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リアクション
第七幕 スクールファイター!〜女の戦い〜
ドガアアアアアアアアアアアアン!!
徐々に仮面回収&破壊の連絡を受け
非不未予異無亡病 近遠(ひふみよいむなや・このとお)が安堵の表情を見せた瞬間
それを覆すような轟音が、目の前の百合園の校舎から鳴り響き、急いで近くまで足を進める。
その先には、校門から先に入れず逡巡している霧丘 陽(きりおか・よう)の姿があった。
「どうしよう…フィリスが仮面をつけて百合女学院に行っちゃった…!
男子禁制だから僕には何もできないし…助けてください!」
事態を察し、新たな災いの種に溜息をつきながら、近遠は通信の準備をする。
「大丈夫です、ちょうど中も仮面の騒ぎの最中なので…ところで一人なんですか?」
「仲間が止めに行ってくれてます!でも彼女一人だけで……大丈夫かな」
「おお…!?どうやら戻ってきた連中がいるみてぇだな」
「誰々?仮面!?」
人気のいない物陰から、轟音の主を眺めながらジガン・シールダーズ(じがん・しーるだーず)が楽しそうに呟いた。
負けじと質問するエメト・アキシオン(えめと・あきしおん)にニヤリと笑って会話を続ける。
「ああ。俺達がここに入るために仮面に誘導させて、うまく被らせた連中いるだろ?
どうやた戻ってきたらしいぜ。この様子じゃ、俺達の様にドサクサにまぎれる連中もいるだろうな?
くくく麗しき花園とやらが賑やかになったもんだぜマッタク!」
そして轟音と土煙の中
仮面の虜となった3人とそれを阻止する少女が姿を現した。
「く……3対1、か……」
ニケ・ファインタック(にけ・ふぁいんたっく)は自らの置かれた状況に苦笑いする。
もともと上品な性質じゃないし、大暴れすることは好きだ。
だが自らそれを望むのと、巻き込まれるのとでは話が違う。
ままならない衝動に大声で叫びたくなるが、それをこらえて仮面姿のパートナーに呼びかける。
「メアリー!メアリーったら!貴方の主は誰ですか!
私を放って何をしようっていうの、そんなの許されないわよ!」
ニケの言葉にパートナーメアリー・ノイジー(めありー・のいじー)は仮面によって顕現した裏の人格で答える。
「くくく、そういうさ…絶望に歪んだ目がいいんだよねぇ。
本当ならこういう通り魔的なのは好みじゃねえんだけどな」
「く!!」
完全に暴走に等しいメアリーの人格を呼び覚まそうとするニケの行動は、新たな攻撃に遮られる。
その攻撃の主フィリス・ボネット(ふぃりす・ぼねっと)が笑いながらニケに歩み寄った。
「なんだか面倒なのがついてきちまったな。取り込み中みたいだけど辛い事を解決したいなら簡単さ。
あんたも仮面をつければいい、オレの手下になりゃ何も考えずに一緒にいられるぜ?」
そう言って、傍らの仲間装飾用魔鎧 セリカ(そうしょくようまがい・せりか)に声をかけた。
「セリカも好きに動けよ。ここに戻りたいって言うからついて来てやったんだぜ?
なんでお前まで仮面つけてんだか知らないけどさ。やる事は一緒だろ……?」
フィリスの言葉にセリカが顔を上げる、その表情は仮面で読めないが、漏れる声が全てを物語る様だった。
「マスターがいないんです。マスターは誰かにきっと襲われているんです。
マスターに…危害を及ぼすものは…全て死ねばいい…!あなたも…あなたも!」
「もう!揃いも揃って会話が噛み合ってないし!」
セリカの突然の攻撃を回避し
それに触発されたメアリー達の攻撃を必死で回避しながら、苛立ちを募らせるニケ。
しかし彼らのマスターはこの男子禁制の園に入れず、外で逡巡しているわけで……。
「アッハッハッハ!あの魔鎧の娘、いい具合にイカレちまってるなぁ!
手に入れた仮面、目の前に放ったら正直に被っちまうしいいキャラしてるぜ!」
「おかげで騒ぎに紛れてすんなり入れたんだよね?ますたー」
セリカの様子を手を叩いて面白がるジガンとエメト。
「混乱は混乱を招いてより楽しみは増す…って寸法さ。さて、次の騒ぎは…とうした?」
事態を見納めて去ろうとするジガンだったが
ふと別方向を見たままの仲間ザムド・ヒュッケバイン(ざむど・ひゅっけばいん)の様子を不思議に思い、声をかけた。
彼らにしかわからない言語で、ザムドが一点を指す。
「遠……影……見」
「ああ?なんだぁありゃあ?」
そんな彼らが見あげる上空……。
【小型飛空艇オイレ】に乗った白泉 条一(しらいずみ・じょういち)がマスターの乙川 七ッ音(おとかわ・なつね)に連絡を取っていた。
「……おい、見つけたぞ!セリカだ。予想通り百合園に戻ったみたいだな。七ッ音、そっちは?」
『間もなく着きます。なんか声が不機嫌ですよ条一?具合でも悪いんですか?』
「逆だよ、正直暴れたい、こんな騒ぎは早々ないからな!でも降りるわけには……」
『降りればいいじゃないですか?その為に服を選んであげたんですよ?』
「こんな女装姿でなんか入れるか!846のお前がいるだけで目立つんだぞ!」
『残念……まぁいいですわ、では到着です!』
彼女の通信が終わるとともに。
ニケとメアリー達の間に矢の雨が降り注ぎ、彼らの距離を引き離した。
その間に狼や鳥等の動物とともに、トラに乗った七ッ音が割り込んできた。
「あなたは!?」
突然の訪問者に驚くニケに七ッ音は微笑んで名乗りを上げる。
「乙川 七ッ音、846プロとして可愛い後輩を放っておけません!
セリカさん達を止めるため、協力いたしますわ!」
かくして助っ人も加わる中、戦闘が再開された。
戦闘性能として見るとフィリス達仮面側より決定力に欠けるニケ達二人が苦戦は明白
それは本人達も自覚しているので何とか【仮面の破壊】のみに目的を集中させている。
加えてニケのパートナーに対する想いや七ッ音の優しさも苦戦の要因なのだが
逆にそれがあるからこそ負ける訳には行かない…という想いもあり、戦闘が長引く要因となる
条一こそ加わって思い切り応戦したいのだが、戦闘環境や自分の事情(主に外見)もあり
飛行艇で上空から氷術などでフォローするしかないのだった。
「くっそ…面倒だな…。何か決め手はないのかよ!」
暴れたい苛立ちを抑えながら条一は下の戦闘状況を観察する。
「とりあえず、目的のセリカ位何とかしないと……ん?」
観察しながら、条一はセリカの口から漏れている言葉の違和感に気がついた。
衝動のままに暴れながら、さっきからセリカは苦悶の声を漏らしている。
「…マスターがいない…マスターはどこ…?死ね…しね…シネ…!
マスターに…危害を及ぼすものは…全て死ねばいい…!」
「…あいつのマスターって、さっき門で立ち往生してた奴だよな?
要は見失ってパニクってるのか……だったら!」
僅かな光明を見出し、マスターを信じて条一は飛行艇を引き返させた。
一方、戦闘の結末を楽しみに見ていたジガンも長引く戦いに物影からじれていた。
「おいおいおい、もうちょっと楽しくできると思ったのにダラダラしやがって
俺はこんなの望んじゃいねぇぞ!」
仮面側が勝って、止めてる連中を取り込めば面白くなる
逆に虎女が勝ったとしても勝利を確信した時点で混乱させてやろう…と思ったのに
これじゃ長居をしている理由にもならない。
「おいエメト、お前うまい事影から奇襲してこいよ」
「は〜い!ボクますた〜の為なら死ねるよ〜」
「そりゃ結構、だがオレ巻き込むのだけはカンベンな?」
じれたジガンに命令され、エメトが流れに手を加えるべく戦場に飛び込む。
だが、それこそ相性が悪いことに彼らは気がつかなかったのが災いとなる。
通常の戦闘中の人間ならエメトの隠密行動は悟られなかったかもしれない
だが七ッ音の動物達はその感覚で新たな参戦者を発見したのだ。
決め手とばかりに【その身を蝕む狂気】を放とうとしていたフィリスが咄嗟に
その動物の意識の先……エメトそ存在に気が付き、彼女にそれを放ったのだ。
一瞬にして最愛の者が襲い掛かるという最悪の幻覚がエメトを襲う。
通常ならそれで恐怖に混乱し、動けなくなり隙が生まれる……のだが
「うわぁ!?ますた〜が殺しにくるよ☆
殺して殺して!ボクもました〜殺して一緒に死ぬ〜!!」
「は?あの馬鹿!?」
……ヤンデレ気味なエメトには逆効果だったらしい。
そのまま恍惚の表情を浮かべ、混乱のままフィリスの方へ飛び出し、その場にいる人間を混乱させる。
「く…?誰こいつ!このっ!」
対応しきれないまま苦し紛れに出したフィリスのRPGが一帯に向けて放たれた!
イコンすら破壊できる暴力的な一撃に粉塵があがり、誰もが視界不明瞭になる。
自ら起こした混乱にまぎれ、凄まじい爆煙から逃れようとフィリスとセリカが上空へとびあがった。
「【強化光翼】のスピードなら……何!?」
そのまま飛行艇の三倍のスピードを出せる自らのスキルで離脱を図ろうとしたフィリスだが
そんな彼に飛行能力さえ奪う重力が襲い掛かった!
「【奈落の鉄鎖】だと!?セリカ!」
落下しながらフィリスは同じ仮面の虜のパートナーに呼びかける。
すぐに魔法の発動主を発見し、上空の小型飛行艇へセリカが跳躍した!
だがそんな彼女も、思わぬ探し人の声に動作動きが止まることになる。
「セリカ!僕はここにいる!もうやめるんだ!」
「!?マス…ター?……??」
そこには無理矢理、条一とともに小型飛行艇に乗っている陽の姿があった。
求めていたもの、そして混乱と破壊の衝動の自分の理由を見つけ、セリカが混乱する
…予想通りの結果に条一が爆煙立ち上る下に向かって叫ぶ!
「七ッ音!今だ!!」
その声とともに煙の中からトラに乗った七ッ音が姿を現す。
すでに狙いを定めてある【ボウガン】からセリカの仮面に向けて矢が発射され
高らかな音とともに仮面が割れた
「……マスター!見つけた!」
「よかった!悪いけどフィリスを頼む!」
「……!! はい!!」
理性を取り戻し、すぐに事態を把握したのは長年の信頼からか。
我に返ったセリカが戦友の七ッ音、そして共にいるニケに【ディフェンスシフト】を発動させた。
「防御があがった!?…一か八か!これで!」
状況を把握したニケがメアリーに、七ッ音の獣がフィリスに飛び込んでいく!
メアリー達も攻撃を繰り出すが、上昇した防御に守られ、ものともせずそれぞれが進む!
「あたれぇぇぇぇぇ!」
射程距離にたどり着き、ニケの【シャープシューター】により正確に狙い定めた銃が火を吹いた!
援護をする動物達の間を縫って、2発の銃弾がメアリーの、そしてフィリスの仮面を弾き飛ばすのと同時に
再びフィリスから放たれたRPGが爆発を起こし、あたりが爆煙に包まれた。
「……やれやれ、派手なのはいいんだけどよ。流石の俺も引きそうだわ。
ザムド!そっちの仮面は?」
爆発の粉塵のなか、うんざりした顔でジガンはザムド・ヒュッケバイン(ざむど・ひゅっけばいん)に呼びかけた。
それぞれの足元には倒れているフィリスとメアリーが、ザムドの肩には気絶しているエメトの姿があった。
フィリスの側にある砕かれた仮面を見て、ザムドが答えた。
「面…破…」
「だよな〜。仕方ない、こっちは無事だからとっとと拾って別の奴……!?」
逆に無傷のメアリーの仮面を拾おうとしたジガンは、急にメアリーの目が見開いた事に驚き
本能的に飛びのく、今頭のあった位置にはメアリーの【バトルアックス】が通過していた。
「【破滅の刃】!?しまっ!!」
ランダムに敵2体に攻撃を行うスキル!悪運ゆえか自分は難を逃れたが……!
「野郎……やりやがった!」
ザムド、そしてそれぞれが集めた仮面はそうも行かず、
ザムドはダメージを、そして全ての仮面は破壊されていた。
それでも比較的被害が軽かったのは、メアリーが負っていたダメージ故か。
「こいつ、仮面がなくてもイカレてるじゃねぇか!」
常時ならそこに愉悦を、今なら殺意を目に宿らせ、ジガンは彼女を睨み付ける。
だが仮面奪取のみに限られていた彼らのタイムリミットは迫っていた
すぐ側でパートナーらしき女の声も聞こえる
「面…無…完…」
「……ちっ」
ザムドの言葉に促され、ジガンが姿を消すのと。ニケが背後からメアリーに飛びつくのが同時だった。
すぐさまニケは右頭部の半壊した機器にドライバーを突っ込みガチャガチャ弄り、メアリーを通常出力に戻す。
おとなしくなったメアリーに抱きつき、ニケは安堵し、目に涙が流れた
「…あなたが暴走しない方法。…早く、見つけないと、ですね」
その姿を虎の上から眺める七ッ音、傍らにはフィリスを見つけて抱き上げるセリカがいた。
そして彼女達に逆転の布石を作った主(もっとも本人は暴れ足りないと不服だが)の条一が上空から声をかける
「助けられる者は助けたんだ、撤退しようぜ。こんな騒ぎ見つかったら大事だからな」
「撤退するぜ。やる事はもう楽しんだからな」
一方物陰で集めた仮面を台無しにされ、興ざめしたジガンも帰る事に決めた。。
しかし因果か何か…ここにきて彼らを探していた主がようやく辿り着き、声をかける事になる。
「ようやくみつけました…こんなところにいたんですね?ジガン」
「げ!?ノウェム!?」
顔面蒼白で振り向いたジガンの前に立つ声の主ノウェム・グラント(のうぇむ・ぐらんと)は
これでもかという程優しい声で彼の肩に手を置き、話を続ける。
……ちなみに置かれたジガンの肩はメキメキと音を立てていたのは言うまでもない。
「迷いに迷ってましたが。一番派手な音を聞きつけたのが正解でしたね。
さ、気は済んだらしいので帰りましょうか?お話はその後で……ね?」
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