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リアクション
●第2章 パーティーの準備と、甲板ホッケー!?
厨房と食堂の掃除が終わると、手分けして掃除をしていた面々は、自分たちへと付いた汚れを払ってから、パーティーの準備を始め出す。
「立食形式なら、大皿に盛った料理から各自小皿に取って食すのが普通ですから、それ用のメニューも考えないと……」
食べやすい料理の方がいいだろう、と考えた冬山 小夜子(ふゆやま・さよこ)は、美緒やラナに意見を求めるため、船長室へと向かった。
「美緒さんとラナさん、どんなメニューにしますか?」
「サラダは好みもありますから、2〜3種くらいあった方が良いかもしれませんわ。あと、揚げ物なども……」
「皆さん、清掃でしっかり動いてますから、お腹も減っているでしょうし、たくさんのお肉料理や炒飯のような取り分けやすいご飯ものもあった方が良いでしょうね」
小夜子の問いかけに、美緒とラナが少し考えた後に、答える。
「……サラダに、揚げ物。お肉料理と、ご飯もの……。あとはデザートぐらいでしょうか。参考になりました、ありがとうございます」
ぺこりと頭を下げて、小夜子は船長室から出て行くと、厨房へと引き返す。
厨房では既に、柚たちが、料理に取り掛かっていた。
「雅羅ちゃんは料理得意ですか?」
三月が運んでくれる野菜を洗いながら、柚は雅羅へと訊ねる。
「料理は……そうね。家で普通に食べるものくらいであれば、難なく作れるわよ?」
パラミタに来る前にも1人暮らしはしていたから、と苦笑いを浮かべた彼女は、洗い終えた野菜を、まずは時間のかかる煮込み系の料理を作るべく、包丁を手に、皮を剥き始めた。
「それなら私と一緒ですね。私も得意というか、いつも作ってるので慣れてますよ」
柚も応えてから、それに続く。
「雅羅の料理か。楽しみにしてるね」
切った食材を入れやすい位置にザルを用意しながら、三月が告げる。
「そう言われたからには張り切って作らないとね」
雅羅は笑い返して、皮むきを続けた。
エプロンを身に着けた小夜子も、彼女らに続いて調理を始める。
傍らで、ヴァイスは花や小さな飾りを置くことで、テーブルを飾り付けた。
更にホットプレートなどを用意し、機械部分は飾りで隠していく。
「ホットプレート?」
出来た料理を運んできた三月が気付いて、声を掛ける。
「ああ、寒い時期だから、温かい料理も多いだろ?」
温かい料理を温かいまま、皆へと提供できるように、とヴァイスがホットプレートを用意した理由を告げた。
「なるほど。それなら、冷めなくていいね」
理由を聞き、納得した三月が頷くと、ヴァイスは別のテーブルも飾ってくるとその場を離れる。
三月はそれを見送って、持ってきた料理をそのホットプレートへと移し変えたところで、ふと辺りを見回した。
厨房にいる柚や雅羅、小夜子は調理に夢中だ。
ヴァイスもテーブルセッティングに必死で、こちらを気にしている様子はない。
(ちょっとぐらいつまみ食いしても……)
移し変えたばかりの煮物から、1つ摘み上げると、ひょいっと口へと運ぶ。
(うん、美味しい)
作ったのは柚だったか。
いつもの、食べ慣れている味ではあるけれど、こっそりとつまみ食いをすることで、なお、美味しく感じた。
つまんだことがばれないよう、寄ってしまった具を直して、三月は戻っていく。
途中で、甲板掃除を終えたローデリヒ・エーヴェルブルグ(ろーでりひ・えーう゛ぇるぶるぐ)が厨房へとやって来た。
「雅羅さん、幸祐が甲板に来て欲しいとのことです。行ってもらえますか?」
1つの料理を作り終え、次は何を作ろうかと考えている雅羅へと、彼は声を掛ける。
「何かしら? ちょっと行ってくるわね?」
柚や小夜子たちへと声を掛けると、雅羅は厨房を後にした。
「後は、私の指示に従い各自分担して調理を開始して下さい」
メニューレシピと厳選食材は用意してきたと、ローデリヒは告げる。
「なるべく多く作りたいのは確かだけれど、いきなり来てそれはないと思います」
「そうですわ。美緒さんやラナさんに聞いて、作っている料理もあるのですから」
突然のことに柚と小夜子が声を上げた。
「絢爛豪華な貴族主義的お持てなしが私のモットーです。厳選に厳選を重ねた食材で作り上げた料理を、皆さんにこのパーティーで振舞わず、何処で振舞うというのです?」
「だから……!」
言い返そうとする柚と、対するローデリヒの間に三月が割り込んだ。
「まあまあ。楽しく作らなきゃ美味しい料理も出来ないよ」
告げれば、柚と小夜子の手元を見て、掛かりそうな時間を確認する。
「僕たちも手伝いはする。でも、それぞれの料理を作ってからだよ。それまでは、手の空いている者たちにでも手伝ってもらえばいいよ」
三月がそう告げると、双方納得し、先ずはそれぞれの料理を完成させるべく、途中で止まってしまっていた調理を続けた。
そんなこともありながら、パーティーの準備は着々と進んでいく。
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