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リアクション
「セレンは細かい仕事は無理でしょ。粗大ゴミを大雑把に甲板に出してね。分別はこっちでやるから」
パートナーの性格を見抜き、セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)へとそう指示をしたのは、セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)だ。
「……ぐぬぬ。……分かったわ」
キッパリと断言されたことに不満を持ちつつも、事実であることに間違いはないため、反論できず、セレンフィリティは彼女の指示通り、倉庫へと足を踏み入れた。
倉庫の中には、航行中に使用する保存食から誰でもが使えそうな武具の類、更に先の件にて回収した相手の船に積まれていたものでも宝物とは呼べないような物が雑多に詰め込まれている。
「何処から手をつければいいのよ」
ぼやきつつも手近にあった木箱から中身を確認していくことにして、早速セレンフィリティは蓋を開けた。
そうして少し時間の経過した頃、倉庫の外へと出された必要ない物をセレアナが可燃物、不燃物などゴミの種別ごとに分別していた。
「これは売れるかしら?」
中にはリサイクルショップに持っていけば、はした金程度ではあるだろうが売れそうな物もあり、そういった物は破棄する物とはまた別に分けておく。
「運び出してしまっていいゴミがあれば、運び出すよ」
分けている最中のセレアナへと声を掛けてきたのは、如月 正悟(きさらぎ・しょうご)だ。
広い船内で、何処か1つの場所の掃除を任せてと言えるほど把握は出来ていない彼は、掃除する皆の間を回り、出来ることを手伝っている。
「じゃあ、そこのいっぱいになった木箱をお願いするわ。中は、傷み始めてる保存食なの。後で岸で他の燃えるものと燃やそうと思うのよ」
「この木箱だね」
セレアナの指した木箱を手にすれば、正悟は軽々とそれを持ち上げて、運び出していく。
その様子を見送って、彼女はまた、分別作業に戻った。
*
一方、食堂と厨房では、早く終わらせて、パーティーの準備に取り掛からないといけないため、多くの学生たちが集まっていた。
「ここっていつから掃除してないの?」
杜守 三月(ともり・みつき)が訊ねる。
「いや、床の掃除は気をつけているんだがな……」
給仕を手伝っていたヴァイス・アイトラー(う゛ぁいす・あいとらー)が、そう答えるだけあって、床や厨房の作業台の上、食堂のテーブルや椅子などには目立つ汚れはない。
ただ、日頃余り手をつけていない天井や照明器具、棚の上などの埃から落とす必要があった。
「上からの埃が落ちて来るとかマジ勘弁」
料理に埃が入っては嫌だとばかりに、手分けして、ハタキを手にし、掃除を開始する。
わたげうさぎ柄のエプロンと三角巾を付けたヴァーナーはハタキを手に、上の方から埃を落としていた。
「♪〜」
歌を口ずさみながら、上機嫌で掃除を進めていく。
メイド機晶姫であるメイドロボを5体引き連れてきた朝野 未沙(あさの・みさ)も上質なメイド服に身を包み、高級はたきで埃を落とす。
メイドロボたちも手分けをして、上から順に掃除を始めていた。厨房に添えつけられた換気扇の汚れを落として磨き上げ、照明器具の上に積もった埃もはたきで落とした後、ピカピカになるよう拭いていく。
彼女らが床へと落とした埃は、ハタキを終えたヴァーナーが箒で塵取りに集めていった。
床を掃き終わると、雑巾を手にした美羽やベアトリーチェ、雅羅がまずは壁から拭き始める。
壁が終われば、次は床の拭き掃除だ。
ヴァーナーが拭きやすいようにとモップを用意すると、皆も雑巾を一先ず片付けて、モップへと持ち替える。
重たいテーブルを三月が動かすと、その下を杜守 柚(ともり・ゆず)が雅羅を誘って、拭いた。
「くっ、やはりまだまだ未熟! 窓のっ、窓の妙なくもりがとれん! 何故だ!」
傍らで、窓拭きをしていたセリカ・エストレア(せりか・えすとれあ)が肩を落としていた。
「なに落ち込んでんだ?」
パートナーの落ち込み様にヴァイスが声を掛ける。
「拭いても汚れが落ちるどころか広がってしまう……俺の力はこの程度の汚れにすら敵わないのか……」
ヴァイスの身のこなしが幼い頃から積み重ねた家事・雑用の賜物と察してから、セリカ自身も彼の指導の下、励んでいたのだが、その励みを打ち砕くかのように、窓ガラスの曇りに苦戦していたのだ。
「あー、オレが持って来た水溶液いれたスプレーあったろ? あれそこにピンポイントでつかって汚れ浮かせてから拭けよ」
セリカの落ち込み様を理解したヴァイスは、持参した荷物の中に窓拭き用の洗剤があることを告げる。
「あ、上から下って感じで汚れを窓の下におろす感じで拭くんだぞ」
一緒に、掃除の仕方のアドバイスをしてから、自分の持ち場に戻っていく。
「おお、取れた! ヴァイス、やったぞ!」
スプレーを取り出したセリカは、苦戦していた曇りが取れていくと、喜びに、嬉しそうな声を上げていた。
「じゃましちゃメーッ! ほら、まじめにやるですよー!」
掃除に対してやる気のない、ブラッドレイ海賊団であった団員たちを見つけたヴァーナーは、彼らに対してモップの柄を突きつけると、掃除を促していく。
彼らが飽きないよう、ヴァーナーは時折声を掛けた。
人手が足りないと聞き、駆りだされて来たエリザロッテ・フィアーネ(えりざろって・ふぃあーね)も食堂の広い床を磨くべく、雑巾掛けをする。
ところどころ、食べかすが落ちたまま拾われずにこびりついたまま乾燥してしまったのか、頑固な汚れにぶち当たる。
それでも掃除用具を駆使して汚れを落とし、更に磨き上げることで、一箇所一箇所確実に、綺麗にしていった。
テーブルや椅子なども美羽やベアトリーチェ、さらにはメイドロボたちがピカピカに磨き上げていくと、この後、パーティーの準備のために使用するのも躊躇うほど、食堂と厨房は輝いて見える。
「これで、パーティーの準備ができますね〜」
すっかり仲良くなった団員たちに退かしたテーブルや椅子の位置をパーティーのし易いよう運び直してもらいながら、ヴァーナーはすっかりピカピカになった食堂と厨房の様子に、ほっと一息ついたのだった。
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