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リアクション
――トーナメント・生身部門一回戦――
セルファ・オルドリン(せるふぁ・おるどりん)対ラルク・アントゥルース(らるく・あんとぅるーす)
「そんじゃまー、お相手願おうか」
「初戦から面白い勝負が出来そうね」
お互いに構えを取る。そして、戦闘開始の合図と共に、同時に突撃。
「はっ!」
「おらっ!」
初撃。セルファの黎明槍デイブレクとラルクの拳がぶつかり合う。
「考える事は同じってところか!」
「そうみたいね!」
セルファが距離を取り、バーストダッシュ、ゴッドスピードを使い加速。様々な方向からの多角高速突撃を繰り出す。
ラルクはそれを体術回避で回避。時にはバックステップをしつつガードの体制をとり衝撃を減らすなど、うまく致命傷を回避して行く。
「そこだっ!」
隙をついて自在、滅殺脚でセルファに反撃するが、高速で動き、空すらも自在に動き回るセルファをうまく捉える事が出来ない。
「その程度じゃ当たらないわよ!」
接近するセルファ。
「どんどん行くわよ!」
ソードプレイによる近接戦闘。
「くっ……! やるな」
うまく打ち合っているが、押され気味のラルク。
「そこよ!」
鋭い突きを繰り出す。だが、ラルクはそれをバックステップで回避。
「狙い通り!」
つかさずラルクへ向けてスカージを放つ。そして、バーストダッシュ、ゴッドスピードを使ってのランスバレスト。
「これで終わりよ!!」
「……ふっ!」
だが、ラルクはスカージを真正面から受け、トドメにはランスバレストを両腕をクロスして受け止めて見せた。
「うそっ!?」
「頑丈だけが取り柄なんでな。早々には倒れないぜ……。おらっ!」
セルファを殴り飛ばす。
「っとと」
咄嗟に後ろへジャンプ。くるくると回って、着地。
「遅いぜ?」
あっという間に間合いを詰めたラルク。七曜拳による七連撃を見舞う。
「……まだっ!」
ダメージを受けつつも、セルファが槍を突き出すが。ラルクはカウンターで武器を弾き飛ばした。
「俺の勝ちだな!」
「っ!」
ラルクの連撃に耐えられるはずもなく。勝負は決まった。
パトリシア・ブルームフィールド対セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)
「私の番ね……」
「正々堂々と戦いましょう」
「もちろん!」
試合開始の合図。だが、お互いに動かない。
「出方を見ているのね……。なら、お望みどおりに!」
パトリシアが魔道書を展開。
「最初から全力で行くわよ!!」
動かなかったのは、相手の様子を見ると共に、術式の準備をしていたからだ。
それぞれの魔道書から天のいかづち、サンダーブラスト、雷術、バニッシュの魔法を連射する。
「そうくるか……」
セレンフィリティは正確にその魔法を回避していく。
「避けてばかりじゃ勝てないわよ!」
パトリシアが魔道書の数を増やす。本人も魔導書を持ち、広げる。
「これだけじゃ終わらないわよ!」
パトリシアからも、歴戦の魔術による魔法を乱射。
「やるわね……!」
乱れ飛ぶ魔法に苦戦するセレンフィリティ。
「そこっ!」
魔法の合間を縫い、【シュヴァルツ】【ヴァイス】で展開されている魔導書を撃ち抜いていく。
「あの状態から正確に射撃できるのね……」
「それ!」
更に、数の少なくなった魔法を悠々と避けながらパトリシアへと射撃。
「その程度当たりはしない!」
歴戦の魔術で相殺。
「まだまだ、この程度じゃ終わらないわよ!」
パトリシアが魔道書に魔力を注ぎ、「復元」する。
「いけっ!」
彼女の命令と同時に魔法が乱射される。
「(なるほど、手数で押し切る方法ね……)」
セレンフィリティは魔法を回避、魔道書を撃ち落しながら冷静に分析していた。
「(……魔道書は一度発動してしまえば、自動で魔法を放つみたいだから、敵がそれに気を取られている間に本人も他の魔法を詠唱出来るってわけね……)」
詠唱をしているパトリシアを見る。今展開されている魔道書は、彼女のパートナーの「本体」というわけではなさそうだ。普通に考えて、契約者がパートナーの心臓を剥き出しにするはずがない。
おそらく、あれはパトリシアが記した複写本。対応するパートナーの力を一時的にストックしておくデバイスであり、魔力源でもある。
「(大技を繰り出すとき、彼女は魔道書の魔力を全て自分の術式にあてがうはず。ならば、その強力な魔法が命中したと思った時に隙が出来る……!)」
「とっておき……行くわよ!」
パトリシアが詠唱を終えると天の炎が発動する。
天から巨大な火柱がセレンフィリティ向けて落ち、セレンフィリティが飲み込まれる。
「きゃあ!!」
「勝負あり、ね」
目の前の火の海を見ると、パトリシアは踵を返した。
「なーんて、そんな簡単に勝てると思ったかしら?」
「え?」
投げ込まれたのは複数の機晶爆弾。同時に爆発。爆煙がパトリシアの周囲に発生する。
「くっ……!」
その中で響く銃声。その音に周囲を警戒するパトリシア。爆煙が晴れると、正面にいたセレンフィリティの姿はなかった。
「どこに……!」
「ここよ」
パトリシアの後頭部に銃を突きつけるセレンフィリティ。
「っ……!」
「おっと、あなたがあたしに向けて魔法を撃つほうが速いか、この銃の引き金を引くのが速いか……。分かるわよね?」
「……そうね。降参よ」
諦めたように両手を挙げるパトリシア。術式を組む時間と引き金を引く速さとでは、後者に分があることは明白だ。
「大技が当たったと思っても、相手の姿を見るまでは油断しちゃダメよ?」
「えぇ……。今の戦闘で思い知ったわ」
セレンフィリティのアドバイスに苦笑して答える。
彼女が勝ち誇って言葉を発したほんの数秒は、パトリシアが魔法を発動するには十分な時間だったが、そうはしなかった。
(約1.27秒ってところかしら。せめて1秒を切らなきゃ厳しいわね)
それは彼女がいかなる状況におかれても、現代兵器を相手にして勝つための基準だった。
御凪 真人(みなぎ・まこと)対セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)
「一対一の個人戦……魔法使いにとっては少し厳しいですね」
「そうね。だからといって、手を抜きはないわよ?」
「もちろんです。全力でお手合わせ願いますよ」
戦闘開始の合図。
「さぁ、行くわよ!」
先に攻撃を仕掛けたのはセレアナだった。剣を構え突撃する。
「この程度であれば……」
真人はゴッドスピードで加速した。歴戦の立ち回りとメンタルアサルトを組み合わせで、セレアナの剣撃を避けていく。
「魔法使いならば、詠唱させなければ問題ないわ!」
休まず相手が鋭い攻撃を繰り出してくる。
「確かにそうですね。ですが、魔法使い全員にそれが通用すると?」
真人はオーバークロックで思考加速。ロシアの姉弟のように肉体まで加速することはできないが、状況把握には十分だ。一瞬の隙をついて、セレアナへと雷術を放つ。セレアナは瞬時に判断して、距離を置き回避。
「あれを避けてみせますか。当てたつもりだったんですが」
「正直、危なかったけれどね」
「ですが、勝負はこれからです」
真人が雷術を高速詠唱し、セレアナ向けて精確に速射する。セレアナは見極めて紙一重で回避して行く。
「こんなのはどうかしら!」
そして、そこからファイアストーム。
「っ!」
真人は歴戦の立ち回りで無事に回避。
「そこっ!」
魔法が途切れた瞬間にセレアナが接近。剣を突き出す。
「まだですよ!」
真人がマジックブラストを発動。セレアナは吹き飛ばされるも、何事もなく着地。そこから、間髪いれず真人へと接近。
「さすが、良く分かっていますね」
「まぁね!」
「こんなのもありますよ」
真人が召喚獣:サンダーバードを召喚。電気を帯びた巨大な鳥が召喚される。サンダーバードはセレアナ向けて、雷撃を放つ。だが、セレアナはその雷撃をかわす。
「これでどう!?」
そして、チェインスマイトを放つ。真人は素早く凍てつく炎を展開。目の前に、氷の壁を作り、チェインスマイトを防御。そして、カウンターとばかりに火の弾をセレアナへと放つ。
「苦手は苦手なりに対処は万全ですよ」
「そうみたいね」
セレアナは火の弾をバックステップを取りつつ、剣でいなす。
「……はっ!」
セレアナは一呼吸おき、その瞬間に神の目。強力な光を発する。
「しまった!?」
直視した、真人の視界を一時的に奪う。反射的にマジックブラストを発動。
「残念。こっちよ!」
だが、接近していないセレアナへは当たらない。ファイアストームで真人を狙う。
「くっ!?」
直撃を受け、揺らぐ真人。
「終わりよっ!」
すぐさま、セレアナが接近し、チェインスマイトを仕掛ける。真人は接近する、セレアナへ凍てつく炎を発動。
「二度も同じ手は喰らわないわ!」
飛んでくる火の弾をサイドステップをして回避。だが、着地した瞬間にバランスを崩す。
「えっ……!?」
「同じ手はそう何度も使いません……!」
凍てつく炎でセレアナの足場を凍らせていた真人。隙の出来たセレアナへサンダーブラストを放つ。
「きゃあぁ!!」
直撃を受ける、セレアナ。真人が更に、召喚獣:不滅兵団を召喚し、セレアナの周囲に展開。
「チェックメイト。ですね」
「私の負けね」
降参の意を示すセレアナだった。
九條院マリア対小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)
マリアは歴戦の魔術や空飛ぶ魔法↑↑をうまく扱い、美羽を寄せ付けず戦っていたが、黄金の闘気で加速した美羽をずっと捉え続ける事が出来ず。
光術による目くらましを受け、そこから繰り出された高速キックを受け場外。美羽の勝ちとなった。
「みんな、初戦お疲れ様ー」
一回戦終了後、戻ってきたみんなを出迎えたのは笹奈 紅鵡(ささな・こうむ)、コハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)、アイシス・ウォーベック(あいしす・うぉーべっく)。
「お疲れ様ー♪」
「みんな、良い試合だったよ」
「まだまだこれからだよ♪」
「あぁ、この程度で負けていられるかって!」
「お手柔らかにお願いします」
「それは無理な相談よ。やるからには常に全力で勝負よ!」
準決勝に残ったのは、ラルク、セレンフィリティ、真人、美羽の四人。
「早速負けちゃったかぁ……もう少し上にいければ良かったんだけどなぁ」
「あはは、ドンマイだよ。みんな強いしね」
「パトリシアも十分に強かったわよ。戦ったあたしが証明するわ」
「最後に油断したのがまずかったわね」
アイシスの言葉に苦笑するパトリシア。
「あー、うん。さすがにあれは避けられないと思ったのよね……。今までであれを防いだのは、うちの首席――『絶界』だけだし」
「まぁ誰しもそう思うわよね。でも、それで終わらないからこうして生き残っているわけだし」
「そうね。私も学んだわ」
「後は、四人だから……、次は準決勝だね」
「この調子で決勝まで頑張るぞー!」
「うん、頑張ってね美羽」
「やっほー♪ みんなお疲れ様ー」
「おつかれー」
桐生 円(きりゅう・まどか)と一緒にレイがやってきた。
「みんな良い勝負してるね。見ててとても面白かったよ」
「まだまだ、これからだぜ!」
ラルクが意気込む。
「そうだね。まだ準決勝と決勝が残ってるんだから、最初からばててちゃ終わりだもんねー」
「レイちゃんも結構真剣に見てたもんね?」
「当たり前だよ。手を抜いてないか見てたんだから。もし、手を抜いてやってたら怒るからね!」
「そうよね。真人、私は負けちゃったけれど、あなたは最後まで勝ち残りなさいよ!」
「うん。頑張ってみますよ」
そこで、選手の召集アナウンスが入る。
「おっと、呼ばれたみたいだな。行こうぜ」
「うん! じゃあ、行ってくるね♪」
「頑張ってね」
「面白い勝負、期待しているわよ」
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