First Previous |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
Next Last
リアクション
●第3章 Let’s打ち上げパーティー
掃除を済ませた者たちや、パーティーの話を聞きつけて集まった者たちなど、多くの学生や黒髭海賊団の団員たちが、食堂へと集まってくる。
「勝利おめでとう。『シャーウッドの森』空賊団から差し入れに来たわよ」
告げながら、リネン・エルフト(りねん・えるふと)が、黒髭でもある美緒を始め、元ブラッドレイ海賊団の部隊長であったアーダルベルトへとジュースや酒など飲み物を差し入れた。
今日訪れたのは『シャーウッドの森』空賊団として来たのだと、やや口調を強めている。
「ありがとうございます。皆様も喜びますわ」
美緒が喜んで飲み物を受け取ると、ラナが代わりに料理などの並ぶテーブルの方へと向かう。
「差し入れしたくらいだ。何か聞きたいことでも?」
傍で様子を見ていたアーダルベルトがリネンへと訊ねた。
「聞きたいのはブラッドレイの長……エヴァンジェリンについてよ。知ってること全て」
「知ってることねえ。特に踏み入ったことを話すヤツではなかったからな。俺も他2人も聞いているのは同じことだろうと思う」
そう前置きをしてから、アーダルベルトが話し出す。
海賊団を纏め上げる前は空賊をしていたこと。その頃のことはあまり口にしなかったため誰も知らないこと。
彼女が纏め上げたいくつかの海賊団の船長――各部隊長3人は、纏められる際、彼女と対峙し敗れていることから、彼らより戦闘力は上であること、など。
「そんなところかね」
話し終えるとリネンは考え事をしているのか、やや渋面であった。
「先の件の彼女の捨て台詞から、フリューネに因縁をもっているなら、こちらに来る可能性も高いから……その時は私たちの仕事」
考えた後にリネンがぽつりと話したのは、エヴァンジェリンが再び、空賊としてタシガンの空に戻ってくるかもしれない可能性だった。
そして、その時、彼女を相手にするのは、タシガンにて空賊団として活動しているリネンたちであり、今この場にいる黒髭海賊団ではない。
暗に、縄張りの線引きを示すと、ラナへと一度視線を送り、その後、美緒を、そしてその奥の“黒髭”を見つめて、再び口を開いた。
「シマを荒らしにくるなら……正式に契約した以上は泉、ラナ……あなたたちにも遠慮はしないから」
「……リネン。らしくないわよ?」
彼女の様子に、同行していたヘイリー・ウェイク(へいりー・うぇいく)が声を掛けたが、リネンはそのまま踵を返して、場を後にする。
「悪いわね……ちょっと最近カリカリしててね」
パートナーをフォローするように、ヘイリーは美緒たちへと告げた。
「カリカリ、ですか。理由をお聞きしても構わないでしょうか?」
「理由? アンタや黒髭がちょっかい出してきて、フリューネもっていっちゃうんじゃないかって心配してるのよ……馬鹿馬鹿しいけど、本人大真面目よ」
何か彼女に対して、仕出かしてしまっただろうかと、眉を寄せて訊ねる美緒に、ヘイリーはため息交じりに応えた。
けれどもすぐさま苦笑すれば、
「ま、忘れて忘れて……乾杯しましょ!」
告げて、持ってきた差し入れの中からすぐ飲めるよう避けておいた酒やジュースをそれぞれのグラスに注いだ。
給仕中の元ブラッドレイ海賊団第一部隊長・エセルバートを足止めたフェイミィ・オルトリンデ(ふぇいみぃ・おるとりんで)もまた、エヴァンジェリンについて、彼に訊ねる。
「銀髪でツインテール、詳しい年齢は聞いたことないが20代だとは言ってましたね。見た目は歳相応だと思いますが。性格は、まあ……仕切り屋でしたね。まあ、可愛いものが好きなようで、少女のようなところもありましたけれど」
手を焼かされましたよ、と笑ってエセルバートは答える。
「お嬢が言い残した言葉……フリューネ、といいましたか。聞き慣れない名前だったのですが、こちらにお世話になり出してから聞いてみたのですが、空賊の方……だとか? お嬢の、空賊だった頃に何かしらあったのかもしれませんが、何も聞いてなかったもので」
「捨て台詞はなーんか違和感感じるけどな……」
フェイミィはぽつりと呟きつつ、他の2人や元団員たちにも話を聞くと、エセルバートを解放した。
「美緒さんと雅羅さんは前の方に出てきてくれるかな?」
想詠 夢悠(おもなが・ゆめちか)が、美緒と雅羅の2人を呼んだ。
「……何でしょう?」
「思いつかないけれど……」
2人は何事かと不思議そうにしながら、夢悠と彼のパートナーの想詠 瑠兎子(おもなが・るうね)の傍へと歩いていく。
他の参加者には、夢悠たちが事前に話したため、不思議そうな美緒たちを見守っていた。
「先の件の打ち上げパーティーということもあって、今日は2人を表彰したいと思うんだ」
2人が傍に来ると、夢悠がそう説明する。
そして、用意していた表彰状を目の前に構えると、美緒と向き合った。
「表彰状……泉美緒殿……あなたは“黒髭”海賊団のキャプテンとして、パラミタの海の平和に貢献されました。今後一層のご活躍をお祈りし、その功績を表彰いたします。……“黒髭”海賊団関係者一同」
そう、文面を読み上げれば、表彰状の上下を返して、美緒へと差し出す。
「ありがとうございますわ」
突然のことにまだ少し驚いたままの美緒は、差し出された表彰状を慌てて受け取って、微笑んだ。
「雅羅ちゃんにはワタシからね」
告げて、瑠兎子が表彰状を構える。
「表彰状……雅羅・サンダース三世殿……あなたは人一倍トラブルに巻き込まれながらも、“黒髭”空賊団、ブラッドレイ海賊団を相手に戦い抜かれました。今後一層のご活躍をお祈りし、その功績を表彰いたします。……“黒髭”海賊団関係者一同」
読み上げた瑠兎子が雅羅へと表彰状を差し出す。
「な、何だか恥ずかしいわね。でも……ありがとう」
雅羅が表彰状を受け取ると、瑠兎子は手を広げて、雅羅へと抱きつこうとする。
「えぇっ!?」
驚き、後ずさる雅羅に、瑠兎子は、
「更に賞品として、ワタシのキスを贈呈いたしま……」
「セクハラ禁止!」
夢悠に言葉を遮られた上に、頭を叩かれるのであった。
First Previous |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
Next Last