校長室
学生たちの休日10
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★ ★ ★ 「初詣は、やっぱり福神社だよね」 コハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)と一緒にやって来た小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)が、参道を歩きながら言いました。お正月ですから晴れ着でお洒落していますが、凄いミニ着物です。 コハク・ソーロッドはセーター姿ですが、いつも一緒に連れ歩いているローゼンクライネは、いつものようなゴスメイド服ではなく、綺麗な晴れ着を着ていました。きっと、誰かの趣味なのでしょう。 福神社は、福の神 布紅(ふくのかみ・ふく)がいる空京神社の数ある分社の一つです。 「今年はいい年でありますように」 お賽銭を投げてから、手を合わせて初詣を済ませます。 「おみくじは、こちらでーす」 札所から、巫女服姿のキーマ・プレシャスが大声で呼び込みをしていました。どうやら、バイトのようです。 「おみくじです。引いていきましょう」 「そうだね。引こう引こう」 誘われるままに、小鳥遊美羽たちもおみくじを引いてみます。 みくじ筒をよく振ってみくじ棒を取り出します。 「ええと、私七番かな」 小鳥遊美羽が、みくじ棒に書いてある番号を読みあげました。 「七番、ラッキーセブンですね。はい、これをどうぞ」 神社でラッキーセブンもどうかと思いますが、キーマ・プレシャスが七番のおみくじを小鳥遊美羽に渡しました。 『中吉。ゆったりと暖まることができるでしょう。勝負事は、勝ちます』 「悪くはないですね」 「凶……」 小鳥遊美羽とは対照的に、コハク・ソーロッドは思いっきり凶を引いてしまったようです。ローゼンクライネも中吉でしたので、一人だけ大外れです。 「女難の相だって……」 「まあまあ、ここに、縁談は吉と書いてあるじゃないですか」 落ち込むコハク・ソーロッドを、小鳥遊美羽が慰めました。とはいえ、自分のおみくじはよかったので、我知らず口許が緩んでいます。 「ちょっとそこの君、どうかな、こっちのおみくじで再チャレンジしてみないかい」 隅っこの方で勝手に辻屋台を出している女モヒカンのパラ実生が、ひょいひょいとコハク・ソーロッドを手招きしました。巫女服姿ですが、頭はモヒカンです。 「やってみたらどうですか?」 小鳥遊美羽にうながされて、コハク・ソーロッドがおみくじを引くことにしました。 「この箱の中から引いてよね」 そう言って差し出された箱の中から、何やら布のような物をつかみ取ります。 パンツでした。いえ、女物ですから、ホワイト・ショーツでしょうか。 「ああ、白だね。凶!」 そう言うと、Pモヒカン族のおねいさんが、コハク・ソーロッドの頭に白パンツを被せました。 「パ、パ、パ、パンティ……」 あっけなく、コハク・ソーロッドがひっくり返ります。 「うちのコハクに何するのよ!」 すかさず、小鳥遊美羽が女モヒカンにドロップキックを放ちました。 「はべっ!」 吹っ飛んだ女モヒカンがつんのめって気絶します。勢いでめくれた袴から、プリけつがのぞいています。さすがは、Pモヒカン族、女でもパンツは頭に被ります。 「ふっ、まだまだ修行が足らないですね」 ミニ着物でありながら、自分は乱れ一つなくガードした小鳥遊美羽が勝ち誇りました。けれども、うっかりその戦いを見てしまったコハク・ソーロッドはたまったものではありません。 「はうあっ!!」 みるみるうちに、コハク・ソーロッドの被っていたパンツが鼻血で赤く染まっていきます。 女難です。 ★ ★ ★ 「じゃ、しっかりと頼むぜ」 雪国 ベア(ゆきぐに・べあ)が、ソア・ウェンボリス(そあ・うぇんぼりす)のために日本から取り寄せた晴れ着を緋桜 ケイ(ひおう・けい)と悠久ノ カナタ(とわの・かなた)に渡して頼みました。 「オレじゃ、着付けはまったく分かんねえからな。ははははは……」 「任せておけ。この程度のこと、日常茶飯事だからな」 丸投げする雪国ベアに、普段から和服を愛用している悠久ノカナタが自信満々で言いました。 「き、きっつい……。あうう〜、限界ですぅ」 「まあ、少し我慢して……」 襦袢の帯をキュッと締められただけで小さな悲鳴をあげるソア・ウェンボリスに、容赦なく帯を締めながら緋桜ケイが言いました。 「御主人、その程度で音をあげるとは、まさか餅太り……」 皆まで言わないうちに、悠久ノカナタがペチッと雪国ベアを叩きます。 「その腹が言うか?」 ドタバタしながらも、振り袖をソア・ウェンボリスに着せて、その上から帯をふくら雀にして締めます。後はお正月らしくふわふわもこもこのショールを肩にかければなんとかできあがりです。 「それでは、わらわはバイトがあるので先に行っておるからな」 そう言うと、悠久ノカナタがエンライトメントに乗って先に空京神社へとむかいました。 今年は巫女のアルバイトを手に入れたわけですが、着付けで時間をとられすぎました。イコンで急いで空京神社へとむかいます。 「じゃあ、こっちも出発するとするかあ」 小型飛行艇アルバトロスを出して、雪国ベアが言いました。さすがに、和服で魔法の箒にまたがるのはちょっと品がありません。横座りにすればいいわけですが、それでイルミンスールから空京まではさすがに距離がありすぎます。 緋桜ケイとソア・ウェンボリスを乗せると、雪国ベアは小型飛空艇を急がせました。