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【祓魔師のカリキュラム】一人前のエクソシストを目指す授業 3

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【祓魔師のカリキュラム】一人前のエクソシストを目指す授業 3

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第9章 コレ、自分ノッ…わがままグレムリン Story5

「電気製品は他のチームが担当しているだろうから、私たちはペットショップにいる動物たちを救出しよう」
「ネコがなんか咥えて走ってるよ」
 銃型HCを口に咥えたネコが、ローズの目の前を通り過ぎた。
「そのネコ、魔性に憑かれているのよ。捕まえて!」
「アニス、QBにネコを捕まえさせろ」
 セレアナの声で魔性の存在に気づき、和輝はアニスに言う。
「任せて!やっとお仕事をもらえたよQB。あのネコを捕まえて!」
『ひっかかれたくないよ』
「だいじょーぶっ。さぁ、いくんだーっ、ごーごーっ」
 アニスはQBの背中に飛び乗り走らせる。
「ディテクトエビルを発動させてるけど、邪気を感じないね?和輝に聞いてみようっと」
 ネコを追いかけながら、精神感応でパートナーに聞いてみる。
「(ねーねー、和輝。ディテクトエビルじゃ魔性の気配は分からないの?鬼目で見たりとか出来ないのかな)」
「(どうだろうな…。他のやつに聞いてみるか)なぁ、どうすれば魔性の探知したり、見ることが出来るんだ?」
 通常のスキルで、いたずらや悪さを考える魔性の探知は可能かセレアナに聞く。
「私が持っているアークソウルなら、魔性に憑かれていない、地球人以外の者を探知出来るわよ。つまり地球人以外なら、探知出来るってことよ。不可視の魔性を見るためには、エアロソウルが必要ね。ちゃんとエレメンタルケイジに入れないと、効力を発揮してくれないわ」
「今までのスキルでは分からないってことか。(アニス、通常のスキルじゃ分からないみたいだ)」
「(ぇえー、そうなの!?ぅー…。それだとQBに、盾になってもらうしかないよー…)」
「(へこむなって。今は魔性に憑かれたネコを捕まえるっていう、大事な任務があるだろ)」
「(う、うんそうだよねっ。よーし追いついた!)QB、悪い子を捕まえて!」
 ぴょんと跳ねたQBが、ネコの上に覆いかぶさる。
『捕まえたよ、アニス』
「やったー♪」
『うわぁあ、やめてー。ひっかかないでーっ』
「オモイッ」
 QBから逃れようとネコが必死に抵抗する。
「こ…こらっ。その子から…、離れて…っ」
「フンッ」
「む〜。あー、逃げた!」
「フーンッ」
 セレアナの銃型HCだけQBの腹の下に置き、這うように脱出した。
「私のカワイイ乙女ちゃんが、いらっしゃい!」
 どうやら器にされているネコの飼い主らしく、ペットをホームセンターに預けていたようだ。
『あの子、魔性に憑かれているんだよね。近づいたら危ないじゃないのかな?』
「だって…知らない人とお話出来ないっ。(和輝ー、飼い主っぽい人が、魔性に憑かれたネコに近づいてるよ!)」
「(なんだと!?早く離れるように言うんだ)」
「(えぇー、無理だよーっ)」
「ポレヴィーク、あのおばさんを守ってあげて」
「主のご命令ですね?了解です」
 少女は静かに頷くと足元から出現させた蔓で植物のカゴを編み客を守る。
 不気味な姿へと変ったネコは、ガリガリとカゴを引掻く。
「キャアァアーーッ、私のカワイイ乙女ちゃんがっ」
「いけませんね。かわいいネコをそんな姿に変えてしまうなんて。もちろん、この世で宇宙一かわいいのは、エリザベートちゃんですけど♪」
 中年の女の悲鳴を聞きつけ、ペットの中に潜むグレムリンを明日香が祓う。
「イギィイイイッ。他のヤツに憑いてやル」
「ふぅ、懲りないですね」
「ケースの中にいる動物に憑こうとしているよ!」
「どれですか?」
「左から8番目のケースだよ」
 不可視化したグレムリンの姿をローズが見破り明日香に教える。
「あらあら、また別の器に入る気なんですね。今度はちょーっと痛いですよ?」
 明日香が放った光の嵐はケースのガラス扉を通り抜け、魔性に仕置きをする。
「ギィイイイイッ」
 グレムリンが黒板を爪で引掻いたような耳障りな悲鳴を上げる。
「お菓子ゾーンに来ないと思ったら、ここにたむろってたんだね」
「憑いていたずらするなら、こういう場所とかだろクマラ」
「おいでおいでーグレ子。オイラと一緒にお菓子食べようよ」
「ヤァアッ」
「ウェハースもあるよ?」
「ヤダッ」
「このグレ子はわだままだね」
「美味しいキャンディーだよ。ほらほら、こっちにおいで」
「キャンディーほしぃー」
 よたよたと足元をふらつかせながらローズに近づく。
「反省するならあげるよ?」
「ウーン…」
「しないなら、私が食べちゃうけど?」
「ヤーッ、ちょうだイ」
「いい子だね。あげるよ」
 ローズはキャンディーをあげるフリをし、ポイッと遠くに投げる。
「キャンディィイッ」
「今のうちにペットの応急処置をしてあげよう!」
「大丈夫ですか…?すぐに回復いたしますね…っ」
 椿は苦しそうにぐったりしているネコを膝に乗せ、ふわふわと柔らかい身体に触れる。



「本の使い方を聞きたいんだけど、いいかな」
「裁きの章?別に構わないわよ」
 グラルダがスペルブックの扱い方をリゼネリに教える。
「スペルブック本体に、インデックスのようなページがあるんだけど。それを見て、どのページに章が記されているか把握して。それぞれの章について書いてあるから、すぐに分かると思うわ。日本語ページもあるから、読みやすいほうで使うといいわね。詠唱ワードは、章に合わせたイメージで唱えるのよ」
「なるほど…。教えてくれてありがとう」
「セレアナさん。アークソウルは地球人以外の、魔性などに憑かれていない者を探知する…ということですよね?」
「そうよ。だから、魂のある者の存在は分かるってことね。レイカは椿たちの傍にいてあげて。私とセレンはケイジの中にいる子たちが憑かれていないか調べるわ」
「はい!」
 彼女は椿の傍に座り、探知に集中する。
「リオン、人の悲鳴が聞こえるよ?」
「何かから逃げているような感じだな」
「フレデリカさんから電話が…。どうした?」
「そっちにグレムリンが向かったりしていない?」
「そうみたいだな、応急処置中だから動けないんだが…」
「早くそこから逃げて!危険なやつがそっちに行っているはずよ!」
 治療も大事だがそこに留まるのは危険だと、フレデリカが声を上げる。
「危険なやつとは…?」
「ルヴェ、ボケッとしてんなっ。涼介君を守れ!」
「分かった。ポレヴィーク、頼んだよ」
「お任せください」
 蔓で編んだフェンスのようものに、チェーンソーの刃が絡まる。
 ギュィイイイイッ。
 刃の回転音をけたたましく鳴り響かせ、壁を切り裂こうとする。
「さっきの悲鳴は、この魔性にやられた人たちなのか?早く手当てしてあげなくてはっ」
「僕も行くよ」
「頑張ってー」
「ルヴェ、さぼったら脳天ぶっ叩くからな。さぼってなくても、腹に蹴り入れてやる」
「またそんなことを言う…」
「何か言ったか!?」
「なんでもないって。…はぁ」
 真面目に働いても殴られるフラグにため息をつく。
「リゼネリさん、チェーンソーに憑いた魔性が、そっちに向かいました!」
「なんでこっちにっ。ルヴェだけタゲッてくれればいいのに」
 不満げに言いつつ酸の雨を降らせ、グレムリンの硬質な魔法防御を下げる。
「すばしっこいな、掠めただけか」
「刃が1枚だと思うナ。増やすと、その分。刃が小さく分裂したっぽくなるけどナッ」
「あれを祓うには、本体部分に術をかけなきゃいけないみたいだね。…おいルヴェ、こいつの刃をなんとかしろ!」
「なんとかって、そんな無茶振りされても…」
「今殴られたか?それとも後で殴られたいか?」
「もう、分かったよ…」
 抵抗するような発言でもしたら何をされるか分からない。
 どっちにしろ殴るくせに…という言葉を言わずに飲み込む。
「皆、あの魔性にやられたようだな」
「酷い傷だね…。これっていたずらのレベルに入るのかな?」
「遊びに限度を知らない、子供のようなものな感じがするが…」
 涼介は逃げ遅れた客に駆け寄り、ルシュドの薬箱から取り出した軟膏を、麺棒につけて傷口に塗る。
 そこにガーゼを当て、包帯を巻きつける。
「深手ではないが、血が出てしまっているな。少ししみるかもしれないが我慢してくれ」
「どうして動物や物が突然暴れだしたんだ?」
「応急処置はしたが念のため、病院に行ったほうがいい。それと、しばらくは安静にしておかないとな」
 まだ原因を知らない客に言うべきことではないだろうと、涼介は答えずに手当てを続ける。



「ね、ねぇ…。いたずらはよくないよ?」
「楽しいヨッ」
「で、でも。皆を困らせるのは…、良くないと思う」
 アニスが小さな声音で説得を試みるが、グレムリンは聞き入れようとせず、チェーンソーの刃を飛ばしながらキャッキャとはしゃぐ。
「あ…危ないから、もう…やめようよ」
「ヤダネ」
「む〜!リオン!!あの子達を懲らしめてやりなさい♪」
 あまり術を受けていないせいか、反省する気がないグレムリンに仕置きするように言う。
「もうすでにチェーンソーと呼べる形ではないように見えるが…」
「そんなことより、早くやめさせなきゃ動物たちも傷ついちゃうよ!」
「むっ、ローズたちの方へ行ってしまったようだが?」
「やばい、こっちに来た。学人っ」
「ホームセンターの外へ脱出しよう!」
 椿たちを連れて非難しようと走る。
「ねぇ。哀切の章で防護壁のようなものを作れないかな?」
「わ…私がですかー?」
「ハイリヒトゥームフォルトの結果や、データや今まで書き溜めていたノートを元にね。一人でも防護壁のようなものを作れないかなって思ってさ」
「やってみます…」
 結和は壁をイメージして哀切の章を唱える。
「皆、ここから出るよ。急いで!」
「魔性を祓った動物たちも連れて行かないといけませんね」
 明日香は犬やネコ、うさぎなどの動物を抱える。
「この宝石は数メートルほどの効果のようですから、呼んだほうが早いかもしれませんね。…店内に残っている方は、急いでこちらへ来てください!」
 従業員や客たちをレイカが呼び集める。
「光の壁に魔性たちが近づけないようだね」
「ですが…もう、精神力が…っ」
 しつこく狙ってくるグレムリンが、壁を通り抜けて侵入してこようとする。
「持続させようとすると、精神力が減っていくんだね」
 学人はハイリヒバイベルを開き、裁きの章で椿の周りに、酸の雨のカーテンのようなものを作る。
 チェーンソーに憑いた魔性は熱い物に触れたかのように、ギャッと悲鳴を上げて離れる。
「うん…持続するのは厳しいかな」
「私が回復させてあげるからもう少し耐えて」
「九条、リオンに任せてみるから、大丈夫だよ」
「そうしてもらえるかな」
「脱出する前に疲れちゃうと、グレムリンたちに追いつかれちゃうからね。リオン、いけそう?」
「あまり無理をするなよ」
「心配するな。限界を知るといっても、倒れるまでやらずとも程度は分かる」
「ポレヴィーク、あの刃を叩き落して」
 ベリアリリスの命令に使い魔は“了解しました”と言い、蔓を伸ばして鞭のように振り、騒音を響かせる刃を床に叩き落とす。
「店内にいるグレムリンは、降参した者ばかりなのだろう?この騒動もそろそろ終局だな」
 せっかく見つけた遊べるモノたちを狙い、襲いかかろうとするターゲットに、リオンが酸の雨を降らす。
「イギィイイッ」
「(ふむ、これ以上追い詰めるとやばそうだな)後は哀切の章を使える者が祓えばよいな」
「それでは私が…」
「いえ…、待ってください。わ、私がやります…っ」
 荒々しくも叱りつけるような優しい光で包み、チェーンソーから魔性を祓う。
「もう……。店内にいる魔性は、ほとんどいなくなったのでしょうかー…」
 僅かに残された精神力は使い果たし、足元をふらつかせる。
「私に掴まってください、結和さん」
「ありがとうございます…っ」
「お願いですから、こんな悪戯しないでください…。ここには皆さんの大切なものや、大切な家族がいるのです…。皆さん悲しんでしまいます…ね?お願いです…」
「悲しイ…?悲しいって何」
「たとえるなら…。心が傷ついてしまうような…、そんな痛みです」
「痛ミ…痛いの傷つくのイヤ…怖イ。…ウン、分かっタ」
 椿の説得に応じたグレムリンはホームセンターの外へ去っていった。