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いい湯だな♪

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いい湯だな♪

リアクション

 
    ★    ★    ★
 
「まったく、何がP級四天王、Pモヒカン族よ。迷惑ったらありゃしないわ」
 洗い場のシャワーを浴びながら、セフィー・グローリィア(せふぃー・ぐろーりぃあ)がぼやきました。変なモヒカンが暴れていると聞いたので脱衣場から浴室に入るときに機関銃を持ってきたのですが、あっけなく風紀委員に没収されてしまいました。まあ、こんな物を乱射したら、大浴場がまた壊れて大変なことになってしまいますが。
 みんな意外と忘れられていますが、大浴場は世界樹の内部にあって、世界樹の一部なのです。施設破壊は世界樹の破壊と同義ですから、そんなことをしたら徹底的にイルミンスール魔法学校の生徒たちから責任追求されてしまいます。
 白いビキニを着たセフィー・グローリィアが、むしゃくしゃした気分をシャワーで洗い流そうとしました。
「髪も洗わないとねー」
 シャンバラ山羊のミルクシャンプーをたっぷりと金髪にかけて、わしゃわしゃと泡をたてます。長い金髪は量が多いものですから、泡だらけになると結構大変です。
 豪快に泡だったシャンプーは、白い泡となって、髪から肩へ、胸へ、腰へ、太腿へ、足許へと身体を伝って落ちていきました。もう、全身泡だらけです。
「ふん、ふふ〜ん♪」
 鼻歌まじりにシャンプーを続けていると、その背後からそろりそろりと忍びよる者がありました。
「ヒャッハー。髪を洗うなら、パンツも一緒なんだぜい!」
 そう叫ぶなり、P級四天王が一気にセフィー・グローリィアのパンツを引き下ろしました。
「えっ!?」
 一瞬、何が起きたのか分からなくて、セフィー・グローリィアが硬直します。幸いなことに、泡で隠れはしましたが、実質下半身はすっぽんぽんです。
「貴様、いきなり何をする!」
 振りむいて反撃しようとしたセフィー・グローリィアでしたが、足首まで下ろされたパンツと下に落ちた泡に足をとられてすってんころりと転んでしまいました。さすがに受け身をとったので無事でしたが、跳ね上がった足から、P級四天王が完全にパンツを剥ぎ取ってしまいます。ちょっと凄いことになっていますが、P級四天王は中身には興味ありませんから問題ありません。多分。
 当然反撃しようとしたセフィー・グローリィアでしたが、頭に自分のパンツを被せられて目にシャンプーが入ってしまいました。
「きゃっ、い、痛い……!」
 さすがに、まだ出ているシャワーに飛び込んで、なんとか目からシャンプーを洗い流します。いけません、このままでは下半身の泡が流れてしまいます。
「パンツーハットの修行が足りないぞ、P級四天王パンツ泡番長よ!」
 勝ち誇ったかのように、P級四天王がセフィー・グローリィアに言いました。
「お前、何してんだよ!」
 遙か彼方から、極小さなセフィー・グローリィアの悲鳴を聞きつけたオルフィナ・ランディが、ありえない速さで駆けつけてきました。まさに、疾風迅雷です。
「貴様は、さっきのP級四天王パンツ酔い番長」
「またお前か。変な名で呼ぶな!」
 オルフィナ・ランディが、そのままバーストダッシュでP級四天王に体当たりして吹っ飛ばします。
「どわーっ!」
 セフィー・グローリィアを掴んで石鹸まみれになっていたP級四天王が、オルフィナ・ランディに勢いよく突き飛ばされて、つんのめりながら洗い場の床を滑っていきます。
「こっちくんな!!」
 飛んでくるP級四天王に、セフィー・グローリィアがバーストダッシュでスライディングしながら、P級四天王のむきだしの股間を大きく上へ蹴りあげました。
「どわわわーっ!!」
 P級四天王がクルクルと空中を吹っ飛んでどこかへ行ってしまいます。
「助かったわ、オルフィナ」
 ほっとしたように、セフィー・グローリィアが言いました。
「いや、それはいいから、早くこれを穿け」
 そう言って、オルフィナ・ランディが自分のパンツを差し出そうとしました。さっき脱がされたので、セフィー・グローリィアは下がマッパです。
「い、いい。自分の穿くから」
 セフィー・グローリィアは、あわてて被っていたパンツを脱いで穿き直しました。
 
    ★    ★    ★
 
「きゃはははは……」
「よおうし、負けないのだあ!」
 バシャバシャとお湯を撥ね飛ばしながら泳いで、周囲の迷惑を顧みずにリン・ダージ(りん・だーじ)ビュリ・ピュリティア(びゅり・ぴゅりてぃあ)エーリカ・ブラウンシュヴァイク(えーりか・ぶらうんしゅう゛ぁいく)が大風呂で競争をしていました。
「あはははは、いっちばーんだよー」
 教導団水着を着たエーリカ・ブラウンシュヴァイクが、ダントツで二人を引き離して、先に流れるお風呂の方へと泳いでいきます。
「お風呂で泳ぐなんて、マナーがなってませんねえ。おや、誰か注意するんでしょうか?」
 凄く迷惑そうにリン・ダージたちを見ていた次百 姫星(つぐもも・きらら)が、二人に近づく怪しげなパンツに気づきました。
 まるで、鮫の背びれのように縦になったパンツが水面をかき分けて進んでいきます。
「そこまでだあ!」
 ざばあっとお湯の中から水飛沫を上げて飛び出したP級四天王パンツマナー番長が、リン・ダージたちの前に立ちはだかりました。
 ロングバスタオルを巻いているリン・ダージと、イルミンスール水着のビュリ・ピュリティアが、お風呂の中で立ちあがります。とはいえ、背が小さいので、肩先がやっとお湯の外に出る程度です。
「ちょっと、何邪魔するのよお!」
 当然のように、リン・ダージが文句を言います。
「風呂で泳ぐな!」
 ごもっともです。
「そして、風呂ではパンツを頭に被れ!」
 いや、こちらはちょっと……。
 ハデスの発明品から分けてもらった縞々のパンツを手に持って、P級四天王がリン・ダージたちに詰め寄りました。
「うるさいよねー。穿いてないから、被れないもん。ええい、やっちゃえー」
「わーい!」
 リン・ダージとビュリ・ピュリティアが、一緒になってP級四天王を吹っ飛ばします。もちろん、ひとたまりもありません。
「正論を言っているのに、かわいそうに……」
 ずっと傍観者だった次百姫星ですが、運の悪いことにヒュルヒュルと吹っ飛ばされてきたP級四天王が、すぐ隣に落っこちてきました。
 ひょえっと、イルミンスール水着を着た次百姫星が、バーストダッシュで横に避けます。いきなりの水の抵抗で水着がずれるのを、あわててお湯の中で直しました。
 びったーんと、P級四天王が大の字になって水面に激突します。この落ち方は痛いです。案の定、その姿のまま、P級四天王がぷくぷくとお湯の中に沈んでいきました。
「だ、大丈夫!?」
 さすがに心配になって近づいた次百姫星の眼前に、突然P級四天王が水中から飛び出してきて復活しました。
「ふう、危なかった、このパンツがなければ即死していたところだったぜ」
 いったい、P級四天王の被っているパンツは、キノコマン以上の性能なのでしょうか。毎回、みんなそれで助かっているようです。
「平気なんですか?」
「もちろん、平気だ。理由? それは、この頭に被ったパンツのおかげに決まっている。さあ、お前も、このパンツを被るといい」
 そう言って、P級四天王が次百姫星に迫ってきます。
「きゃー! 変態! こっちに来ないで。近寄らないでください! 来ないで、来ないで、来ないでください! きゃー、嫌ぁぁぁ!!」
 もう、涙目で次百姫星が悲鳴をあげました。その声にP級四天王が少し怯んだところを、荒ぶる力で容赦なく往復ビンタを何度も何度も浴びせます。悲鳴をあげながらなので、自分が何をしているのは、はっきりとは把握していません。
「ぐぶ、そこまでして俺様のこのパンツがほしいとは。いいだろう、貴様をP級四天王パンツビンタ番長として認めてやる。受け取れ……」
 そう言って、P級四天王が自分が穿いていたパンツを脱いで次百姫星に差し出しました。
「あっち行ってえ!!」
 次百姫星が悲鳴と共に火術を放ちつつP級四天王を蹴りあげました。炎につつまれて、P級四天王がまたもや吹っ飛んでいきます。きっと、今度も、頭に被ったパンツのおかげで助かります。多分、助かるでしょう。助かるといいなあ……。