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リアクション
■第三幕:葦原の鬼
久瀬たちがアザトースから逃げていた頃。
森の中、アザトースを探して歩く者の姿があった。
瀬乃 和深(せの・かずみ)とセドナ・アウレーリエ(せどな・あうれーりえ)の二人だ。
「セドナ、そろそろ諦めない?」
「諦めない。今の私がどこまで通用するのか試したいのだ」
「気持ちは分かるけどさ」
彼らが森を探索し始めて半日ほどが経過している。
現れるのは怪物ではなく、森に棲む獣ばかりであった。
そんなときであった。
「おや、キミたちは……」
「あの時の……」
二人が出会ったのは昨夜、異形の怪物と互角の戦いをしてみせた人物、東 朱鷺(あずま・とき)だ。彼女は二人の姿を認めると訊ねた。
「こんなところで何をしてるのかな?」
「昨夜のアレと再戦してみたくて」
「ああ、彼とですか。強かったですよね」
(小言も通じなさそうな相手だったので朱鷺は会いたくないんですけどね……)
東は菜食主義にされそうな状況を作り出した存在を思い返すと難しい顔をした。彼女にとっては地味に辛い日々だったようだ。
東は二人に告げた。
「彼の気配はあれからずっと感じませんよ。森にはいないかもしれませんね」
「そんな……」
セドナは気落ちしたように項垂れた。
「ひょっとして腕試しがしたいのかな?」
「そうなんですよ。特にセドナがその気になっちゃって」
「それなら面白い話があります。森を抜けた先の町で聞いた話ですが、昔あのあたりには葦原島からやってきた鬼が住んでいたという逸話があるんです。もしかしたら今も強い魔物がいるかもしれませんね」
話を聞いたセドナが少し元気を取り戻したのか背筋を伸ばす。
「気が向いたら行ってみよう」
「そ、そうだね」
ところで、とセドナは東に向き直る。
「朱鷺はここで修行をしていたのか?」
「ええ、そうですよ」
「ならば一戦よろしいか?」
腕試し、ということらしい。セドナは手にした大槌を構えた。
「いいですよ。新しい術の考案をしていたところですし、相手になりましょう」
視線を交差させたその瞬間、地響きにも似た音が森に響き渡った。
修行という名の戦いは始まったばかりである。
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