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十人十色に百花繚乱、恋の形は千差万別

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十人十色に百花繚乱、恋の形は千差万別
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第九篇:風森 巽×フリューネ・ロスヴァイセ

 ――悲恋な物語も必要だと思うんだ。特撮物の最終回で主人公とヒロインが別離しなければならないパターンとか。
 そんな意図を持って『本』に入った男がいる。
 その男の名は風森 巽(かぜもり・たつみ)。何を隠そう、仮面ツァンダーソークー1その人である。
 ――この人の為なら命を賭けられるっていう位の恋愛に憧れる。まぁ、独り善がりなんだけどね、こういうのって!
 明確な意図に、密かな憧れを隠して仮面ツァンダーソークー1――巽は『本』の中へと入った。
 そして、巽の恋物語は紡がれる――。
 時は近未来。
 地球を守る為、幾多の激戦を潜り抜けてきた仮面ツァンダーソークー1こと風森巽の体は変身する事も難しいほど傷つき、倒れてしまった。
 そんな中、地球侵略を目論む異星人が全世界への攻撃を開始。それを知った巽は、看病をしていたフリューネ・ロスヴァイセ(ふりゅーね・ろすう゛ぁいせ)の目を盗み、屋上へ向うが変身直前で見つかってしまう。
「巽くん、どうして病院を抜け出したりしたの? そんな身体でこれ以上戦えば、キミの身体は――」
 悲痛な顔で告げるフリューネ。だが、巽は彼女に背を向けると、侵略異星人が待つ戦場へと歩き出そうとする。
「どうして! どうしてそんなに無茶をするの! これ以上、キミが傷ついていくのを……私……見てられない……」
 逃げ出した事を問われ自身の正体を明かした巽は引き止めようとするフリューネにキスをし、驚いた隙に変身して飛び立つ。
「我は……我はね……人間じゃないんだ。遠い宇宙の果てから惑星探査の為にやってきた改造人間……仮面ツァンダーソークー1なんだ」
 その事実に絶句するフリューネ。だが、巽は口を閉ざすことなく語り続ける。
「地球防衛隊員達がピンチなんだ」
 そして、フリューネに別れを告げた巽は、彼女に今度こそ背を向けると、戦場に向けて歩き出す。
「君に会えて良かった……変っ身!トォッ!」
 かくして巽は敵宇宙要塞中枢を破壊したものの、敵宇宙要塞は地球、それもフリューネのいる街へと落下し始めた。
 最後のエネルギーを使い、動力炉を自爆させ要塞を破壊する巽。
「ああ、綺麗な蒼空だ……君の好きな……君が飛ぶこの蒼空で、風になって護るよ」
 夜明けの空に覆った暗雲を切り裂く様に流れる光の中、一つだけ空へと昇る光があった。
 彼が命懸けで護ったこの蒼空がいつまでも平和な空であらんことを。