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開幕:街道警備と心配の種
青天ではなく曇天でもない。よく晴れた日だった。
太陽はすでに頭上を通り越している。祭りの賑わいが高まるのに合わせて沈む準備をしているようにも見える。
だが日が沈むということはそれだけ危険が増すということでもあった。
ツァンダ方面へ向かって延びている街道の上空を箒に乗って飛ぶ姿がある。
リース・エンデルフィア(りーす・えんでるふぃあ)だ。彼女は街道の警備を空からしていた。魔法使いらしい彼女ならではの行動だ。
リースは手にした携帯電話をいじる。どうやらメール操作をしているらしい。
『マーガレット、大丈夫?』
『何かあったの?』
『ううん。特に異常はないかなって』
『しっかり整備されてるだけあって安全みたいね。獣も見当たらないよ』
『そ、そっか。それなら安心かな。みんなも動いてくれてるし……』
眼下には街道を行き来する人々の姿とそれに付き添うように歩く人たちの姿が見える。地上で警備をしている仲間たちだ。
気のせいか女の人ばかりに付き添っている人もいるようだが……そういう警備方針なのだろう。
特に大きな問題は起きていないようだった。
『あ、そういえばさっきラグエルに会ったよ。アガレスも一緒だった』
「えーっ!?」
リースはマーガレット・アップルリング(まーがれっと・あっぷるりんぐ)からもたらされた情報に思わず驚きの声をあげてしまう。
視界に映った空は青から紫へと姿を変えていた。しばらくすればあたりは真っ暗になるだろう。
それが余計にリースの心配を加速させる。
『ラ、ラグエルちゃん大丈夫かな?』
『送っていこうかと思ったんだけどね。アガレスが 「大英雄である我輩に任せろ」 みたいなこと言ってたから、任せちゃった』
『お師匠様だけじゃ心配ですっ! 私が今から送ってきます』
『街道沿いの茶屋に行くって言ってたよ。あたしも後から行くね』
マーガレットとの連絡を終えたリースは方向転換をすると件の茶屋を目指した。
辺りはすでに暗くなっており、街灯の明るさだけが目印になっていた。
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