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十人十色に百花繚乱、恋の形は千差万別

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十人十色に百花繚乱、恋の形は千差万別
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第十篇:坂下 鹿次郎×エメネア・ゴアドー
 
(エメネアさんを誘って色々しでかすチャンス! きっと他の人と圧倒的に違う恋物語(?)ができる!)
 そんな思いを抱いて『本』の中に入った者がいる。名は坂下 鹿次郎(さかのした・しかじろう)
 まず初めに、二つの事実を語っておかなければなるまい。
 一つ、彼はゲーム脳である。
 一つ、彼は重度の巫女フェチである。
(巫女さん巫女さん巫女さん巫女さん巫女さんエメネアさん巫女さん巫女さん巫女さん巫女さんエメネアさんー!)
 凄まじく強烈な煩悩……否、強固な意志を持って『本』の中へと入った鹿次郎は、早速『本』の中の世界でエメネア・ゴアドー(えめねあ・ごあどー)と合流を果たすべく、『本』の中の世界を突き進んでいた。
「はっはー、つまりこれは魔法のゲームブックでござるな!」
 件の『本』について聞いた時、鹿次郎は開口一番にそう叫んでいた。
「本の中でバーゲンデートならお金も使い放題でござるよ!」
 そして、バーゲンをネタにエメネアを誘ったのだ。
 鹿次郎はエメネアを喜ばせたいので、デパートへバーゲンに赴くのは忘れない。
 そして、鹿次郎は重度の巫女フェチである。だから、意地でも巫女装束でお願いする。
 これは当然のことだ。何もおかしいことはない。
「何時もどおりなら巫女装束でしょうが!」
 嬉々として(鬼気として?)語る鹿次郎の迫力に押され、巫女装束でのデートに応じたエメネアは『本』の中の世界でデパートへとやって来ている筈だった。
「つまり巫女さんとお買い物デートイベント!」
 合流場所であるデパートに向かう道すがら、これから待つデートの時間を思い浮かべ、鹿次郎はつい大声で叫んでいた。突然の大声と、そして内容が内容なだけに、周囲の通行人が一斉に鹿次郎を振り返る。一瞬だけすべての通行人が鹿次郎を凝視した後、即座に全員が目を逸らす。
 そして、合流場所であるデパートの入口に着いた鹿次郎が待っていると、ほどなくしてエメネアがやってくる。
「お待たせしましたですぅ〜」
 約束どおりの巫女装束。それを見て、鹿次郎は自然とガッツポーズする。
 それからの二人のデートはどうだったか?
 結論から言えば、ごく普通の楽しいデートであり、笑顔の絶えない時間であった。
 あんなことを言っていた鹿次郎だが、おちゃらけていても、大事なところだけは真面目になって、彼はエメネアに告げたのだ。
「拙者の武士道に誓って如何な時でも味方になるでござるよ」
 再びピンチになるような事があればどんな立場にあっても助けに行く事をこの機会に誓っておきたい――それも、彼が今回、彼女をデートに誘った理由であった。
 その甲斐あってか、良い雰囲気になった瞬間、鹿次郎は反射的に叫んでいた。
「拙者と結婚してくださいーっ!」
 どんな流れでも最終的には勢いだけで求婚する――直ぐ求婚する傾向があるのは彼の癖だった。
 いつか彼の求婚が実を結ばんことを。