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【祓魔師のカリキュラム】一人前のエクソシストを目指す授業 3

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【祓魔師のカリキュラム】一人前のエクソシストを目指す授業 3

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第4章 現場に入る前にメンバー探し…

「実戦か…。単独や自分のパートナーだけではキツイらしいからな」
 共闘してくれそうな者に声をかけようと、佐野 和輝(さの・かずき)は空京ホームセンタの自動扉の前で待ち構える。
「和輝〜、まだお店の中に入らないの?」
「俺たちだけじゃ厳しそうだから、実戦に参加する人と協力しないといけないからな。ここで待っているんだ」
「え〜…。知らない人とお話するの怖いよぅ〜…」
 アニス・パラス(あにす・ぱらす)はイヤイヤするようにかぶりを振る。
「そういうなって。グレムリンを祓うことだけじゃなくって、店内にいる人を非難させたり、いろいろやるべきことがあるんだ」
「うぅ〜…。じゃあ待っている。式神の術でキュゥべえのぬいぐるみを式神にしてっと……。よし、QB。君はアニスたちの目となり盾となるんだ♪」
 式神となったキュゥべえのぬいぐるみの腕に抱きついて言うが…。
 QBは、『訳が分からないよ』と、ため息をついた。
「リオン、他の人に対して冷たい態度とかとらないように気をつけてくれよ」
「―…授業とはいえ、実戦なのだからそれくらいはな。ただし、相手が誰でもよいわけじゃないからな」
「(はぁー…。選んでいる余裕なんてないのにな。まぁ現場に入れば、ちゃんと協力してくれるだろうけど…)」
 アニスが見ているのだから、非社交的な禁書 『ダンタリオンの書』(きしょ・だんたりおんのしょ)でも、他者との共闘を拒否しないだろう。
 即席のチームとはいえ、授業内の実技では相手と歩調を合わせようとした言動も見えたし、深刻に考えることもなさそうだ。
「無言で戦うわけにもいかないし、ちゃんと会話出来る人がいいよな。例えば、リオンと一緒に実技をしたヤツとか……ん?あれは九条…か?」
 リオンに聞こえないように小さな声音で呟き、組んでくれそうな相手を探す。
「(彼女なら、もしくは……まあ、ダメ元で声をかけてみるか)」
 すでに何人かと組んでいるかもしれないが、九条 ジェライザ・ローズ(くじょう・じぇらいざろーず)に向かって大きく手を振って呼ぶ。
「実戦の授業を受けにきたんだろ?なんで店の中に入らないんだよ」
「いや、俺たちだけで行動するわけにもいかないからな。実戦に参加するヤツを待っていたんだ。九条、俺たちと組んでくれないか?」
「ぁー…ごめん。もう学人と組んでるんだ。途中で涼介たちと合流するかもしれないけど、それでもいいか?」
「あぁ、それで構わない。って、アニス…。QBごと俺の服に隠れるなって」
「―…うぅ〜、だってだってー…。九条たちの他にも、いっぱい人が集まってくるなんて〜……」
 強度の人見知りな少女は和輝の服を掴み、ぶるぶると震える。
「おーい、涼介。こっちこっち!」
 ローズは手をぶんぶんと振り、涼介・フォレスト(りょうすけ・ふぉれすと)を呼ぶ。
「和輝にチームを組みたいって言われたんだけどさ。涼介も私たちと一緒にくるか?」
「訓練場で完成させたハイリヒトゥームフォルトの結界を使おうと考えているんだが。協力してもらえるかな」
「僕、今日はスペルブックの方を持ってきちゃったんだ。これに記されているのが哀切の章じゃなくって、裁きの章だけなんだよね」
「そうか。私は負傷者の治療を行う予定だが、何人かチームを組んで動いたほうがよいかもな」
「いろんなフロアがあるし。他のヤツが到着した時にでも、どうするか聞いてみようか?」
 ホームセンター内は日用品やペットショップエリアなどに別れているし、何人かのチームに別れて行動したほうがいいかも…と冬月 学人(ふゆつき・がくと)が言う。
「店内には客もいることだし、全員で1つに纏まって動くよりかは効率がよいかもな」
「ぁ…あのっ。レイカさんでは、学人さんの代わりにならないでしょうかー…?」
 アイデア術を現場で使えないかと、高峰 結和(たかみね・ゆうわ)はおどおどした口調で提案する。
「2回目の授業では組んでいないから無理かな」
「確か…。私はフレデリカさんたちと一緒にいましたから、そちらには参加していませんでしたね」
「そ、そうでしたかー…。ぅーん…、哀切の章のみで出来ることを考えなければいけませんねー…」
「結和君。章だけで出来ることがないか、試してみたいことがあるんだ。協力してくれると嬉しいな」
「わ、私でよろしければ…ぜひ、ご一緒させてくださいー」
 学人に誘われ、あわあわとした口調で言う。
「不可視の相手は見ることが出来ませんから…。そ、その…。気配を探知出来る人が、協力してくれるといのですが…」
 ローズがいれば目に見えない魔性を見ることは出来るが、気配の探知能力も欲しい。
 自分たちを手助けしてくれないだろうかと、レイカ・スオウ(れいか・すおう)を見る。
「あの…、私も何かお手伝いしましょうか?」
 協力して欲しいけどハッキリ言えない結和の態度に気づいたレイカから声をかける。
「ぜ、ぜひ、お願いします」
「椿ちゃんは被害に遭った人や動物たちの回復をお願いしますね」
「は、はいっ」
 白雪 椿(しらゆき・つばき)はこくりと頷き、彼女の傍へぱたぱたと駆け寄った。
「お客さんや動物をホームセンターから救護する時、守り役が必要になりますよね」
「治療しながら脱出することになるだろうし、使い魔を呼べる者に先頭を進んでもらって、俺とリゼネリが後方を守る感じになるか?」
「僕やルヴェは少しくらい傷ついても大丈夫だよ。荒事はなれてるので。つーか先頭って傷つきやすそうだよな。上から襲われて、パカッと2つに割られて突然死したらいいのにな。そしたら戦場に散ったルヴェのことを、数秒だけ覚えていてやるよ」
 ポレヴィークを呼び出そうと地面に魔方陣を描くパートナーへ視線を移し、リゼネリ・べルザァート(りぜねり・べるざぁーと)が死亡フラグを立ててやる。
「店内に入る前から死亡フラグ立てないでよ。というか、すぐに忘れる気満々だよね」
 ベリアリリス・ルヴェルゼ(べりありりす・るう゛ぇるぜ)は“後ろも十分大変だよ”という言葉を続けて言おうとしたが飲み込む。
 うっかり言ってしまったら、“じゃあ両方任せた”と、2パターンの死亡フラグに挟まれてしまいそうだ。
「お呼びですか、ご主人様」
 黒色で眼の隠れたショートの髪に、背丈は120cmほどの小柄な少女の姿だ。
「魔性から僕たちを守る壁役を頼むよ」
「それは、ご命令ということですね?」
「そんな感じかな」
 自分のパートナーと違い、使い魔は従順に従ってくれるようだ。
 人によって性格が変るような態度はないらしい。



 五月葉 終夏(さつきば・おりが)は授業で習った手順を思い出しつつ、ニュンフェグラールを掲げて祈りを捧げる。
 聖杯に零れ落ちた涙と自分の血を一滴混ぜ、魔方陣を描いた紙に落とし、スーを呼び出す。
「やっぽー。今日もおりりんのお手伝いかなー?」
 小さな少女が無遠慮に、終夏の肩に飛び乗る。
「うん、お願いね」
「私たちも中に行くべきよね。外に出てから治療するよりも、その方がいいでしょ?」
 外で治す場合ホームセンターから出るまでの間、動物たちは精神を蝕まれている状態だ。
 店内で治療してあげれば、苦しむ時間も短くなるだろうとフレデリカ・レヴィ(ふれでりか・れう゛ぃ)が言う。
「被害に遭った動物を治してもらいながら脱出したほうがいいね」
「とはいっても、魔性の気配を探知したりすることも大切ですからね。店内では応急処置くらいにしておきませんか?」
 走りながらでは癒しの祈りに集中しにくそうだとルイーザ・レイシュタイン(るいーざ・れいしゅたいん)が提案する。
「しっかり完治させてあげるのは、救護した後ってことね。祓った魔性を説得してあげたいけど、ここは役割分担したほうがよさそうね。私は非難しやすい道を探すわ」
「フリッカに割り出してもらった避難経路を、涼介さんに連絡しますね」
「そのほうがよいな。私は連絡を受けなければいけないから、こちらの応急処置を行う者は椿さんかな」
「が…頑張りますっ」
「誰か宝石持ってる人ー、一緒に組んでくれー」
 魔性を発見しなければ、憑かれてしまった動物を助けてやることや、客が修理に出した大切な物から追い出すことも出来ない。
 宝石を扱える人とチームを組もうと、ヴァイス・アイトラー(う゛ぁいす・あいとらー)は大きく両手を振る。
「組む相手がいないなら、私たちと来ない?客を非難させたりすることがメインなるけどね」
「おー、ありがとう!」
「俺たちも同行させてもらっていいか?」
「もしもグレムリンたちが近づいてきたら祓ってもらえるかしら?気配がまったくないルートを探すのは難しいでしょうからね」
「グレムリンを祓えるのは、そこの2人だな」
 ホームセンター内の入口の壁に貼ってある地図をジーッと見つめ、記憶しようとしている漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)と、その月夜に誘われて連れて来られた玉藻 前(たまもの・まえ)へ、順番に視線を向ける。
 樹月 刀真(きづき・とうま)の方は、パートナーたちの盾役を引き受けたということだ。
「つーことで、守備よろしくなセリカ」
「俺も盾役か」
 ヴァイスが術に集中してる時に、セリカ・エストレア(せりか・えすとれあ)も守り役として参加することになった。
「アイデア術のレイン・オブ・ペネトレーションを使えば、宝石の魔道具を持たないリーズとかでも、すこーし見えるんやったね」
「陣くん。メンバーが揃っていないから、今日は無理っぽいよ」
 パートナーの代わりにリーズ・ディライド(りーず・でぃらいど)が空から確認してみる。
「そっかー…、残念やね。んー、手持ちのモンの効果で対処するしかないな。とりあえず、この前のメンツでつっこむか?」
「私はそれで構いませんよ。羽純くんもいいよね?」
「まぁ、見知った相手だし、いいんじゃないか」
 何かに導かれたようにいつものメンツや、前回の授業で組んだ相手なら問題ないだろうと、月崎 羽純(つきざき・はすみ)も了解する。
「実際に戦うと書いて実戦だねっ」
「分かってるなら、いじるなよ。絶対いじるなよ」
「へ?いくらボクでもKYなことしないよ」
 “戦闘中はね”という言葉を飲み込み、にんまりと笑う。
「俺たちは人手が足りなそうなところへ行くかもしれない。それでもいいならいいが…」
「そうやね。その方がいいかもしれんな」
 他のチームが助けを求めてくることもあるだろうと、グラキエス・エンドロア(ぐらきえす・えんどろあ)に頷く。



「下級の魔性…ね」
 空京ホームセンターにたどり着いたグラルダ・アマティー(ぐらるだ・あまてぃー)は、ショーウィンドウから店舗内を覗き込んだ。
 誰かに用意されたような感覚が拭いきれないのか、中へ足を踏み入れようとしない。
「それもコイツの所為か」
 服に取り付けられている小型カメラを睨むような鋭い視線で一瞥し、吐き捨てるように呟いた。
「結構な趣味だこと…。ま、いいけど」
 教室内で授業を受ける生徒のために、ライブ映像を見せるものなのだろう。
 講師と校長が実戦を行う者たちの動きを、把握するためのでもあるのだろうか…。
 見学されているプレッシャーを感じるわけではないが、あまり良い気分でもない。
「ん…、何だか機嫌がよくなさそうだが…?」
 不機嫌そうな顔をするグラルダに、グラキエスが声をかける。
「別に…。ワタシはいつもこんな顔よ。何か問題あるかしら?」
 ふぅと息をつき、口の端を無理やり持ち上げたような笑みを向ける。
「それならいいが…」
「アンタが言いたいことは分かってる。自ら不利になるような、余計な思考は不要だもの」
 多少の感情の乱れも許すものかと、かぶりを振って雑念を振り払う。
「そこのアンタは、緊張しているの?」
「なにせこれがエクソシストとしての初陣だもの、緊張するわ」
 セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)はペンダントをギュッと握り小さく頷く。
 今までの授業で受けた技術を、実戦という本番で試す絶好の機会が来たと判断し、ホームセンターへやって来た。
「アークソウルは魔性に憑かれている者には反応しない…。だったら非生命体に憑いた状態なら分かりそうよね?」
「まぁ…滅することが死なら、生命…魂と呼べるものも持っているということね?」
 地球人以外に対しての反応を有無を考えれば、そういうことなのだろうか、とグラルダは考えるように首を傾げた。
「セレアナが探知したグレムリンの位置を、皆に伝えて祓ってもらうっていうのはどう?」
「それよりも、スペルブックを持った者と一緒に行動すればいいんじゃないの。探している間に、襲われることだってありそう…って、1人だけで探しに行く気?」
 グラルダの話を最後まで聞かず、セレンフィリティはホームセンターに駆け込んでしまった。
「人の話をちゃんと聞きなさい、セレン!まったくもう…っ」
 セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)は大声を上げて恋人を呼び止めようとするが、弾丸のように突っ走ったまま帰ってこない。
 はぁ…と嘆息し、彼女を追いかける。
「仕方ない…。アタシが探してくるわ」
「えっ、1人で探しに行くの!?」
「見失わないうちに、追いかけなきゃ弥十郎」
「う、うん。そうだね」
 宝石を持たないグラルダに1人で彼女たちを探させるわけにはいないと、賈思キョウ著 『斉民要術』は農業専門書と共に彼女を追う。
「明日香もいないが…?」
 哀切の章を使える者もいたほうがよいだろうと、グラキエスが神代 明日香(かみしろ・あすか)に声をかけようとしたが、彼女の姿が見当たらない。
「さきほど彼らを追って行ったようです、グラキエス様」
「そうか…」
「追いかけますか?」
「いや、向こうはすぐ合流出来るだろうから、心配ないだろう。俺たちは陣たちと行こう」
「どのエリアから探索いたしましょうか?」
「修理屋のフロアはどうだ?もしも大切にしている物が壊れてしまったら、持ち主が悲しんでしまうだろうから」
「なんとお優しい言葉…。では、そこへ向かいましょう、グラキエス様」
 ホームセンター内の地図を確認したエルデネスト・ヴァッサゴー(えるでねすと・う゛ぁっさごー)たちは、修理屋のフロアへ向かう。
「オレたちも早く行こうぜ!」
「ヴァイス、まずは品物の修理を受け付けている所に行ってみないか」
「人を困らせて遊ぶなら、そういうところも狙われやすそうだよな。行ってみるか!」
「同じ場所へ向かっている人が多いから、そこで他の人と合流出来たら別行動しない?」
 フレデリカたちは客や動物たちを無事に脱出させなければいないのだが、宝石を持たない彼らだけで行かせることは出来ない。
 修理屋のエリアまで同行することにした。
「1つのエリアに人が集中するよりはいいしな。うん、分かった。そのフロアに着いたら別行動な。じゃ、中に入ろうぜ」
「少しだけ待ってください。ホームセンターに入る前に召喚しておかなくては…」
 店内に入ってからでは召喚を行いづらいだろうと思い、ロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)は両手で聖杯を掲げる。
 祈りを捧げ、虚空から零れ落ちる涙を得た彼女は、供物となる自分の血一滴を混ぜ、地面に描いた魔方陣に落とす。
「こまったさんたちが、お店の中で暴れているのね?」
 召喚されたクローリスはロザリンドが何を頼みたいのか、血の情報により全て知っている様子で言う。
「えぇ、そうなんです。それで…。あのー、差支えなければ、カメリア、さんとか、お名前付けてもよろしいでしょうか?」
「私に名前…?」
「名前とか、共有する物を色々持てば、ただ使い魔と主人ではなく、仲間としてより深い絆の一端になるかなと思いまして。せっかく出会えたのですしね。……こう考える人って変でしょうか?」
 なぜ自分に名前をくれるのだろうか…?
 不思議そうに首を傾げるクローリスに、主としてでなく仲間として見てもらいたいと言う。
「主従関係でなくって本当にいいのね?」
「私をあなたの仲間として見てもらいたいんです」
「そう…。分かったわ。気軽に接する感じでいいということね」
 ロザリンドに呼び出された時、すでに考えは分かっていたものの、あえて口に出すまで待っていた。
 ただの主と従う使い魔でなく、仲間と呼ばれたカメリアは口元を綻ばせる。