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フリマと少女の本

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第3章 サニー

「海くん! サニーちゃんが元気になって良かったですね。一緒にお祝いに行きませんか?」
 高円寺 海(こうえんじ・かい)の姿を見つけた杜守 柚(ともり・ゆず)が、嬉しそうに声をかける。
 隣りの杜守 三月(ともり・みつき)サニーへの快気祝いのプレゼントに、花束を持っている。
「ん……あぁ、そうだな。世話になったし」
 柚の言葉に素直に同行する海。

「サニー、遊園地で倒れた時から心配してたんだ! 元気になったんだね、良かった」
「ああ、そうだな」
 ルカルカ・ルー(るかるか・るー)ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)も、雑貨屋ウェザーに向かう。

「どうもありがとウ!」
 5人を迎えたのは、栗色の美しい髪の毛の少女。
(あれ……)
(あれ、れ……)
 少女に会った途端、膨れ上がる違和感。
「どうしたノ?」
 5人を見たサリーが、首を傾げる。
「あれ、サニー……髪、染めた?」
「いいエ」
 怪訝そうに声をかけるルカルカに、サリーは澄まして答える。
(おかしいです…… サニーさんの元気な姿が見れて嬉しいはずなのに、嬉しくないなんて……)
 柚がきゅっと眉根を寄せた。

「この間は、大変申し訳ない事をしたであります!」
「ええ。先日はこれがご迷惑おかけしてすいませんでした」
 サリーの前で突如頭を下げたのは、葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)コルセア・レキシントン(こるせあ・れきしんとん)だった。
 吹雪は先日、遊園地でサニーが気絶する一因となってしまった事を、ずっと気にしていたのだ。
「そ、そんナ。わざわざ謝りに来てくれテ、ありがとウ」
 丁寧な謝罪に恐縮するサリー。
「それよリ、せっかく来てくれたんだかラ、フリマを楽しんでいってネ!」
 笑顔で各店舗を紹介する。
「よかった、元気になったみたいでありますね」
「よかった、のでしょうか……」
 胸を撫で下ろす吹雪に対して、コルセアはどこか納得のいかない表情をしていた。
(何かが、おかしい……)
 サニーと実際に会うのは初めての吹雪と違い、彼女もまた違和感を感じていた。
(そういえば、あの子、あんな髪の色してたかしら……)
 首を傾げながら、吹雪について歩くコルセア。
 とん。
 考え事をしていたので、急に歩みを止めた吹雪にぶつかった。
「あ、ごめんなさい……」
「コルセア……」
 吹雪は、コルセアの方を見ていなかった。
 彼女の目は、一冊の本に吸い寄せられていた。
「何故でしょう、自分、あの本が大変気になるのであります……」
 それは、一冊の古本だった。
 その本に注目したのは、吹雪だけではなかった。
「なぁ、あの本……」
「え?」
 フリマを見て回っていた占卜大全 風水から珈琲占いまで(せんぼくたいぜん・ふうすいからこーひーうらないまで) は、高峰 結和(たかみね・ゆうわ)の肩に手を置いた。
「売り手の奴ぁいないのか? ありゃ、どう見ても妙な力が宿ってるな」
「あれは、たしかウェザーの方々が出品した本ですね」
「……気になるな。よし、ウェザーに行ってみよう」
 結和の手を引き、走り出した。