リアクション
《12・おわる。そして、》
時刻はもう17時をまわっていたが。
中央ステージではまだCY@Nのライブが続いている。
いまはルカルカとのデュエットも行なわれていて、観客も最高潮に盛り上がっていた。
「やっぱりCY@Nさんはすごいな。ボクなんかまだまだだよ」
「確かに。先ほどのすばやい場の切り替え方、常にプロ意識を持っているんでしょうね」
「どんな道も……簡単にはいかないということでしょうか……」
そんな観客のなかに、花音、リュート、公豹の姿がある。
寂しげながら、たしかな目標も抱く花音であった。
すこし離れたベンチでは、
「えっと、元気出して。次の機会きっとあるよ。その時はまた、わたし応援するよ!」
「うん! ありがとうねっ!」
マピカを励ますノーンと、
「頑張ったな。とても良かった。たとえ今回が駄目だとしても、あんずはきっとアイドルになれる。これからだぞ」
「そうですね。もうすこし、地道にがんばってみるです」
レインボージュースであんずをねぎらう蒼也の姿があった。
しかし励まされるふたりとて、これで諦めたわけではないようで。決意を新たに次の目標を見定めているようだった。
◇◇◇
そして。
完全に日が沈みそろそろ参加者も全員散開していくなか。
ロケバスの近くに、ある一団があった。
まず審査員として参加していたルカルカとダリルが、救済措置として一位以外の上位者にもS@MPとして芸能プロへの紹介状を書いてあげていたのである。この件は大会側にも了承済みのことで。
該当者のベアトリーチェ、セレンフィリティ、花京院秋羽、そして西川亜美は戸惑いながらもそれを受け取っていた。
さらにその隣では、青井社長が優勝者のユリと話をしている。
「では、詳しい話はまた後日にしよう。遅くなってしまったが、おめでとう」
「あ、ははははは、はい」
常に緊張し通しだったユリだったが、
ララ達が「これで家賃の心配がなくなったのだよ!」と、いつもの調子で騒いでいるのを見て。ようやく笑みをこぼしかけて。
「あ……」
視界の隅に、姫乃が立っていた。
ついさっき、彼女が途中退場した旨はきかされていたので。
なんと声をかければいいかと悩んでいる間に、姫乃は背を向けていってしまう。
が、彼女は一度だけ振り返って、
「 」
なにかを言葉に出した。
ララ達の声にまぎれてなんと言ったのか耳に届かなかったけれど、
ユリは笑って、返事をかえすのだった。
「ありがとう」
おしまい
こんにちは。マスターの雪本葉月です。
突然ですが、最終回です。
何の話かと言うと、私が担当できるのは今回のシナリオで最後となりました。
かなりいきなりなのですが、まあ色々と事情がありまして。
さて。改めて今回の話ですが。
テーマは『夢』です。
最初に言っておきますと、どういう基準で優勝者を選んだかは秘密です。オーディションとはそういうものですので。
それから、参加したゲストキャラクター全員にも優勝の可能性はありました。もちろんシド君やタケル君もです。それでも優勝者がひとりきり、というシビアな形にしたのは私個人の本作の目的として『運や実力、努力が及ばずに夢破れてしまうキャラクターを書く』というものがありました。
べつに嫌な意味合いを込めたわけでなく、ただ普通の出来事として書きました。
それぞれどんな事情や目的があろうとも、夢に届かないことは当然あります。そもそも必死な努力をして、誰かと競い合ったうえで勝ち取ったものだからこそ意味がある、という見解もあるのではないでしょうか。
しかしべつに、夢破れたキャラクターたちもそれで人生がおしまいになったわけではなく。その後の人生でまたべつの夢が生まれ、それを叶えることができる可能性もあるわけです。もちろんそうなるためには、色々と紆余曲折があるでしょうけれど。
ちなみに裏テーマに『七つの大罪』というのもありました。
登場していたゲストキャラ七人に、それぞれあてはまる罪があったのです。
もっとも具体的に過去話を聞きたがるPCがいらっしゃらなかったので、結局ほとんど設定のみになってしまいましたが。まあこんなこともありますよね。
解説だけしておくと、
マピカ『暴食』・姫乃『色欲』・シド『高慢』・あんず『強欲』・リンリー『嫉妬』・タケル『憤怒』・西川亜美『怠惰』
という感じでした。
もう一度、さて。
私のシナリオはここまでとなりますが。
これまで私のつたないシナリオに参加してくださった方々、ありがとうございました。
ほかにもシナリオ内で登場させたNPCの生徒や先生。ゲストキャラの幻影少女、少年A、ヤンデレ娘、ウッチャリ君、凄腕のおばあちゃんなどなど……。いろいろ個性的なキャラクターや、A01プロの今後の展開が書けないのが残念です。
ああ、といっても私の手が届かなくとも、A01プロは芸能事務所として活動が続いていることになりますので安心してください。
長くなりましたが、そろそろおしまいに致しましょう。
またいつか、どこかでお会いできれば幸いです。
それでは。