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立ち上がれ、僕らのヒーロー!!

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立ち上がれ、僕らのヒーロー!!

リアクション


第一章 出撃の用意完了!!

 ショー間近の賑やかな舞台裏。

「……これが怪人を実体化する装置」

 ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)は、すっかり故障してしまったプロジェクターを興味深そうに見ていた。

「ダリル、行くよ!! 装置なんかあと、あと。今は、怪人退治が大事!!」

 やる気満々のルカルカ・ルー(るかるか・るー) は、修理したそうなダリルに声をかけた。
二人はたまたま買い物に来ていて事件を知り、即断即決で協力を申し出たのだ。

「……どこに行くんだ」
 怪人退治に頑張る気の無いダリルはプロジェクターからルカルカの方に視線を向けた。

「店内に行くんだよ。ついでに宣伝もしちゃうの。行くよ!!」
 ダリルが動くのを待てなくなったルカルカは舞台裏を抜け出し、動き始めた。

「あのぉ、本当に申し訳ありません」
 波穂が火傷をした右手を庇いながら、ダリルに謝りに来た。

「それより怪我をしている右手を出してくれ。治しておこう」
 波穂の右手に目がいき、『命のうねり』で火傷を癒した。装置も大事だが、怪我人の治療も事件収拾には重要なことだ。

「あ、ありがとうございます」
 波穂はすっかり元に戻った右手に触れて痛みが走らないことを確認してから礼を言った。

「ダリル、早く、早く!!」
 なかなか来ないダリルを呼ぶ大声はやる気に満ちていた。
「装置の方は俺が戻って来てから調整するからそのままで頼む」
 行く前にロズフェル兄弟に釘を刺してから仕方無くダリルはルカルカの元へ急いだ。
「……はい」
 ロズフェル兄弟は、大げさになってしまった事態に肩を落としながら頷き、大人しく待機するのだった。

 ダリルが波穂と話している間、店内の怪人達に乗り出すもう一組が準備をしていた。

「借りるぜ、このスーツ」
 風森 巽(かぜもり・たつみ)はスカイブルーのスーツを手に取った。

「本当にすみません」
 気絶から何とか復活したトゥルスは情けない声を出して謝った。

「俺もヒーローショーでここを使わせて貰っている。その恩返しだから気にするな。子供達の夢と希望と笑顔のために戦って来るぜ」
 巽はそんな彼の肩を叩き、明るい声で言い、準備を整えた。トゥルスは、少しだけ元気になっていた。

 姿も声もスカイブルーに変身してからスカイイエローを演じるティア・ユースティ(てぃあ・ゆーすてぃ)に声をかけようとしたところ、ティアはすっかり他の協力者達と話し込んでいた。

 騒ぎを聞きつけて匿名 某(とくな・なにがし)大谷地 康之(おおやち・やすゆき)が駆けつけた。

「まさかまさかヒーローショーに出演する日が来るとはなぁ。な?」
 康之は嬉しそうにカラフルなスーツを眺めながら小道具やショーの台本などを確認している某に声をかけた。

「そうだな。でも、あのやばい怪人達にかなうような小道具は無いぜ救いは舞台が広いということだけだ」
 某は確認後、自分達で何とかショーの形にしなければならないと結論を出した。舞台が広いということなので多少派手なアクションは出来るだろうと。

「そんなことは何とかなる。それよりも覚えまくった歴代戦隊の知識は無駄じゃなかったぜ!」

 康之は、頼りになる道具が少ないことよりも今この時、ここに自分がいることへの感動の方が勝っているようだった。

 康之の言葉を耳にしたすっかりスカイイエローになったティアが声をかけた。

「キミもスカイレンジャーを知ってるの?」
「当然。某もばっちりなんだぜ?」
 ティアの言葉に胸を叩きながら自信たっぷりに答える康之。

 康之の言葉に応えてちょっとした質問を出す。
「じゃぁ、スカイワールドに残された力は何か知ってる?」
「そりゃ、スカイハートだ。王族の生き残りのスカイプリンセスのスウシャの首飾りでもあるぜ。しかもスカイキャッスルの動力源でスカイワールドを往復する乗り物にもなる。通常は空高くあるんだぜ」
 悪者軍団「テンペストニウム」が奪った力は王族が住むスカイキャッスルに安置されていた物である。

「某、スウシャの得意な事を言ってみろよ」
 ティアに答えた康之は証拠とばかりに難しい質問を振った。

「649回、回転しても目が回らない。基本中の基本だ」
 某は即答した。あまりにも馬鹿馬鹿しい得意技のため知る者が少ないことだったりする。

「すご〜い。通称、回転のお姫様って呼ばれてるんだよね」
 ティアは嬉しそうに手を叩きながらこれまた知る人の少ない知識を披露した。
 さすが欠かさず番組を見ているだけはある。

 三人で和んでいた時、準備を終えた巽の呼び声でティアは二人に挨拶をして任務に向かった。
「ティア、用意はいいか?」
「大じょ〜ぶ! 日曜朝に欠かさず見てるから、上手に演じちゃうよ。頑張ろうね!」
 ティアは巽に返事をして某と康之に一言、言葉をかけてから巽と共に屋内に消えた。

「暴走を知られないように立ち回れということか。それならば、俺は……」
 騒ぎを知り、駆けつけたエヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)は、カラフルなスーツから演じる役を選んでいた。

「よし、ブルーで行くか。しかし、ブルーもけっこういるな。意外性を出した方が楽しんで貰えるかもな。それで全員でレオング将軍にとどめを……」
 エヴァルトはスカイブルーのスーツを手に取り、辺りを見回してスカイブルーを演じる他の協力者達を確認しながらショーとして楽しんで貰える方法を考えていた。
 そんな時、自分の考えの障害となりそうな言葉が耳に入り、急いで声をかけに行った。

 ティア達を見送った後、某と康之も準備を整え始めた。
「オレは当然レッドだ。熱血リーダーだぜ」
「ホントは俺も赤といきたいが、ブルーだな。赤はどこぞの未来戦隊の終盤で死んだ追加戦士を連想させるからな」
 康之はレッド、某はブルーのスーツを手に取った。
「登場もせっかくだから派手にしたいぜ。レオング将軍は舞台にいるか?」
 すっかりショーのことで頭がいっぱいの康之は、今回のショーにおいて最終ボス的な怪人の居場所を訊ねた。

「いや、屋上のどこにもいないぞ。高見見物のところがあるからどこかで眺めてるんだろう」
 某は舞台裏を抜けてさっと確認して戻って来た。

「だったら、ここからマイクで呼び出したいぜ。間近で見てみたいからな」

 わくわくな康之の声にエヴァルトが間に入った。
「呼び出すって大丈夫なのか? かなりの大物っぽいからクライマックスにした方がいいんじゃないか」
 エヴァルト自身の演出として最終ボスだけになったところを颯爽と登場というものにしたいのだ。そのため開始早々、レオング将軍を呼び出されては困る。

「クライマックスか。名案だぜ」
「呼び出してもあの怪人と本格的に戦うのは最後だ。あいつは他の仲間がスカイレンジャーにやられるのを見るのが好きだからな」
 康之はますますショーを楽しみ出し、某はエヴァルトの危惧を解決した。

「本当か?」
 あまりにも即答だったため聞き返した。
「本当だぜ。スカイレンジャーの好敵手は自分しかいないと思ってて自分の仲間がやられるのを見てスカイレンジャーの力を見極めてるんだ。それに第二段階の変身がある」
 康之は某の答えに追加説明を加える。

「それなら、安心だ。俺も準備があるからまたな」
 話が終わったエヴァルトはヒーローになるために準備を始めた。