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リアクション
すっかり日も暮れた。董 蓮華(ただす・れんげ)と金 鋭峰(じん・るいふぉん)は、神社の近くにある湖の傍を歩いていた。
蓮華は、公務がない日の鋭峰を遊園地に誘った。鋭峰の答えはあくまでも視察だ、とのことだったが、日が落ちた今、半分は息抜きとして過ごしていた。
鋭峰に行き先を任せられた蓮華は、湖の手漕ぎボートに鋭峰を誘った。
ボートがゆらゆらと揺れる度、水面には沿岸に植えられた木々に飾り付けられたイルミネーションが映り輝く。
蓮華が漕ごうとすると、
「一緒に漕ぐか」
と鋭峰から声がかかった。
「はい」
バクバクと鳴る心臓を抑えようとしながらも、蓮華は笑顔で頷いた。
「休日はどのようにして過ごしていらっしゃるんですか?」
ゆっくりとボートをこぎながら、蓮華が訊ねる。
「公務か視察か訓練だ。董は」
「私は体動かしてます。先日”二丁拳銃”が出来るようになりました」
「この調子だな」
「はいっ、これからも頑張ります」
団長への一途な想いを込めて、満面の笑みで答える。
「今日はお付き合い下さって、本当に有り難うございました」
蓮華の言葉に、鋭峰はゆったりと頷いた。
*
巫女服姿の大岡 永谷(おおおか・とと)は、小暮 秀幸(こぐれ・ひでゆき)と一緒に湖に沿う遊歩道を歩いていた。
日が暮れるまではショッピングや食事を楽しんでいたが、食後に二人は散歩がてら、比較的人の少ないこのエリアに移動してきたのだった。
近くに人がいないことを確認して、永谷は秀幸と一緒に立ち止まった。木々のイルミネーションだけが、カラフルに点滅して二人を照らしている。
「小暮、いや、秀幸」
永谷は、意を決して言葉を紡いだ。いつ言おうかと迷っていたのだが、もうここしかない、と半ば永谷自身に言い聞かせるように。
「俺は、お前のことを思うとその思いが止まらなくなることがよくある。
お前はよく女の子にもてないと嘆いているようだけど、俺はお前のことが好きなんだよ」
そこまで言って、永谷は少し言葉を切った。秀幸は、突然の言葉に驚いたように、黙っている。
「まあ、俺みたいな男女じゃ女のうちに入らないと言うなら、それも仕方ない。それでも、一緒に側に……」
いさせてほしいんだ、と続けようとした永谷の言葉を、秀幸が遮った。
「その気持ちには、もっと大きなイベントの時に応えさせてもらえませんか。今回はこうしてもっと楽しみましょう」
秀幸の言葉は真剣そのもので、永谷は小さく頷くことしかできなかった。秀幸の目を見てから、永谷は視線を湖の水面に彷徨わせた。
*
エリア内の至る所に、野点傘と縁台が設置されている。その中の一つで、ミーナ・リンドバーグ(みーな・りんどばーぐ)は、{SFL0027165#真田 佐保}と一緒に休んでいた。
二人は一日、張り切っていろいろなアトラクションを回ってきた。そして、ちょっと休憩に、と二人で座ったところだった。
「今日はミーナと遊んでくれてありがとうございます」
「拙者は今日一日、本当に楽しめたでござるよ」
そう言って、佐保は微笑んだ。
「ミーナもとってもとっても楽しかったです! とっても……とっても……すぅ」
佐保によりかかるうち、ミーナの目蓋が次第に落ちて行き、気が付けばすぅ、と小さな寝息を立てていた。穏やかな寝顔を見て、佐保は小さく微笑む。
「また、そなたとこうして過ごしたいでござるね」
少ししてミーナは目覚めた。けれどもうちょっとだけ寄りかかっていたくて、ミーナは寝たふりをする。寝たふりはばれていると思ったが、ミーナは佐保の温かさに触れていたかった。
ちょっとだけ、もうちょっとだけこうしていたいです。そう思いながら、ミーナはまた柔らかく暖かな夢の中に誘われていったのだった。
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