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【●】光降る町で(前編)

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【●】光降る町で(前編)

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【星の描くもの】





 その頃、丁度祭りの準備も終わりを迎えようとしていた。
 全てのランタンに明かりが灯り、空が殆ど伺えないほど完全に、町全体が覆われている。
 訪れた観光客たちは、その不思議な空間に、何度も天井を見上げていた。

「本当に夜になったみたい……」
 空が完全に埋まっているから、と言うには、余りに濃い闇のなか浮かぶランタンの輝きに、思わずといった調子でセルファが漏らす。
「まるでプラネタリウムですね」
 真人も頷き、感嘆と共に呟いた。
「綺麗……!」
 その隣でさりげなく腕を絡めながら、セルファも息を呑む。
 ただ残念ながら、二人きりのデート、というわけにはならなかった。
「演出としては悪うないな」
 ストーンサークルの近くまでやって来た二人は、社に祭りでデート中のカップルという枠で出演してくれ、という誘いを何とか断ったところだ。その流れで、理王がスカーレッドから共有したランタンの配置図と、その描かれた星座を、天井のランタンの中から探していたのだ。
「けど、知らん星座ばっかりやなあ」
「パラミタの天体を模しているようですからね。我々の知識とは一致しないのでしょう」
 ぼやくような社に真人が答え、同じように首を捻ると上空を見上げながら思索に耽る。地球とその天体は異なっていても、何らかの規則性はおそらく地球のそれとさほど違うことはないだろう。であれば、その祭りが行われる周期にあわせた天体が描かれているのだろう、と推測したが、それにしても思い当たる範囲があまりに広い。 
「年に二回の頻度、と言ったら何がありますかね。冬至、夏至……天体は専門外ですからね」
「こっちで意見を集めてみるか」
 そう言いながら、ランタンの配置図を、理王が試しにライブの中で公開したところ、ややして掲示板に妙な書き込みがずるずると続き始めた。
「何だ?この書き込み」
 しかも、それは一人が行った書き込みに対して、何人かが否定や肯定を繰り返しているようである。
『だから、星座の配置に惑わされ過ぎだっつうの。重要なのは順番の方』
『何言ってんだよ、配置の意味が重要に決まってんだろ』
 公共の掲示板にしては速度が速く、荒い語調の書き込みに、理王も物凄いスピードで書き込んでいく。
「配置じゃなく順番が重要、ってどういうことなの?」
 美少女のアイコンで、派手な絵文字まで織り交ぜながら、ひたすら無言でキーを打ち続ける姿は、はたから見ると結構シュールな光景である。
『祭の星座の点る順番見りゃ一目瞭然』
 対して、レスも即座に返されてきた。
『最初の八つが外周が円を描き、その内側に配置される残る八つの星座。ここまで言ってもわかんねーの?なんなら絵にしてみろよ、一発だ』
 その言葉に従って、屍鬼乃がHC上に呼び出した配置図を、星座ごとに区切って点灯させて見ると、それはあるものに良く似た形をしていた。
「……これ、なんだか魔方陣みたいじゃない?」
 魔法に馴染みの深い八重が、まず最初に気付き、呟くように言った。確かに、円を描いたその中に星座を配置していくと、魔方陣のように見えなくない。
「まさか、この祭りは……巨大な魔方陣を作るための?」
 真人が呟くように言うのに、八重は妙な胸騒ぎを抑えようとするように、あえて問いを口にする。

「でも、その目的って何なのよ?」