空京大学

リアクション

ラビュリントスを去りて

　街の中心部から少し外れたところに、モンスターハウス『ラビュリントス』は聳えていた。
　今まで数多のカップルや学生たちを恐怖のどん底に陥れ、常に男女の悲鳴が館外へと響き渡っているラビュリントスは、今日も平常どおりに営業している。
　報告を受けミノタウロスの元へ集まった従業員たちは、ミノタウロスの状態に顔を真っ青にしていた。
　どうやら何者かが猛毒をミノタウロスに与え、仮死状態にまで陥ったらしい。
　しかし彼は驚異的な体力を以って快復し、今日もラビュリントスの目玉として経営を引っ張っている。
　つまり相変わらず、ラビュリントスは大繁盛しているのだ。

　その様子を眺めている少女が一人。
　白いワンピースに真っ白な肌をしている。
　あまりの人の多さに誰も存在に気付いていなかったが、彼女はやはりあの日ラビュリントスに現れた幽霊だった。
　消えた。
　音もなく、気取られることなく、消えた。
　彼女の目的は、動機は一体なんだったのかわからないままである。
　今回のような事件が、もしかしたらまた起こるのかもしれない。