇっ」
「外してばかりだな」
 縁が放ったファイアヒールの銃弾を、容易くかわしてしまう。
「(こりゃエイミングでも難しいかなぁー・・・)」
 バーストダッシュで動き回られるだけでも厄介なのに、ミラージュの幻影が邪魔で、なかなか狙いが定まらない。
 レリウスの方も殺気看破で大佐の気配を察知しても、すぐさま自分から他の者にターゲットを変えられ、逃げられてしまっている。
 持久戦になるなら、人数が多いこっち方が有利になりそうだが・・・。
 その前にSPがもつかどうか、縁たちも厳しい感じだ。
「陣くんたちが、そろそろ出てきてれくれればいいんだけどねぇ。まぁ、敵さんもいるから、そうもいかないのかなぁ?」
 キツさはどちらも同じくらいなのだろうが、後は気力のみで戦うことになりそうだと、嘆息する。



 縁やレリウスたちは劣勢ではないが、優勢というわけでもなく・・・。 
 大佐も退く気配はまったく見せない。
 一方、歌菜の方もまだ魔女を仕留めきれていないようだ。
「早く走れても、攻撃を当てられないんじゃ意味ないわねぇ〜」
「歌菜、闇雲にスキルを使っては、SPを消耗するだけよ」
 カティヤはパートナーの傍に駆け寄り、敵に聞かれないように小さな声音で言う。
「スキルを封じようにも、フラワシがどこからか狙っていますからね・・・」
 勝ち誇ったような態度を取っている魔女を見据え、彼女も策を練ろうとする。
「来ないなら、こっちから仕掛けるわよ?私のかわぃ〜フラワシちゃん、あの小娘さんたちを小麦色に焼いてあげて♪」
「考えている暇は与えてくれなさそうよ。―・・・歌菜、私を助けようとしないでね」
 “相手を倒すことだけを考えなさい”というふうに言うとカティヤは、コンジュラーの懐目掛けて駆ける。
「カティヤさん・・・!?」
「ほら、ボーっと突っ立ってないで早く!」
「は・・・はいっ!」
「きゃははは、近づく前に焼いてあげるわ♪」
 彼女たちを焔のフラワシの餌食にしてやろうと、2人を炎で囲む。
「(ごめんなさい、カティヤさん・・・)」
 フラワシの引き付け役になっているパートナーを見た歌菜は、コンジュラーに視線を戻し、バーストダッシュで炎の海から逃れようとする。
「炎から逃げても、さむ〜い吹雪が待ってるわよっ」
「―・・・ぁあっ!」
 ブリザードに吹き飛ばされ、あっけなく炎の海へ落ちてしまう。
「囮1人だけで、接近戦に持ち込めるとでも?甘いわねぇ〜♪」
「か、歌菜さんたちがっ」
「漢なら迷わず飛んでいけ、真っ!!」
「うわぁああぁあっ!!?」
 左之助に抱えられたかと思うと、勢いよく炎の海の中へぶん投げられる。
「いきなり投げるなんて、酷いじゃないか兄さんっ」
 なんとか地面に叩きつけられず、歌菜の傍まで飛ばしてもらったものの、恨めしそうな目でちらりと左之助を見る。
「文句言ってないで、遠野嬢ちゃんを助けてやれっ」
「分かったよ・・・」
 ふぅとため息をつくと真は歌菜へ顔を向ける。
「(この距離ならいけそうかな・・・)」
 歌菜を魔法で叩き落とそうと、待ち構えているウィザードとの距離なら、隙をつくってやれそうだと、霜橋を魔女に放つ。
「わ・・・私のロッドがっ!?お気に入りだったのにぃ、許せないわぁああっ」
 ロッドで霜橋を叩き落とそうとした魔女が、獲物をスッパリと斬り裂かれ、大きな声で怒鳴り散らす。
 その一瞬の隙を逃さず、歌菜はバーストダッシュで炎の海を飛び越え、コンジュラーに迫る。
「やっと近づけましたね」
「―・・・くっ」
「フラワシで攻撃しないんですか?出来ないですよね・・・。そんなことしたら、カティヤさんにまで狙われてしまいますからね」
 ターゲットから外したとたんに、パートナーが仕留めますよ?と、可愛らしい笑顔を向けるが、その中にほんのりと黒さが含まれている。
「後で他の魔女さんと一緒に、お説教されてくださいね」
「―・・・・・・・・・っ。(こんな小娘に、私が負けるだなんてっ!!)」
 仲間が駆けつける間もなく、シーリングランスをくらいスキルを封じられてしまう。
「面倒なクラスのやつは何人か捕縛出来たが、ウィザードもいるんだよな」
 コンジュラーの傍から歌菜が離れたのを確認すると、羽純はしびれ粉で魔女の身体の自由を奪い、腹を1発殴り気絶させるとロープで簀巻きにする。
「監視よろしくね、羽純くん!」
「あぁ、こっちは任せろ」
「術者が気絶したってことは、フラワシも去ったようね」
 真の腕をぎゅっと掴み、カティヤはバーストダッシュで炎の中から脱出する。
「カティヤ、こっちにこい」
「ありがとう、羽純」
 さすがに相手もカティヤに傷を負わせないまま倒されてくれなかったため、メジャーヒールで火傷を治してもらう。
「フラワシは1体しか降霊出来ないといっても。慈悲のフラワシを降霊されたら最悪ね・・・」
「その時は、焔のフラワシも数も減るってことじゃないか?」
「まぁ、それはそうなんだけどね・・・」
 戦力を減らしてまで仲間を回復する手段をとるのか、まだ捕縛されていないコンジュラーを睨んだ。



 セレアナに背負われているセレンフィリティが苦しげに呻き、ゆっくりと目を開ける。
「―・・・・・・あれ、私・・・。あいつらに囲まれてたんじゃ・・・」
「やっと起きたわね。気分はどう?」
「最悪に決まってるじゃないの」
 あんな過去を思い出させられたんだから・・・という言葉だけ飲み込み、セレンフィリティはギュッとセレアナの背に顔を伏せる。
「もう降ろしていいかしら」
「えぇ、ありがとう」
 礼を言い、セレアナの背から降りる。
「このムカツク気分のお礼をたっぷりしてあげないとね・・・!」
 十天君がこの森で研究なんかしてなきゃ、こんな最悪な目に遭うこともなかった。
 全ての元凶はあいつらだと、憎々しげに言い放つ。
 土や草が焦げる嫌な匂いが漂い、それを辿ってゆくと・・・。
「その前に、アレを突破しなきゃいけなさそうよ」
 封神台を黒い炎が封神台を囲っている。
 どう突発するのかパートナーへ顔を向ける。
 炎の壁を無理やり通ったとしても、何事もなく進めるようなものではないかもしれない・・・、とレリウスたちと交戦中の大佐へ視線を移す。
「彼らの小型飛空艇に乗せてもらうしかないわね。私が交渉するわ」
 冷静さを欠いているセレンフィリティより、自分の方がよいだろうと彼らに近づき・・・。
「ねぇっ、封神台に入りたいんだけど。乗せてくれない!?」
 戦いに集中するあまり傍に寄っただけでは、こちらの存在に気づいてくれなさそうだと思い、叫ぶように呼びかける。
「はい、了解です!ハイラル、援護を頼みます」
 レリウスはセレアナたちを乗せると、スピードを限界まで上げる。
「行かせるものかっ」
 ラディウスを手にバーストダッシュでレリウスに迫り、封神台に入らせるものかと、彼の背を貫こうと切先を向けた。
「ちっ、また幻影か!」
「フッ・・・。どれが本物か、見分けられるか?」
 ブライトブロウガンの矢を放たれても臆する様子もなく、本物に掠りもしないぞ?と嘲笑う。
「確かに1人だと難しい〜かもねぇ。でも残念なことに、邪魔してあげるのが2人もいるんだよねぇ、これが♪」
 本体を探すなんて面倒だと、縁はダンスを踊るようにファイアヒールの銃弾を放つ。
「くっ・・・」
 少々分が悪いと思ったのか、レリウスたちを追うのをやめる。
「無事に通れるとでも思っているのか?」
 八卦型の台にセレアナたちを降ろしたレリウスが封神台から瞬間、大佐が口元をニヤリと笑わせる。
「誰1人、無傷で通してやる気はない」
 彼女たちをソリッド・フレイムの炎で囲み、氷のような冷徹な眼差しを向ける。
 病原体に感染した状態で、どこまで耐えられるかな?と彼女たちを見下ろした。